“チリメンジャコ”を食べていると、いろいろな形の魚やイカ・エビなどの生きものが混じっていることがあります。このユニークな生きものたちに、きしわだ自然資料館ときしわだ自然友の会の皆さんが“チリメンモンスター”と名づけました。
2021年5月24日 学芸員さんに詳しく教えてもらうために、きしわだ自然資料館に行ってきました。
“チリメンモンスター(略して『チリモン』)”とは“チリメンジャコに入っているジャコ以外の生きもの”の総称です。親しみやすいこの名前はアニメ番組からついたのかと思いがちですが、『○○モンスター』とは生物の世界ではポピュラーな命名法だそうです。
『チリモン』は近年、見かけの問題だけではなく、アレルギーの要素になるとのことで“チリメンジャコ”の商品からは異物として排除されてしまいます。
そのような時代の流れを逆手にとって、出会うことが珍しくなった『チリモン』を探して楽しんでみましょう!子どもたちだけでなく、大人でも夢中になってしまう遊びです。
今年の春に大阪湾で捕れた魚たちです。バットに無造作に保管されている『チリモン』は未知の世界に繋がっているように見えてきます。
実習の始まりは学芸員さんから“チリメンジャコ”の原料になる『カタクチイワシ』の説明を聞きます。
売場でお馴染みの、いわゆる“チリメンジャコ”は『カタクチイワシ』の稚魚です。手前から奥に向かって生まれた順番に並んでいます。成長するにしたがって姿が変化していくのがよくわかります。
いよいよ『チリモン』を探します。やり方は、ひとつまみをお皿に取り出してパラパラと広げます。一度にたくさんの量を取り出すと、小さな生きものが隠れて見つけにくくなるので欲張ってはいけません。
“チリメンジャコ”と形や色が違う生きものを探し、ピンセットで別の場所に取り分けます。似たものが多いので根気よく観察します。
よく見えるように顕微鏡を準備してもらいました。学芸員さんに焦点をあわせてもらいます。
どんな風に見えるのかな?
かっこいい!このモンスター感!ただの小さいエビではないように見えます。顕微鏡を使うと肉眼ではわからない不思議な世界が見えて、つい興奮してしまいます。
今日は店頭で見かける魚たちの赤ちゃんの時期である『チリモン』を探して、魚種の区別のポイントを紹介します。売場で見かけるおとなの姿を思い出しながら、可愛い姿を楽しんでくださいね。
■『ウルメイワシ』の仲間
これは『ウルメイワシ』。『カタクチイワシ』に比べて、顔つきがシュッとしています。
よく観察しましょう。
■『イカナゴ』の仲間
『イカナゴ』はイワシの仲間と比べると全体にスマートな体です。受け口なのが特徴です。
忍耐をもって観察しましょう。
■『ハゼ』の仲間
『ハゼ』は赤い背びれとまとまって見える胸びれが特徴です。
これらは似たような姿ばかりですが、集中力を切らさずに根気よく観察しましょう。
■『アユ』の仲間
『アユ』は川に棲んでいるイメージですが、こどもの頃は栄養豊かな海で漂って生活し、やがて川に移動していきます。
■『カサゴ』の仲間
『カサゴ』の黒い色素は体全体には点在せず、背びれと尻びれの根本と体の真横の3ヵ所に線上に分布しています。関西では『ガシラ』と呼ばれています。
■『サバ』の仲間
『サバ』は尾びれを細かく強く振動させて高速で泳ぐ特徴が、こんな小さい頃でも現れています。
■『ボラ』の仲間・『アジ』の仲間
『ボラ』はいぶし銀の美しい姿です。
『アジ』は“ぜいご”がしっかりと見えます。
■『タイ』の仲間・『カレイ』の仲間
『タイ』はおとなとそっくり。
“左ヒラメに右カレイ”。この子は右に目があるので『カレイ』です。
■『タチウオ』の仲間・『イカ』の仲間
『タチウオ』はエサとなる稚魚を狙って下から群れに近づいた時に一緒に捕まってしまったと思われます。
『イカ』は胴の部分にエンペラがあります。『タコ』の胴はツルッと丸いので違いが区別出来ます。
■『アナゴ』の仲間
『のれそれ』で有名な『アナゴ』の稚魚。このように変わった見た目をした魚類のこどもは、この時期“レプトケファルス幼生”と呼ばれます。茹でて干されるとボロボロになるので完全な姿は珍しいそうです。
■『エビ』の仲間・『巻貝』の仲間
『エビ』の仲間や『巻貝』の仲間。こちらは2㎜ほどの大きさですが、おとなとそっくり。
■『カニ』の仲間
『カニ』の仲間。“メガロパ幼生”と呼ばれるかわいい時期です。
『チリモン』は、大切な命をもらう食べ物であるだけでなく、海という世界に繋がっている環境や、水産業を学んだり考えたりする機会を与えてくれます。
皆さんも『チリモン』を探して好奇心の扉が開いたら、博物館や水族館、身近な海に繰り出して体で感動を受け取ってくださいね。
“チリメンモンスター実習”を詳しく知りたいのなら『チリモン博物誌』がおすすめです。
図版多数、遭遇率、主要生息地などを全て網羅した初めての本です。
『チリモン』の名付け親の学芸員さんたちの愛情たっぷりのコラムが楽しですよ。
売場はこちらです。
もちろん、きしわだ自然資料館のミュージアムショップでも取り扱っていますよ。
きしわだ自然資料館さん、取材にご協力いただきありがとうございました!
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