「時間もモノも人は隙間を埋めたくなるもの。だからこそ…」takaさん

整理と収納 大槻貴子

おたより/心に余白を生む、整理と収納

2025/01/16

 仕事や家事、あわただしい毎日の中で、自分自身と向き合う時間やゆとりはありますか? 暮らしの空間は私たちの心と深く繋がっています。この連載では、心がほぐれ、気持ちが落ち着く「整理と収納」を楽しむ方々を紹介します。2回目は整理収納アドバイザーのtakaさんのご自宅を訪問。家族5人、さぞやゆったり暮らしていると思ったところ、takaさんいわく、「悠然といきたいところですが、余白は(多少は)がんばってつくるものかも。実は私も慌ただしい毎日なんです」。ちょっと親近感。忙しくてもできる、takaさん的整理収納の心得、聞いてみました。
( 取材と文・竹村真奈 撮影・ふぁま)

 

takaたか
ご主人と3兄妹(高3・高1・中2)の5人暮らし。片付けサポート累計1800時間超えの整理収納アドバイザー。ムリなく続けられる片付けと防災をテーマに活動中。無印良品の防災に関する投稿にも関わっている。
Instagram: @taka.sustain.life

 

整理と収納 taka

 

「ああ、これは家族全員がどうやったら片付けやすい仕組みを作るかというプロジェクトなんだ」

 

  気持ちいい日差しが差し込み、たくさんの植物の陰影が美しく揺れるご自宅。
「何かが育っていく姿や過程を見るのが好きなんです。植物も、新芽が出てきた! など水やりをしているだけでも日々新しい発見があるのが楽しくて。実は私、もともとはインテリアどころか、整理収納にもあまり関心がなかったんです。子どものトイレトレーニングのときにトイレの壁にタイルを貼ってみたら、あ、素人の私でも自分の家を好きな空間にすることができるんだ、と面白さに気付いたんですよね。そこからはDIY一直線。次は洗面所やキッチンの扉を好きな色に塗り替えて、ああ、そうしたら壁紙も貼り替えよう、と(笑)」
 ただ、意外なことに、部屋の片付けは苦手だったそう。
「DIYのおかげで部屋を取材してもらったりして、周りからは整理収納も当然できる人と思われていて、実は片付けは苦手だったんです。一念発起してモノを減らしてみるものの、やっぱりあれこれ増えてきたりして。ああ、これはきちんと習った方がいいんじゃないか、と思って、整理収納アドバイザーの勉強をしてみたら、これがまあ上手になりまして、仕事にまでなりました…。自己流も良いですが、まとめて一から学ぶのもいいな、と」
 すっきり、心地の良い空間をつくりはじめたtakaさん。そうすると今度は家族のモノが気になり始める。そのときの(ちょっとした)摩擦のエピソードも率直に教えてくれた。これは整理収納にハマりはじめた人たちが体験することの多い話でもある。

「夫が景品で貰ってきたスピーカーがどんと部屋に置いてあって、これどかしてくれない? とか(笑)、家族が片付けてくれないことにイラッとしたり。私だけが片付けできても心地よく過ごせなかったんです。そこで、ああ、これは家族全員がどうやったら片付けやすい仕組みを作るかというプロジェクトなんだ、と(笑)。そこでみんながわかりやすいように「病院」とか「学校関係」とかラベリングしたり、引き出しの中を『見える化(扉を開けたら何が入っているかすぐわかる状態)』することで、みんな自然と自分たちで使ったモノを元に戻したり、探せるようになったんです。これは快感でした(笑)」


 

1.DIYが自分の可能性を広げてくれた


 
整理と収納 大槻貴子
 子どもがまだ小さい頃に押入れを隠れ家風の空間にDIY。部屋の中に大きなグリーンが広がる。


余白、という意味ではDIYほど自由度の高い楽しみも少ないだろう。
「白い木の階段を登ったところは子供たちの秘密基地なんです。周囲の緑の木はクロスを貼りました。子供たちが大喜びしてくれて、もう中学生の子もいるんですが、今も中で漫画を読んだりしていて、これからもずっと残しておいてねと言われてます。
以前は素敵なインテリアはおしゃれな人たちだけのものだったり、プロにリノベしてもらわないとできないという諦めのようなものがあったのですが、DIYを始めたことで、あ、自分でもできるんだ! と視界が開けました。大げさなようですが、人生変わりました。
実はあまり好きではなかったブラウンのキッチンの収納扉を白に塗って、吊り収納を外したら、キッチンに立つのが好きになったり。子どもが小さかった頃のランドセルコーナー側の壁面が汚れていたのであえて色ムラや味わいが出る塗料でペイントしたりもしました」

 

 

整理と収納 taka

時間が経つごとに味わいを増す、自分で塗れる自然素材のペイントで部屋にアクセントを。

 

2.ラベリングで家族仲が円満に!?

