京都山科

【京都山科】パンの話|食べものの話をしよう

【京都山科】パンの話|食べものの話をしよう

食のお便り/入荷情報

2021/04/17

 私たちが生きるこの世界には、さまざまな食文化があります。先人たちによって今日まで絶えることなく継がれてきたおいしさの中には、食という営みそれ自体のおもしろさや、もしかしたらより良く生きるためのヒントが隠されているのかもしれません。ふだん当たり前だと思って口にしている食材や素材をもういちど見つめてみると、あたらしい発見や学びが必ずあります。
 地下1階の食品売場を歩きながら、私たちと一緒に、食べることについて考えてみませんか。

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 私の母はおいしく食パンが食べたいとトースターを新調し、友達は毎朝コーヒーにトーストって決まってるのだとか。そんな私も実は朝はパン派。しっかりめにトーストして、さっとバター、ざくっと良い音がするひとくち目を齧ってやっと目が覚める。耳好きだから、耳は最後に。
 米を主食とする日本ですが、明治時代の西洋文化の発展以降、日本人のパン食文化は右肩上がりで、いまではパンが米の消費量を上回るほどだと言われています。パンは私たちの食卓の隅から隅にまで浸透した食品なんですよね。
 でも、パン屋に留まらずコンビニ、スーパーにも当たり前のように並ぶパンを見ていると、「そもそもパンって何だろう?」という疑問が湧いてくるんです。
 
【京都山科】パンの話|食べものの話をしよう

 今回は京都市北区、桜の名所ともされる平野神社のほど近くにある「ブーランジェオクダ 」のオーナーである奥田さんをお招きして、パンについて考えてみました。

■育てるパン

 皆さんはパンが発酵食品のうちのひとつだということをご存知ですか。パンは大きく分けて、混ぜる、こねる、発酵させる、焼く、という工程に分かれます。パンにとっての発酵は、醤油や味噌などの発酵とは少し違い、小麦粉や砂糖に含まれる糖分を酵母が分解し二酸化炭素をつくりだすというものです。発酵後のパンがあんなに膨らんでいるのは生きている証なんですね。
 
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 「僕が考えるパンは、仕込みが一番重要だと思っています」と奥田さん。例えば、フランスパンは一次発酵に3時間、3度の部屋で12時間寝かせ、室温に戻す作業があり、メロンパンは一次発酵と二次発酵を1時間ずつ、焼き時間はたったの10分。そのパンの性格にあった発酵時間や焼き時間を見極めることは、まるで生きものを育てているようですね。基本をしっかりすること、というのは簡単なことのようでむずかしく、そこに奥田さんのパンに対する誠実さを感じました。

 京都にはパン屋が多く、全国的にもパンの消費量が多いことは有名な話ですよね。
 そんな京都で、奥田さんはたったひとりで「ブーランジェオクダ」を立ち上げました。現在では京都に5つの店舗を構え、地域の方々に愛される地元のパン屋さん。奥田さんが山科出身というご縁もあり、当店の地下1階にもご出店いただいています。

 「たくさんのパン屋がひしめく京都で、生き残っていくには、ほかにないうちだけの味が必要だと考えました。できるだけ添加物を使わないことはもちろん、『カレーパン』のカレーや『あんバター』のあんこなどフィリングもまずは手づくりからはじめたんです」

 私たちはパンと聞くとそのほとんどが簡単にできてしまう、ファスト文化の象徴のように思いがちですが、本当は一つひとつ長い時間と手間ひまで出来上がっているんですよね。

■パンには味がある
 
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 「食パンには100%国産小麦を使い、毎日食べて欲しいという想いを込めてつくっています」

 袋を開けたときに香る、このパンの良い香りって何なんだろうと鼻を近づけると、パンは発酵している、という言葉が頭をよぎりました。
  『山食パン 』はとっても軽い食感。何もつけずに食べると小麦の香りや味、遠くにある塩気をちゃんと感じることができます。
 
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 一方、  『角食パン 』は手にとっただけでわかるしっとり感。まるで手に吸い付いてくるようです。きめが細かく、口に残る甘みはお子さんの朝ごはんにもおすすめですね。

