暮らしのQ&A
手軽でおいしい「秋の食養生」

2026/10/25
(取材・文/オカモトノブコ)
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国際中医専門員(国際中医師)。関西学院大学卒業後に中医学を学び、北京中医薬大学、上海中医薬大学などで研修。兵庫県神戸市の漢方相談薬局『CoCo美漢方』で健康相談にのるほか、鍼灸師として施術も行う。季節に合った健康法や食養生を発信し、『不調ごとのセルフケア大全 おうち養生 きほんの100』(KADOKAWA)、『CoCo美漢方 田中の12か月のおいしい漢方~日々の食事で不調を改善~』(扶桑社)など著書も多数。
疲れがたまりやすい、秋の体と心に起きること
秋の体は、夏の間に続いた暑さや発汗などの影響で、東洋医学では「気(エネルギー)」や「血」「水」が不足しやすくなっている状態。そこへ秋に特有の「乾燥」や、冬に向けて強まる「冷え」の影響も重なって、不調を感じやすくなることがあります。
また、秋になるとなんとなく気分が落ち込んだり、物悲しくなったりする人も多いのでは? 実は漢方では「悲しみの季節」と呼ばれるほど、秋は精神にも影響が出やすいシーズンです。
そこで秋の養生におすすめなのが、不足した「気」や「血」「水」を補う食べ物や、食事法を取り入れること。
さらに秋の養生では、次にやってくる冬の準備をすることが大切。体と心をうるおしながら、秋の養生でしっかり「健康貯金」をすることで、冬の冷えや乾燥による不調に負けない元気な体と心に整えておきましょう。
心身ともに元気になれる、「さつまいも」のおやつ

薬膳では、胃腸を整えて強化し、体の元気や気力を補うとされるさつまいも。常食すれば、人体が健康に働くための臓腑(肝・心・脾・肺・腎)、いわゆる「五臓」を肥やす、といわれるほどの栄養食です。
便通を整えるほか、元気を出して疲労を回復させる効果もあり、疲れやすいこの季節には特にぴったり。気を養う働きもあるので、なんとなく気持ちが沈んだときのおやつにも、干しいもや、おいもチップス、クッキーやケーキなどで、旬の食材を取り入れてみましょう。
ただし、特にストレスが溜まりやすい・気が滞りやすい人は、食べ過ぎるとお腹が張りやすくなるので注意。滞った気の巡りを良くするミントやレモングラスのほか、好みの香りや味のハーブティーと一緒にいただくと、心も体もすっきりと癒されます。

体をうるおし、肌にもいい「いちじく」

女性ホルモンに似た働きをする、植物性エストロゲンを含むいちじく。薬膳からみると、肌とも密接につながっている「肺」をうるおすほか、胃腸を元気にして便通を整える働きを持つ食材です。
手軽なドライいちじくは、子どもや男性のおやつにもおすすめ。また、バナナなど生の果物は体を冷やす食材ですが、ドライフルーツにするとその力が緩和され、冷えが気になる時期には特におすすめです。
そのほか乾燥しがちな時期にうるおいを補ってくれる食材としては、チーズもぴったり。肺をうるおし、不安を感じやすい秋の気持ちを落ち着かせる「安神」効果のあるアーモンドなどの食材を、ドライフルーツに組み合わせるのもいいですね。
体をいたわる薬膳食材、「黒豆」のお茶で冷え対策

黒豆は、寒さや加齢によっても弱りやすい「腎」の働きを助けて、血とうるおいを補う食材。薬膳では、年齢とともに変化する体をいたわる食材として親しまれています。
また、胃腸を元気にして血の巡りを良くしてくれるため、冬の冷え対策にもぴったり。煮豆なども良いのですが、特におすすめは、ホッと一息つきたいときに手軽に飲める黒豆のお茶。
朝の起き抜けに、まだ眠っている状態の胃腸を目覚めさせる飲み物としてもぴったりです。ノンカフェインなので、時間を問わず飲めるのもいいところ。ほんのり香ばしい香りと甘さを楽しみましょう。
「気」を補って水分代謝を整える、きのこの炊き込みごはん

秋が旬のきのこ。おなかの調子を整えて消化・吸収を助け、「気」を補うとともに、体内の余分な水分をさばく働きがあると言われます。長雨続きで湿度が高くモヤモヤ・くよくよしたり、脂っこいものを食べたり、むくみを感じたりしたときは、体の水はけを良くすることで体も気分もすっきり。
食物繊維のほかさまざまな栄養素を含み、日々の食事にぜひ積極的に取り入れたい食材です。お好みのきのこをシンプルにバターで炒めたり、また「気」を補うお米と組み合わせるのもおすすめ。
さらに体の「気」や「血」を補う鶏肉や鮭と、余分な水を排出するきのこ類を組み合わせれば、「必要なものを補い・不要なものを出す」とても理にかなった秋の薬膳ごはんになりますよ。
おなかが冷えて体がだるいときは「かぼちゃ」のスープ

夏に収穫したかぼちゃが食べ頃になる10月は、ハロウィンのシーズンでもありますね。かぼちゃは、薬膳では消化吸収をつかさどる「脾」の働きを高め、不足した「気」を補う食材です。
さらに「脾」は水分代謝にもかかわるため、お腹がゆるいときにもおすすめ。気温が急に下がっておなかが冷えたり、食欲がなくて体がだるいときにも、余分な水を排出して胃腸を温め、気を養ってくれます。
ただし消化に時間がかかるメニューは胃腸の負担になりやすいので、疲れて胃腸が弱っているときには食べ過ぎに注意。いちばんのおすすめは、胃腸に負担をかけず、吸収しやすいポタージュスープ。みそ汁の具として柔らかく煮て食べるのもいいですね。
「クコの実」は目の健康や老化対策にも

クコの実は、漢方の生薬としても使われる食材。目の働きをつかさどる「肝」を元気にして、「食べる目薬」と呼ばれるほど目に良いとされる食材です。
血液を補い、「肝」だけでなく「腎」の機能も高めてくれるので、目や体の調子を整えたいときに薬膳では多く用いられる食材です。
秋の夜長で目を酷使したときには、1日10粒程度を目安にそのまま食べたり、スープやお茶、炊き込みご飯に入れたりと、おやつや料理に気軽に取り入れてみては。
いいことづくめの「汁物ファースト」と、胃腸にやさしい食べ方

中医学には、「ごはんを食べる前にスープを飲むのは神様の処方にも勝る」ということわざがあります。その理由は、温かい汁物を最初に飲むと胃腸が温まり、消化吸収を助けてくれるから。
また空腹がいったん落ち着くので、食欲が暴走してドカ食いするのを防ぐ効果もあります。
とはいえ毎回、無理してスープや汁物を作らなくても大丈夫。手軽なフリーズドライのスープや、お湯を加えてできるお味噌汁を活用すれば、「汁物ファースト」を簡単に続けられます。
夜ごはんの食べ方も、食養生のポイントに
また、夜の食事は寝る3時間前まで(できれば4〜5時間前)に終えておくのが理想。寝ている間に消化にエネルギーを使ってしまうと、睡眠の質が下がったり、脂肪の蓄積につながってしまいます。
1日の食事でどうしても比重が大きくなりがちな夜ごはん。食養生のひとつとして、ぜひ手軽な具だくさんスープを取り入れてみましょう。
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