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【みんなみの里】すべては「開墾」から始まった嶺岡での暮らし 吉野禎男さん | 里山良人

【みんなみの里】吉野さん

その他

2021/04/03

 みんなみの里の後方に見える嶺岡山系。ここには千葉県で一番高い山(愛宕山408m)があり、太平洋と東京湾を望むことができます。昔は草地もあり、放牧された牛馬がゆったりと過ごしていましたが、人の手が入らなくなって杉などが大きく育ち、今では森と化しています。

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 嶺岡での生活はなかなか厳しいものがあるため、ほとんどの家が麓に移住。農作業をする昼中だけ山に上るというお宅もあります。

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 今回ご紹介する吉野禎男さんのお宅は、森の中をとおる細い道の先にあります。下山せず嶺岡にある家に住み、さまざまな農産物を栽培しています。
 じつは吉野さん、自宅のある東京と、農業をするために実家の鴨川を行き来している忙しい生産者さん。サラリーマンだった頃は週末だけ鴨川に帰ってきていたようですが、今では鴨川での生活が増えてきているとか。

 吉野さんの祖父は海軍に勤務していたそうですが、戦後、移住したのが現在の嶺岡の家でした。
 じつはこの土地、もともとは麓にある曹洞宗の名刹長安寺さんの敷地だったとか。当時の長安寺さんでは、山にある畑で野菜などを栽培するために僧侶が上り下りしていたそうです。山の中には長安寺さんへと続く、かつての道の痕跡もあります。

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 お天気が良ければ、吉野さんの家から長狭平野と鴨川の海を見ることができます。それだけ高い場所に住んでいるということでもありますが。
 ここで生活するためにと、森と化した敷地を広げるのは並大抵のことではなかったと思われます。それを物語るのは、吉野家の屋号「開墾」です。

 嶺岡の土はミネラルが豊富で、この山に降った雨が麓の田畑へと流れて美味しい長狭米ができます。反面、粘土質の部分も多く、家づくりはまさに「開墾」から始まったことでしょう。

 吉野さんが栽培する農産物は全体的に大きく、その姿に毎回のように驚いてしまいます。栄養をたっぷりと吸収させ大きく育てるには良い土が大切です。

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 (11月初め、まだまだ赤ちゃんだったブロッコリー)
 

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 (11月後半、直売所に登場)

 自宅の周りにある畑では、冬においしいブロッコリーや、時期をずらしながら植えられたキャベツ、枝豆などを栽培。

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 もともと高い場所での栽培なので、キャベツはまさに高原キャベツですね。

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 三月中旬、自宅の上方にある嶺岡山にある広い畑(第2ファーム)におじゃましてきました。
 杉の木々から抜け出したところに突然現れた広い敷地。ここには縫うようにお茶の木が植えられています。

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 ちなみに吉野さん、このお茶の葉っぱで抹茶をつくり、自宅でおいしいお茶をいただいているとのこと。
 自家製の抹茶を飲みながら和菓子を食べ、麓の景色を眺めながらゆったり気分に浸る。優雅でうらやましいくらしですね。
 もちろんその夢のためには努力が必要なことも十分わかってはいますが。


 第2ファームの一画で自然薯掘りの様子を見学することに。
 ここの畑も足を取られるほどのふかふかの土。歩いていても気持ちの良いものです。
 

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 奥の方から現れたユンボがお茶並木の横を上手に抜けて畑に到着。

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 自然薯がありそうなお茶の木の下を掘り始めました。
 様子をみながら大きく土を掘り出すと、大きな穴ができあがりました。

 やがてエンジンを止めてユンボから降りた吉野さん、その穴に入って行きました。

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 なんとその穴は吉野さんが隠れてしまうほどの深さで、かぶっている帽子がなんとか見えるくらい。
 その穴の中、お茶の木の下の方にいる自然薯はほんの一部分だけが見える状況。

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 今度は長い柄のついた細長いスコップを使ったり手で掘ったりと、一番デリケートで気を使う作業。自然薯を傷つけないように土を掘っていきます。

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 掘ってて掘って掘って、やっと自然薯の下の部分が現れました。折らないように自然薯をそぉ~と、でもしっかりとつかみ、掘り出しに成功。
 その場にいた全員が思わず「やったぁ~」と歓声をあげました。

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 吉野さんも深い穴からの脱出に成功し、掘り出した自然薯と記念撮影。

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 掘り出された自然薯は、真っすぐ1m以上に成長した立派なもの。半分に割った竹に乗せられた自然薯に思わず見とれてしまいました。


 たいていの山の中に隠れ育っている自然薯はクネクネと曲がっていることが多いものですが、今回掘り出された自然薯のようにほぼ真っすぐなものは珍しいです。
 クネクネした自然薯を掘るには数時間かかることも多いですが、今回の自然薯掘りにかかった時間は約20分。ムカゴが育っていた場所(土)が良かったのでしょう。

 吉野さんによると「ちいさなムカゴがポロっと落ちて、大きな自然薯になるまでは4~5年かかる」とのこと。
 その話をお聞きし、自然薯を食べるときは感謝してありがたくいただかなければならないと思いました。


 
 自然薯を取り出した一画から茶の並木をはさんだ場所に、いくつかの大きく深い穴と、そこに覆われているトタンがありました。

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 なんだろうと眺めていると、吉野さんが「この中で里芋を貯蔵しておくんだよ」と。
 高地にあるから気温が低く、自然の冷蔵庫となるのだそうです。

 

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 三月後半、自宅前の畑で採れたキャベツを直売所に出荷した吉野さん。

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 どれも大きく新鮮で、やわらかい葉っぱには嶺岡の朝露をまとっていました。
 「立派でおいしそうなキャベツですねぇ」と声をかけた私たちに、「オレの愛情がたっぷり入っているからサ」と吉野さん。
 冗談半分に言ってはいますが、野菜に対する強い思いがなければ東京と鴨川を行き来してまで農業を続け、しかも立派なものに育てることはできないでしょう。

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 今は絹サヤの赤ちゃんが顔を出しはじめています。


 自宅の下の方には、縄梯子を吊るした大きな木があります。

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 ツリーハウスではありませんが、この遊び場はお孫さんたちのためにつくったものだそうです。
 おとなが躊躇してしまうほどの高さでもこどもはへっちゃら。自然を利用したこの遊び場は、都会くらしのお孫さんにとってはチョッとしたアスレチックのようなものなのでしょう。
 元気に楽しく遊ぶお孫さんの為、さらにいろいろな遊びを考えているようで、楽しそうに語る吉野さんの笑顔が素敵でした。


 今回あらためて思い知らされたのは、すべてのことは「一日にしてならず」ということです。

 長い時間をかけて大きく育つ自然薯のたくましさ、大きく立派な野菜を育てること。そのためには良い土づくりが必要なこと。
 すべては「開墾」から始まった吉野家のくらし。厳しい条件の中でも、いろいろと工夫し、自然と共存しています。

 

 

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