みんなみの里

【みんなみの里】いろいろな農作物の栽培にチャレンジしているパワフルおっかさん | 小山まつ枝さん

【みんなみの里】小山さん

その他

2020/10/11

 9月末、まわりの田んぼでは稲刈りが終わった中に、ぽつんとただ一つ黒っぽい田んぼがありました。ここは小山さんが栽培する黒米の田んぼです。
 鮮やかな緑色の茎に真っ黒に染まった穂先の稲が、風に吹かれて大きな波のように揺れていました。
 
【みんなみの里】小山さん


 縄文時代の終わりに中国から入り、弥生時代の食文化に影響を与えたともいわれるお米は「古代米」と呼ばれ、代表的なものに黒米、赤米、緑米、香り米があります。
 私たちが現在食べている白米は、さまざまな品種改良を重ね、よりおいしいものを生みだしてきていますが、古代米は当時の姿のまま現代に生き続けている、まさに「古代のお米」と言えるかもしれません。ここ数年は、その栄養が注目され、古代米を主食としている家庭も増えてきています。

 みんなみの里にも古代米が顔を出していますが、現在出荷している生産者さんはただ一人、小山まつ枝さんのみです。

 小山さんが古代米を栽培するきっかけとなったのは、親戚から田んぼを引き受けることになった22年ほど前のこと。近所から香り米(うるち米)の栽培をすすめられたことでした。
 ちょうどその頃、鴨川市のシンボルとなるべく、鴨川市総合交流ターミナル(前・みんなみの里)が長狭平野の中央に創設されました。行政(鴨川市)と生産者さんがタッグを組んだ画期的な事業がはじまったのです。市内が活気立ち、各生産者さんの家族をも巻き込み、新しい未来へと進もうとしていました。
 そんな状況のなか、小山さんのご主人が突然亡くなったのです。いろいろなことが一度に起こり、その時の心中は察するに余りあるものです。それでも立ち止まっている暇はないと力を振りしぼり、農業と子育てを両立させました。その栽培した農産物のなかに古代米もあったのです。

 前みんなみの里創業当時は、古代米を栽培する農家が市内に複数件あり、皆で切磋琢磨してお米をつくっていたそうです。まだ古代米が珍しかったこともあり、東京方面に出荷すると高額で販売できたとのこと。
 しかし、生産者さんの年齢や栽培の難しさから、だんだんと古代米を生産者する農家が少なくなっていきました。栽培当初から勉強しながらひとりで栽培をしていた小山さんの古代米は、とても貴重な存在となったのです。


 現在小山さんが栽培しているのは、黒米の「朝紫(アサムラサキ)」と赤米の「紅染めもち(ベニゾメモチ)」の二種類のもち米。
 今年の稲の色付きがあまりよくないと小山さんは言っていました。原因は長雨と日照不足などの天候不順。この状況は年々ふえているとのこと。異常気象といわれて長い年月が経ちますが、天候不順が稲の色付きにも影響を与えているのだと思い知らされたような気がします。


 稲の乾燥と色付きを待ち、10月初めに稲狩りがおこなわれました。
 ヒョイッと身軽にコンバインに乗った小山さんは、一本も残さないよう大切に黒米を刈り取っていました。
 刈り取られた稲の穂先は黒く輝いてとても美しく、一部はドライフラワーにするとのこと。
 
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 ほとんどの古代米は丈が高く、強風に吹かれると倒れやすいため、必要以上の肥料を与えない方が良いという話があります。古代米が食べられていた弥生時代の環境が非常に厳しかったと想像するのはたやすいこと。そんな状況でもしっかりと根を張って生き続けていたのですから、あまり手を加えない方が良いのかもしれません。
 
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 「ほら、こんなに長いんだよ」と刈り取ったばかりの黒米の稲を見せてくれました。持ち上げられた稲は、同年代の中では長身の方に入る小山さんの背丈ほどでした。
 
 小山さんは古代米に肥料を与えず、自然のままに育てているそうです。そのため、生育状況があまりよくない時もあります。
 また、脱穀や精米をする際、白米をつかったものとは別にした方が良いそうです。機械にくっついている白米が混ざってしまうからです。
 しかし、古代米だけを精米する場所はなかなか無いのが現実。そのため、昔ながらの機械を使って脱穀し、白米やつぶれた米粒がないか一粒一粒確認しているそうです。
 とても手間のかかることですが、大切に育てたお米を良い状態でお客様にお届けしたいと、この作業を小山さんはずっと続けています。
 
【みんなみの里】小山さん

 収穫された黒米は、三日後には直売所に出てきました。先日まで田んぼの中で風に吹かれていたお米は、養分をたっぷりと吸収してミネラルたっぷりの古代米になったのです。
 白米に対する割合や浸水時間など、米袋に表示してくれているので参考にしてみてください。


 古代米のほかにも小山さんは、さまざまな農産物を栽培しています。
 ソーメンカボチャやコリンキーなどのカボチャ、インカのめざめやノーザンルビー、レッドムーン、シャドークイーンといったさまざまな品種のじゃがいも。今年は大きなユウガオもありました。
 
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 これらの農産物は、ほかの生産者さんがあまり栽培していないため、直売所ではとても目立ちます。
 なぜこれらの農産物を栽培するのか聞いてみました。答えは「珍しいものをつくった方が面白い」という明解なものでした。「次は〇〇に挑戦してみようかな」と、小山さんのチャレンジ精神は尽きることがないようです。


 今回の取材を通してあらためて感じました。
 どんな状況でも弱音を吐かず、チャレンジ精神が旺盛な小山さんは、生命力がとても強い古代米のようなパワフルおっかさんです。
 直売所に来ると「おはようさん」「こんちは」と、茶目っ気たっぷりに明るく声をかけてくれるおっかさんに、今日も元気をもらいました。


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