MUJI BOOKS 人と物

ずっといい言葉を文庫本で。
人と物をつなぐ「人物シリーズ」です。

人と物4 「佐野洋子」

絵本『100万回生きたねこ』の作者の気取らない日々から
生まれたエッセイや秘蔵の原画などを収録。

佐野洋子/絵本作家、エッセイスト
大ベストセラー絵本『100万回生きたねこ』の作者である佐野洋子は、悩める1児の母であって、普通のくらしを大事にするひとりの女性でした。本書では、名エッセイストでもあった彼女の代表作『ふつうがえらい』を含む4冊から10編のエッセイと、書籍未収録の原画や、日々の記録写真、手離せなかった「くらしの形見」などを収録します。

【書籍情報】
MUJI BOOKS文庫 人と物4『佐野洋子』
著者 佐野洋子
定価500円(税抜き)
2017年12月1日 初版第1刷発行
ISBN978-4-909098-03-0 C0195

【目次】
くらしの形見
佐野洋子の言葉
ふつうがえらい
覚えていない
神も仏もありませぬ
猫ばっか
逆引き図像解説 この人あの人

購入方法:MUJI BOOKS全店及びネットストア
※ 在庫の有無については各店舗にお問い合わせください
ネットストア|人と物4 「佐野洋子」

くらしの形見

佐野洋子がたいせつにした物には
こんな逸話がありました。

『おれは ねこだぜ』表紙原画
さばが大好物なねこ。さばのことばかりを考えていたら、さばの大群に追っかけられ、逃げても逃げてもついてこられる……というねこの絵本『おれは ねこだぜ』の表紙原画。よく見ると2枚の紙を貼りあわせて耳の先を描き足しているのがわかります。完成した絵本ではナイフとフォークは色指定をして水色になっています。
絵の具
水分を取り除いて小さく固めた、ホルベインの固形水彩絵の具。1段に12色あり2段式で計24色がそろっています。このパレット以外に配色の違うタイプのものをいくつも持っていました。水彩画のほとんどはこのホルベインの絵の具を水で溶いて描いたものです。
銅板の裸婦
ニードルで線刻してインクをのせ、表面を拭きとり凹部を紙に転写する銅版画。90年代にはこの手法で描いたたくさんの画が書籍の表紙や挿絵に登場しました。銅板画家の山本容子をたずね、銅板画の教えを乞うたこともありました。
ピーラー
皮をむいたりクルミをつぶしたりする「道具」がとても好きでした。このステンレス製のピーラーはなかでも特に気に入っていたもので、荻窪の自宅と北軽井沢の別宅のどちらにも常備していたほど。ぱぱっと手際のよい料理上手で、気に入った台所道具は長く愛用しました。
蕎麦猪口
骨董のうつわが好きで、染付や色絵のものをたくさん蒐集しました。旅先でもよく購入していたようです。この蕎麦猪口は、湯呑みとして日常づかいした愛用の品。多くのうつわは普段づかいしていましたが、晴れの日に引っぱり出してつかう特別なうつわもあって、それはそれは大事に使っていました。
くつべら
クラフトデザイナーの武山忠道がつくりあげた木製のくつべら。長いタイプなので使用するときに屈むことなく楽な姿勢で靴がはけ、磁石で上部がくっつくので収納にも便利。自分が気に入ったものは人にあげたくなる性分のため、何回も武山に電話して注文し、贈り物にしていました。
雛人形
大人になってから急に自分の雛人形が欲しくなり、理想のものを探しに京都まで行ったほど。それでも見つけられずにがっかりしているところに思いついたのがくつべら(4-6)の作者の武山忠道さん。彼に電話で「私のお雛さまをつくって」と依頼し、この雛人形ができあがりました。とても気に入り、雛祭りの時季には必ず飾っていました。
二層箪笥
「朝鮮箪笥」と呼んでとても大切にしていた李朝家具。北軽井沢の別宅に住んでいるとき、この箪笥は息子が住む家に置いてありました。久しぶりに息子の家を訪れたとき、いつもかわいがっている飼い猫がこの箪笥の中に飛び入って遊んでいるのを見つけると、猛烈に叱って追い出したそうです。

この人(プロフィール)

佐野洋子(さの ようこ)/絵本作家、エッセイスト(1938-2010)
中国・北京に生まれ、6歳まで過ごす。その後、大連に転居し、1947年日本に引き揚げる。62年武蔵野美術大学デザイン科を卒業し、白木屋デパート宣伝部に勤務。67年、ベルリン造形大学でリトグラフを学ぶ。
68年、長男誕生。73年、初めての自作の絵本『すーちゃんとねこ』(こぐま社)を出版。77年に出版した『100万回生きたねこ』(講談社)が大ベストセラーとなる。胸がチクチクする『シズコさん』(新潮社)をはじめ、ユニークな歯切れのいいエッセイも多く発表した。