 

「家族で使うモノはラベリングしたり、スペースで区切ってわかりやすく。ただ整理収納を始めたころは、試行錯誤だったのでモノの定位置をしょっちゅう変えていたら、夫の中にそのころの記憶が強く残ってしまったようで(笑)もう何年も同じ場所に定着させているのに毎回、何度も『あれどこ?』って聞かれました。5年くらい続いたので、みなさんには初期設定をなるべく慎重にやってほしいです(笑)」
 

 
整理と収納 taka

人ごとに分けられたポーチにはそれぞれの保険証や病院のカードがまとめられている。


写真上段
木製書類整理トレー A4・2段
中段
EVAケース(販売終了。現行商品ではEVAスパポーチを推奨)
下段
ポリプロピレンソフトフィルムクリアホルダー  
再生ポリプロピレン入りファイルボックス・スタンダードタイプ
スチロール仕切りスタンド・ホワイトグレー3仕切
 

整理と収納 taka

役割別にラベリングして収納しているので誰の、何のためのものか一目瞭然。突然病院へ行くときなどもすぐに取り出せる。

 

整理と収納 taka

ハンガーは背の高いモノ、ストックはひと目で見えるように背の低いファイルボックス、大きなモノはスチロール仕切りスタンドを使用するなど収納用品を用途に合わせて使い分け。


上段
ポリプロピレンメイクボックス・1/4
ポリプロピレンファイルボックス・スタンダードタイプ・ホワイトグレー・1/2(現在は再生ポリプロピレンに切り替えた商品が発売中。
ポリプロピレンファイルボックス・スタンダードワイド・ホワイトグレー・1/2(現在は再生ポリプロピレンに切り替えた商品が発売中。

下段
ポリプロピレンファイルボックス・スタンダードタイプ・A4用・ホワイトグレー(現在は再生ポリプロピレンに切り替えた商品が発売中。
再生ポリプロピレン入りファイルボックス・スタンダードタイプ・ワイド
スチロール仕切りスタンド・ホワイトグレー


3.互いのパーソナルスペースを大切に

 

一番に考えるのはやはり家族のこと。「個々のパーソナルスペースを作る。広さ的に個室までは与えられないからこそパーソナルなスペースをちゃんと作って上げたい、という思いは強いかもしれないですね。子どもが小さかった頃も、“なんでもボックス”をそれぞれに作って、自分だけのモノをそのボックスに入れていいよっていう。ちょっとしたことですけど、自分の場所があると安心しますよね」

 
整理と収納 taka

娘さんのスペース。学校のプリントなどは扉付きにして、ごちゃごちゃしたモノはラタンバスケットに入れてスッキリ見えるように。

左から
スタッキングシェルフセット・5段×2列・オーク材
スタッキングシェルフ用トレー・オーク材
スタッキングチェスト・ハーフ・引出し・2段/オーク材突板
重なるラタン長方形バスケット・大
重なるラタン長方形バスケット用フタ

 

整理と収納 taka
机の上にはなるべくモノが出ていないように、定期的に娘さんのペースで片付けをしているそう。椅子は6,7年前に無印で買ったもので現在は販売終了。カレンダーの横の整理かごは文房具をまとめるのに使っている。


木製デスク キャビネット 上置きセット
シーグラス 網代編み 整理かご 長方形 小
 

4.無印良品はだれにでも、何にでも、フィットしてくれる

 

 収納を学ぶために無印良品でアルバイトをしていた経験もあるtakaさん。「商品点数は多いようで、選択肢が意外と少ないのがいい。サイズも数パターンで決まっているので選びやすいし、性別年齢関係なく、”誰かのために”がないのもいい。どこにでもフィットしてくれるから楽なんです。インテリアではひとクセあるモノを買いがちですけど、中身の収納ボックスは全部といっていいくらい無印ですね」
 

