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【IDÉE TOKYO】民藝とはなんだろう

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イベント・地域情報/イベント

2020/11/04

11月24日(火)までIDÉE GALLERYにて開催中の「民藝のあわい」展では、工藝店店主の髙木崇雄氏、クラフトバイヤーの日野明子氏、OUTBOUND / Roundaboutの小林和人氏の三者が出品されています。

今回の展示は、滋味溢れる品々を生活にご覧いただくだけでなく、来場される方に「民藝とはなんだろう」と考えていただくきっかけの場でもあります。出品者である髙木崇雄氏は、“〈民藝〉は、決して定義づけられるものではありません。”と語ります。古いから民藝、手仕事だから民藝と決めることはできないようです。ではいったい、民藝とはなんなのでしょうか。

本展では、三者の思う「これも民藝と言えるかもしれない」という品を「それぞれの民藝のあわい」と題して、展示販売しています。今回はそのうちから一部、ご紹介いたします。


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闘牛場

出品者=髙木崇雄
メキシコの闘牛場
¥66,000
メキシコにはスペインの影響で、闘牛の風習が持ち込まれました。今でも田舎の町外れをバスで通り過ぎる際、ちいさな闘牛場が続いているのを見ることができます。本作は、そんな風景を土人形で写した「Arte Popular(民衆芸術)」です。マントをかざすマタドールと、ひょうきんな顔をした牛、そしてマリアッチの楽団と、観客たち。数人席を外しているようですが、場外屋台にタコスを食べに抜けたか、あるいはマタドールの無事を祈りに教会へ行ったか。(文:髙木崇雄氏)
 
阿吽坊

出品者=日野明子
阿吽坊が使った河辺実の鍋
¥7,700
「使い込むと良くなるのが民藝のうつわ」。私の定義だ。器に慣れた人は、見ただけで“使い込んで良くなるかどうか”、素材、焼成、釉薬など経験値から、大体のカンが働く。だが、実際どうなるかは、使ってみないと、本当のところは判らない。使う人により、使い込み具合が変わるのも、器の面白さだ。
かつて京都・下河原で営まれた創作料理の店、「阿吽坊」。多くのファンに惜しまれながら2015年に店を閉じた。そこでは陶芸家・河辺実の器を数多く使っていた。阿吽坊の田島様、河辺夫人のあつ子様のご厚意により入手。プロの料理人とお客が使い込んだ風合いは、家では出せない使い込み方。こんな機会なので、“使い込む”きっかけに、と思うのです。
(文:日野明子氏) 
たにゆきこ
出品者=小林和人
谷由起子 レンテン反物
¥52,800
この藍染の反物は、ラオス北部のルアンナムターにて布製品づくりを続けてきた谷由起子氏(元H.P.E.代表。2018 年に帰国)と、現地の少数民族であるレンテンの人々との協働によって2010 年代後半につくられたものです。

身に纏う衣の素材や暮らしに用いる布として、各家庭で織られてきたこの平織りの木綿布は、レンテンの人々の暮らしにとても馴染み深いものであり、時には、没後にその人が遺した反物の質が、その人の人生の評価を左右するともいわれています。
この布づくりは、綿花の種を蒔くところから始まり、手で綿を摘み、糸を紡ぎ、自作の機で手織りします。その後、藍とマッカバオと呼ばれる赤い染料(ソメモノイモ)を重ね染めして、彼ら(彼女ら)の理想とする黒に近づけます。藍は主に栽培したインド藍と、時折、採取した琉球藍も用います。驚愕するのは、藍を泥藍の状態にするために必要な石灰づくりです。村から車で1 時間ほど離れた山まで赴き、バールとハンマーで砕いた石灰岩を背負い籠でトラックまで運び、村の外れの崖を掘った窯で30 時間ほど焼成するのです。燃料となる薪は、山から1 本ずつ担ぎ降ろした倒木。と、染めにまつわるごく一要素である石灰づくりだけをとっても、その手間に眩暈を覚えるほどです。

同地に住むレンテンの人々の間では、貨幣経済の流入とともに急激な民族服離れが進み、この生地も自ら使う為だけではなく、仕事としてつくるものに移行してきました。仕事と効率化が切り離せない関係である以上、売り物としてつくられる布の質を維持することの困難さは想像に難くありません。H.P.E.の製品であるこの反物は、売り物としてつくられた布でありながらも、どこか、使うためにつくられていた時代の布の余韻を宿しているといえます。それは何故かといえば、そこに常に仕事の質を見極める谷氏の「眼」が介在しているからに他なりません。

土地の風土が育み、気質が滲み出た掌から生まれ、長く暮らしに溶け込んできた手仕事を「民藝」と呼ぶとすれば、レンテンの人々がつくり続けてきた手紡ぎ手織りの藍染布は、まさにそのひとつであるといえるでしょう。そして、この手仕事が効率化の波にのまれそうになったとき、「眼」の存在は、それを繋ぎ留める係船柱の役割を果たすということを、この反物は教えてくれます。(文:小林和人氏)

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本展開催を記念して、今回参加いただく工藝店店主の高木崇雄氏、クラフトバイヤーの日野明子氏、OUTBOUND / Roundaboutの小林和人氏による11/12(木)20時よりインスタグラム・ライブトークイベントを開催します。イデーの公式アカウントと、小林さんのインスタライブで話題の「和人の部屋」2つのアカウントで同時配信です。どうぞご覧ください。
イデー公式アカウント(@lifewithidee) 、小林和人さんアカウント(@kazutokobayashi)
出演:高木崇雄、日野明子、小林和人 司会:大島忠智(イデー ディレクター)

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