レビュー
身体がすっと整うようなスパイス体験。「冷やして食べるカレー」
2026/07/22
日本に住み始めて20年。イタリア料理も、日本のグルメもこよなく愛するマッシさんに、この夏おすすめのレトルトカレーを試してもらいました。今回は、「冷やして食べるカレー」です。
(文・写真/マッシミリアーノ スガイ)
エッセイスト。1983年イタリア北部ピエモンテ州生まれ。2007年に日本に移住し、日伊通訳者の経験を経てからフードとライフスタイルライターとして活動。
日本食文化の面白さや魅力、グルメの紹介などの記事とエッセイを年間約400本執筆。
著書に『イタリア人マッシがぶっとんだ、日本の神グルメ』(KADOKAWA)などがある。
ついに猛暑の時期が始まった。じっとりと肌にまとわりつく湿気と強い日差しの中で、食欲が落ちてしまう日も少なくない。そんなとき、キッチンに立って火を使うことすら億劫になるものだ。
しかし、エネルギーを補給しなければ夏は乗り切れない。何かさっぱりとしていて、同時にスパイシーなものが食べたい。
そう考えていたとき、店頭で見つけたのが「冷やして食べるカレー」シリーズだった。
カレーといえば、湯気が立ち上る熱々のルーをご飯にかけて、汗をかきながら食べるのが一般的だ。それを「冷やして食べる」という提案に、最初は少しの驚きと、それ以上の好奇心を抱いた。
冷蔵庫で冷やすだけで、そのまま器に盛って食べられるという手軽さも、夏の熱気に疲れた身体には何よりありがたい。
今回、3つの異なる味わいを体験してわかったことは、それぞれに明確な個性があり、冷たいからこそ引き立つスパイスの魅力に満ちていたことだ。
圧倒的な清涼感。チキンジンジャーカレー
最初に手を伸ばしたのは「チキンジンジャーカレー」だ。器に注ぐと、さらりとした質感のルーから、爽やかな生姜の香りがやさしく立ち上る。
ひと口食べて驚いたのは、その圧倒的な清涼感だ。生姜のシャープな辛みと風味が口いっぱいに広がり、冷たいルーが喉を通り抜けるたびに、身体の奥からすっきりとしていく感覚がある。
ココナッツミルクのまろやかさがベースにありながらも、生姜のキレが全体を綺麗に引き締めている。具材の鶏肉もしっとりとしていて、冷たくても固さを感じさせない。
蒸し暑い日の昼下がりに、まさに求めていた味わいだった。
まるで冷製スープの味わい。えびとトマトのカレー
次に試したのが「えびとトマトのカレー」。こちらは、一転して濃厚な旨味が特長の一皿だ。
ひと口めから、えびの出汁の濃厚なコクがガツンと響く。トマトの爽やかな酸味と甘みがその旨味を支えていて、レモングラスのハーブ感が後味を軽やかにしてくれる。
冷やすことで、海鮮の旨味とトマトのフレッシュさがまるで冷製スープのように引き立ち、スプーンを進める手が止まらなくなる。ナンにつけて食べるのも良さそうだけど、冷たい素麺やカッペリーニといった細麺に絡めて、和洋折衷の冷製パスタ風にアレンジしてもきっと美味しい。
夏の食卓の可能性を広げてくれる一袋だ。
穏やかなスパイスの主張。レモンクリームチキンカレー
最後に味わったのが「レモンクリームチキンカレー」。現在は販売終了となっている「シチリアレモンのクリーミーチキンカレー」の冷製版とも言える。
スプーンですくうと、クリームのまろやかなコクが最初にやってくる。しかし、その直後にレモンのフレッシュな酸味が口内を駆け抜け、決して重たさを残さない。スパイスの主張は穏やかで、クリーミーさと酸味のバランスが絶妙だ。
辛いものが苦手な人でも、これならサラリと完食できるに違いない。
3種を交互に食べてみて実感したのは、「冷やす」ことは単に温度を下げるだけではなく、スパイスや素材の「酸味」と「キレ」を最大限に引き出すための計算された手法であるということだ。油分が固まって口当たりが悪くなるようなことは一切なく、どれも驚くほどなめらかで喉越しが良い。
ご飯を冷水でさっと洗って粘り気を取り、冷たいルーをかけてサラサラとスープ茶漬けのように食べるスタイルが、個人的には今年の夏の定番になりそうだ。あるいは、冷やした焼き野菜をディップして、冷えた白ワインと合わせるのも大人の愉しみ方として良いかもしれない。
あたためない、火を使わない。それだけで、夏の食事のハードルは劇的に下がる。そして冷蔵庫から取り出すだけで、これだけ本格的で、身体がすっと整うようなスパイス体験ができる。
この「冷やして食べるカレー」は、日本の暑い夏を快適に、そして美味しく乗り切るための、新しい食卓の相棒になってくれるはずだ。
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