彼女のぼくへの溺愛ぶりと言ったら、相当なものだ。
職場のロッカーの番号をぼくの誕生日にしたり、車のナンバーも同じ。外でも家でもその4桁を見つける度、もう息を忘れて喜んでいる。そして今日のおやつはこの、5種のフルーツケーキ。友達と無印良品へ行ったとき、その放つオーラを感じて手に取ったら、賞味期限がその数字だったらしい。すごい才能だ、、、でも、彼女のことだ。ただ美味しそうな物に惹かれたんだとぼくは思う。
彼女が淹れたコーヒーと5種のフルーツケーキをトレーで運び、ぼくの隣に座った。ゆっくりと時間が流れる。
ほんのりラム酒の香りがした。コーヒーの匂いと混ざり、なんともいえない贅沢な香りだと思った。彼女は両手でぼくの顔を優しく包み、「かわいいね~」といいながら撫でてくれる。肉球は苦手だから、触られないようにこっそり隠す。
君と過ごすかけがえのない、幸せな時間。ぼくのこの日々は、君の為のものだ。だから今、この目で愛を伝えている。
だけど、ぼくの寿命はあと少し。
遠くの信号が赤に変わった。雨の雫がクランベリーみたいだ。窓辺で彼女の帰りを待ちながら、ぼくは忘れようとしていた。彼女の顔を、指先を、呼吸を、幸せな匂いを、暖かいぬくもりを、かけがえのない時間を。ぼくは忘れたんだ。
でもね、君に忘れられる方法がわかんないよ。教えて、さよならの言い方も。
ぼくはなにも出来ないまま、今日が終わる。
無印良品 岐阜高島屋
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