 
整理と収納 taka

長男と次男の兄弟の部屋にはダンボールスタンドファイルボックスのダークグレーが似合うのでは、と揃えたそう。

 

スタッキングシェルフセット3段×3列スタッキングシェルフ・ワイド・追加3段・オーク材 を追加

ワンタッチで組み立てられるダンボールスタンドファイルボックス5枚組

 

整理と収納 taka

木製シリーズには家族が毎日飲む薬とそれぞれのコップをセットで置いている。


木製小物収納3段

 

整理と収納 taka

ほとんどが無印良品のステーショナリー系のストック。子供たちの学習用。「男女関係なく使える点がいいです。子供も無印好きです(笑)」


なめらかシャープ芯
プラスチックけしごむ 白・小
スティックのり
油性マーカーツイン
ポリプロピレンノック式蛍光ペン
セロハン粘着テープ
こすって消せるボールペン用リフィル


 

5.暮らしつつ備える。防災備蓄のこと

 

防災と聞くとやや構えてしまいそうだが、takaさんはこう話す。「”暮らしつつ備える”というふうに、防災と日常と切り離してほしくなくて。私は東日本大震災当時、備えをしていなくて友達や家族に助けてもらったんですね。それをきっかけにゼロから防災備蓄を始めました。次に何かあったときに子どもたちや友達を逆に助けられるようにしたいと思っています」


 

整理と収納 taka

もしものときのためだけでなく、普段の暮らしから備えていくほうが効率もよく、買い物もしやすいという。店舗の棚卸しのように食品備蓄などの賞味期限やストックを徹底管理している。


油性マーカーツイン

 

整理と収納 taka

食品がわかりやすく収納されている。この他にも水、防災リュック、トイレットペーパーといったあらゆるモノを一箇所にまとめて備蓄している。


上段
ポリプロピレンファイルボックス・スタンダードワイド・ホワイトグレー・1/2(現在は再生ポリプロピレンに切り替えた商品が発売中。
ポリプロピレンファイルボックス・スタンダードタイプ・1/2(現在は再生ポリプロピレンに切り替えた商品が発売中。

中段
ポリプロピレンファイルボックススタンダード 1/2 ホワイトグレー 小

下段
ポリプロピレンファイルボックス・スタンダードタイプ・ワイド (現在は再生ポリプロピレンに切り替えた商品が発売中。
ポリプロピレンファイルボックス・スタンダードタイプ・1/2(現在は再生ポリプロピレンに切り替えた商品が発売中。

 

整理と収納 taka

2ヶ月に1度シートをチェックし期限が迫ったものをピックアップ。それらはキッチンに移して消費し、ストックを補充するという流れ。


素材を生かした味噌汁 豚汁

 

6.自分のための癒しの時間をつくる
 

中国茶と金継ぎを習いに行っているtakaさん。特にお茶の時間は貴重で、お客様や家族に淹れるのはもちろん、自分のためだけに淹れるのも、気持ちが豊かになれるひとときだそう。「放っておくと仕事にのめり込んじゃって、スケジュールをどんどん仕事で詰めちゃうんですよ。ああ、余裕がなくなってきたな、と思って、中国茶と金継ぎを習いはじめたんです。先にやりたい趣味の時間を入れてしまうことで、自分で自分の背中を押す、そうすることで自分自身の時間の余白もうまく作れるようになりました」


 
整理と収納 taka
整理と収納 taka

実家が九谷焼の絵付け師ということもあり、器などへの思いが人一倍強いtakaさんが金継ぎをした器。

 

 

自宅で過ごす時間をすべてリラックスできる時間に。

 

 試行錯誤を重ねながら今の暮らしを手に入れたtakaさんにとって余白時間とは? 「私にとってのリラックスできる時間は自宅で過ごす時間すべて。例えば、料理や洗濯、棚のほこりをはらうなど家事の時間、お茶を淹れたり、シロップを作ったりする趣味の時間。どの時間にも視界には好きなものが入っていて、それに癒されたり、好きだなぁと改めて思ったり。余裕なくバタバタ過ごす時間もたくさんありますが、帰る家が私だけでなく家族にとっても、リラックスできる場所であってくれたらと思います」

 
整理と収納 taka
木漏れ日が気持ちよく差し込む空間。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

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