【岐阜高島屋】雨とチョコレート | 食のお便り

窓に映る信号がクランベリーみたいな色をしてる。
仕事終わり、なんの言い訳もないまま、無印良品 岐阜高島屋に向かっている。雨が流れるように、目蓋の裏でなにかが流れる。そうだ、美味しいチョコを食べよう。

バス停から歩いてすぐに無印良品はある。店に入ってすぐの売場で、白くてふわふわのアウターが目に留まった。胸の奥が少し揺れた。エスカレーターは使わず階段で2階へ上がった。少しの運動は、チョコを食べる罪悪感を薄める為。そして、なにかを考える時間を作らない為。

私は1番美味しそうなオーラを放っているチョコレートを慎重に選ぶ。“カカオ80％チョコレート”と“カカオ65％チョコレート”の数字が目に留まった。なんとなく5で割り切れる数字って潔い。それに80％と65％を食べ比べるのも挑戦的だ。家ですることが見つかり安心した。





一人でコーヒーを淹れながらチョコのパッケージを見る。数字はいろんな所に存在してるけど、今日はあの4桁には出会えなかった。あの日から、少しでも空くと考えてしまうから、忘れたくないから、なにか別のことで時間を埋めていた。思い出さないようにしていた。でも、私の99％は彼で出来ていた。ほぼすべて。

駄目だ、一度考え始めるともう、溢れてしまいそうになる。
冷めたコーヒーを一口飲んだ。クランベリーが目を惹く80％。カカオの苦さが、私の今の気持ちにぴったりだと思った。泣きそうなのは、きっとベリーが酸っぱいからだ。

オレンジピールとアーモンドがトッピングされた65％。オレンジの香りが口に広がり、甘くて優しい味に少し気持ちが落ち着いた。




いつかやっと雨が止み夜が明けても、この二つのチョコレートのように、揺蕩う私の気持ちは変わらないだろう、忘れたって覚えてる。ずっと。






無印良品 岐阜高島屋





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