MUJI BOOKS 人と物

ずっといい言葉を文庫本で。
人と物をつなぐ「人物シリーズ」です。

人と物5 「茨木のり子」

毎日のくらしのなかでつづられた、みずみずしい言葉。
詩やエッセイとあわせて、生活した住まいの写真を収録。

茨木のり子/詩人
清冽な感性で日々のくらしをうたいあげ、「現代詩の長女」と呼ばれた詩人・茨木のり子。その詩の多くは、みずから設計にたずさわった生活空間からうまれました。「食卓に珈琲の匂い流れ」ほか22篇の詩と、韓国の民藝をたずねる「ものに会う ひとに会う」など2つのエッセイを、長年くらした東伏見の住まいの写真とともに収録します。

【書籍情報】
MUJI BOOKS文庫 人と物5『茨木のり子』
著者 茨木のり子
定価500円(税抜き)
2017年12月1日 初版第1刷発行
ISBN978-4-909098-04-7 C0195

【目次】
くらしの形見
<詩>
くだものたち/スパイス/部屋/食卓に珈琲の匂い流れ/誤算/もっと強く/はじめての町/汲む/わたしが一番きれいだったとき/成分/娘たち/顔/自分の感受性くらい/怒るときと許すとき/倚りかからず/方言辞典/店の名/詩集と刺繡/賑々しきなかの/みずうみ/わたしの叔父さん/問い
<エッセイ>
美しい言葉とは/ものに会う ひとに会う
逆引き図像解説 この人あの人

購入方法:MUJI BOOKS全店及びネットストア
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ネットストア|人と物5 「茨木のり子」

くらしの形見

茨木のり子がたいせつにした物には
こんな逸話がありました。

年賀状
「このはんが 何でつくったか あてたらえらい」。年賀状は手づくりでした。この年は発泡スチロールを彫り込んだ鳥の版画を手漉き和紙に押し、遊び心のある問いを添えて、ふたりの甥っ子に宛てました。この鳥の作品は、詩集『歳月』(花神社)の表紙の挿絵にもなりました。
スペインの陶器
「BLANCO」(スペイン語で白)と書かれた白釉薬のピッチャー。古くてうつくしい民藝が好きで、旅先からも持ち帰りました。とくにスペイン製には目がなくて、街で見つけると素通りできなかったと、詩「スペイン」に綴っています。長年くらした東伏見の家の飾り棚には、好みの食器や民藝がところ狭しとならべられています。
布のコースター
東伏見の家のキッチンに残された4枚の手織り布。インドの伝統技法ブロックプリント(木版手捺染め)と見られる染柄にあたたかみのある風合い。食卓のコースターとして、夏には麦茶やビールを縁取りました。料理が得意で来客にはいつも手料理をふるまっていました。
食卓の椅子
坂倉準三建築研究所がデザインした天童木工の曲げ合板チェア。窓から光が射しこむ食卓で、いつもそこに座って詩作しました。自宅2階は生活空間であると同時に創作の場でもあり、書斎や食卓から、日々のくらしを描写した数々の詩が生まれました。
トランジスタ・ラジオ
書斎で手元に置いていたラジオはSonyのTFM-110。このラジオでよく聴いていたのがハングル講座です。「お隣の国の言葉ですもの」と50歳で韓国語を学びはじめ、現地の詩人と交流しながら、『韓国現代詩選』(花神社 読売文学賞受賞)の編訳をつとめています。ラジオから音楽が流れることはあまりなく、ふだんは音のない静かな生活を好んでいました。
Yの箱
気に入っていた無印良品のクラフトボックスに書いた「Y」は急逝した最愛の夫、安信(Yasunobu)さんの頭文字。箱の中にしまっていた詩稿は、亡き夫へ綴ったラブレターでした。40篇近くからなる詩は、没後に詩集『歳月』として刊行されました。
※この製品は販売終了しています。
シンガー・ミシン
裁縫はシンガー社の名機191Uで。家計をやりくりしながら、好きな布地を買ってきて、日用品や夫の服を繕う主婦でした。日々つけていた日記には、これから裁縫をするためにスカートの生地を買ってきたことなどがこまめに綴られています。ミシンが置かれた自宅1階の裁縫部屋では、いつでも使えるように布の端切れや糸をいくつものボックスに分けて収納していました。

この人(プロフィール)

茨木のり子(いばらぎ のりこ)/詩人(1926-2006)
本名・三浦 のり子(旧姓・宮崎)。大阪生まれ。愛知県西尾市で育ち、19歳で終戦を迎える。20代で詩作をはじめ、川崎洋と詩誌「櫂(かい)」を創刊。日常的な言葉で女性の気持ちをみずみずしく綴った『自分の感受性くらい』(花神社)、『倚(よ)りかからず』(筑摩書房)など8つの詩集を発表し、「現代詩の長女」と称された。私生活では、みずから設計にたずさわった東伏見の家で夫とくらし、家事とともに詩作をつづけた。夫亡きあと自宅で書き溜めた詩稿は、没後に『歳月』(花神社)として刊行された。