 「軽くまるめ、型にふたをしないことで皮の香ばしさを感じられる山食と、生クリームを混ぜ、ふたをして焼くことでより濃厚な味になる角食。やっぱり僕たちパン屋は食パンを食べてもらいたいから、つくり方で違いを出して選ぶ楽しみも味わってもらえたらうれしいです」
 
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 「全店を見ても本当にこれが人気なんです」と奥田さんが話すのが、思わず深呼吸したくなる香りの 『バターロール 』です。バター、卵、砂糖が入ったバターロールはやさしい黄色。ふわふわで齧った生地からはバターのコクを感じます。

 「より良質なバターを使用したパンが注目されることはわかるけれど、うちは味が変わったり、仕入れられない、なんてことのないよう安定して手に入る国産バターを使用しています」
 
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 「朝も昼も夜もこのカレーパンでいい」というスタッフがいるほどファンが多い『カレーパン 』。もっちりした生地とカレーフィリングの相性は言わずもがな。
 
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 「うちの 『クロワッサン 』は27層って決まっているんです」という奥田さんの言葉には驚きました。

 「それ以上でも以下でもない、27層というのがうちのクロワッサンを一番生かすことができるんです」

 ナイフを入れたときのサクっという音に心が躍ります。幾重にも重なった層の中からバターの芳醇な香りが。私クロワッサンを食べるときはどうしたら生地を落とさず食べられるか悩んじゃいます。

■毎日のパン

 普通のパンをつくる、というのがブーランジェオクダのテーマだと話す奥田さん。そういえば、先程から毎日やいつも、安定などくらしを思い起こすキーワードが出ていますよね。そんな奥田さんにこれからのパンについてどうお考えか問いかけてみました。

 「どんどん新しい製法が生み出されていくんでしょうね。こうしないとあかんという壁に違う方向からチャレンジする人もいると思うし、僕自身も今の製法が正解と思っていません。ただ、僕は完成した商品がおいしければ、それで良いんですよ」

 良いものがつくれるのであれば、答えはひとつではないのかもしれません。

 「一方で、国産でまかなっていけるものがあるとするならば、そのおいしさも知ってほしい。どちらかである必要はないんです。それはお客さんの選択にまかせればいい」
 
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 「毎日食べてほしいから、手に取りやすい価格で売りたいという気持ちはあるけれど、つくり手を思うとただ安く売るだけでは追いつかないというのが正直なところ。だから、パンのフィリングなども絶対に手づくりでなければならないということはないと思います」

 ブーランジェオクダでは現在、独自で開発したフィリングを外部の業者に委託しているのだそう。奥田さんはそれを「お客さまの理解があるから」と話してくれました。
 食べる人がいるからこそ、つくる人がいる。その当たり前にあぐらをかかず、奥田さんはいつだって食べる人の気持ちをくみ取る努力をしてきたんですね。つくると食べるはつながっているということに、奥田さんの言葉で気づくことができました。
 
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 くらしが豊かになり様々なものの価格が高騰する中で、安い方が良いというのは私たち消費者の深層心理でもあります。でも、食べることはつくり手、食べる人、そして社会、みんなでつくっていくものなのではないでしょうか。そう思うと「食」は、私たち日本人が持つ「お互い様」という精神で成り立っているのかもしれません。
 
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 地下1階のブーランジェオクダには、パン職人がパンをつくる姿が見える厨房があります。そこに並ぶパンたちは丸かったり、ねじれていたり、巻いていたり……。きっと人の手でつくっているからこそ出来上がる形。
 
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 私のお気に入りはベーコンエピ。表面はぱりっと生地はもちっと、小麦の甘みと濃厚な旨みが舌に広がっていきます。思い返せば、パンをゆっくり味わうことっていままでなかったかもしれません。昨日まで無自覚に食べていたものに意識を向けると、こんなにも心が動くなんて。知るということはいつも感動を与えてくれます。
パンを食べるときのなんとも言い得ない幸福感は、人を感じるからなんだな。ぐっと噛みしめると、「あの武骨さがパンの良いところ」と笑う奥田さんの顔が頭に浮かびました。



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