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【京都山科】わたしと本|イベントレポート

選書

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2020/02/20

 出産祝いに贈る本、偏った絵本ばかり読む自分の子どもに贈る本など様々な相談事を持って人は、子どもの本の専門店『メリーゴーランド京都』へ足を運びます。店長の鈴木潤さんは、そんなお客さま一人ひとりと対話し、その人にぴったりの本を選んでくれます。

 今日は、先日行われた選書トークイベント「わたしと本ー本の扉を開ける時ー」の様子をレポートにして、皆さんにお届けします。
 
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 お招きした鈴木さんは、『三重県四日市市の子どもの本の専門店 メリーゴーランド』京都出店と共に京都へ移り住み、雑誌、ラジオ、テレビなどでの絵本の紹介、子育てにまつわるエッセイの執筆、講演会など、多方面で活躍されており、その一方で二人の男の子のお母さんです。
 会場は鈴木さんの通る声と笑顔で、ふわっと明るい空気に包まれます。会場の皆さんはどんな本が登場するのか、どんな話が聞けるのか、まるで読み聞かせを待つ子どもたちのよう。冒頭では、鈴木さんが選書をするようになったいきさつを話してくれました。

 「最初は小さなお店で、一対一で本を選んでいたんです。そのうち、他のお客さまの相談に耳を傾ける方や、選書した方ではない方がその本を買っていったりと、おもしろいことが起こって、“悩みを共有して、共感することが大事”なんやと気づいたんです」

 鈴木さんがイギリスで出会った本屋の店主と好きな本が同じだったことで、たったいま知り合ったばかりなのに、もう友達!という意識を共有したエピソードには、皆さん頷いたり、隣同士で微笑みあったりしていました。誰しもこういう瞬間に出会ったことがあるのではないでしょうか。好きな本が一緒、それだけなのになんとも言えない信頼感が芽生え、さっきまでつながるはずがなかった私たちがつながる……。とてもやさしい世界だなあって思います。
 
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 今回のトークイベントでは、事前にアンケートを行い、皆さんにぴったりの本を鈴木さんに選書していただきました。

 「高校生になる息子へエールにもなるような本を贈りたい」という相談に鈴木さんが選んだのは『そして、僕は旅に出た。はじまりの森 ノースウッズ』。
 「会いたい、書きたい、という衝動に駆られてとった行動って、今後それを超えていくことが難しいんですよね。そういう意味で、この本は一生に一度しか書けない本だと思います。その人の人生が動き出すところを目の当たりにしているようで、ひとときも目を離したくなくるんですよ」

 また、自分の夢に自信が持てない、という方に鈴木さんは『ぼちぼち いこか』という絵本をおすすめします。海外で出版され、翻訳家 今江祥智によって関西弁で訳された絵本です。関西弁の持つ絶妙なリズムがこの本の魅力を一層引き出している、と鈴木さんは言います。

 「訳って忠実であればいいというものではなくて、言葉のおもしろさをどれだけのせられるかだと思うんです。絵本にとって翻訳ってとっても大事なんです」
 
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 絵本を開いて、読んでくれる鈴木さんの声を聞きながら、小さなころ寝る前にお母さんが読み聞かせてくれた、あの優しい声を思い出します。

 「子どもの絵本選びの付き添いでお店にやってきたお父さんが、突然子どものころに好きだった絵本のことを思い出したんです。探してる本を見つけることができたとき、子どものように目を輝かせて『それや!』と受け取ってくれました。私たちの世代が子どものころ読んでいた絵本がまだあることって、奇跡なんですよ」

 そういう瞬間に立ち会えるから、本屋ってやめられないんですよね、と笑う鈴木さんはとってもまぶしかったです。
 
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 “本のある人生と本のない人生。選ぶことができるとしたら、私は迷わず本のある人生を生きたいし、子どもたちにも伝えていきたい。”これは鈴木さんの著書『絵本といっしょに まっすぐまっすぐ』からの抜粋です。
 たった1冊の絵本かもしれないけれど、そのたった1冊が誰かの心を豊かにしてくれる。伝えたい、という気持ちがあれが、その言葉はしっかりと根を張ってつながっていくのです。
 鈴木さんのお話で、くらしの中で忘れかけていた人とのつながりやあたたかさに、本を通じて気づくことができました。心がゆっくりゆっくり柔らかくなっていくような、そんなイベントになりました。

 鈴木さんの著書や今回のイベントでご紹介いただいた本は、1階で販売しております。ぜひ手に取ってみてくださいね。

『絵本といっしょに まっすぐまっすぐ』(アノニマ・スタジオ)
『そして、ぼくは旅に出た。はじまりの森 ノースウッズ』(あすなろ書房)
『ルピナスさん』(ほるぷ出版)
『ぼちぼち いこか』(偕成社)
『その手がおぼえてる』(BL出版)
『おにぎりをつくる』(ブロンズ新社)
『おいしく たべる』(朝日新聞出版)


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