(閉)イデー東京

【IDÉE TOKYO】民藝のあわい展 会期終了いたしました

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イベント・地域情報/イベント

2020/11/25

10月23日(金)からはじまった「民藝のあわい」展が、11月24日(火)をもちまして終了いたしました。
 
本展では、毎年開催される日本民藝館展に作り手ではなく配り手として出品し続ける立場という共通項を持つ、工藝店店主の高木崇雄氏、クラフトバイヤーの日野明子氏、OUTBOUND / Roundaboutの小林和人氏の三者が見定めた民藝とその周縁をグラデーションの様に繋ぐ「間|あわい」の品々を出品いただきました。

11月12日(木)20時よりインスタグラム イデー公式アカウント@lifewithidee と小林和人氏アカウント@kazutokobayashi にて配信されたトークライブのなかから一部抜粋してご紹介いたします。
*本編は2アカウントのIGTVよりご覧いただけます。
*撮影のため一時マスクを外しています。
 
髙木さん

高木崇雄さん(工藝風向 店主) 
Instagram @foucault
日本民藝協会常任理事。新潮社「青花の会」編集委員。琉球張り子作家・豊永盛人さん、石川硝子工藝舎の石川昌浩さん、工藝風向オリジナルのお香2種、雑誌「民藝」などを出品いただきました。
 
物選びの視点について髙木さんはライブ配信のなかで、このようにお話しくださいました。
「ビートルズやエルヴィス・プレスリーは確かに有名だけれど、その有名さ、偉大さとは、単に一グループや一個人の才能によるものではなく、彼らの仕事以前にあったひとたちの偉大さでもあるはずです。彼らは先人の歴史をちゃんと振り返りながら仕事を積み重ねてきた。だからこそ彼らの名は時代のシンボルとして残ってるんです。それは工藝という業界も同じです。今回提示した作り手たちも、ひとりひとりの仕事だけで輝こうとしているのではなく、先人たち、そして同じ時代を生きる作り手・配り手・使い手とともに輝こうとしているんだ、という視点で見てもらえると嬉しいですね」

今目の前にあるものはひとりの作家によって突然生まれたのではなく、連綿と続くこれまでの歴史があってのもの。お話しを聴いていると穏やかで柔らかい話し口ながら鋭い観察眼や視点が冴えわたり、新しい視点を発見できる歓びを感じられます。それは著書である“わかりやすい民藝”でも感じることができます。
 
日野さま

日野明子さん(クラフトバイヤー)
twitter @smilehino
スタジオ木瓜代表。松屋商事㈱を経て、99年に独立。百貨店やショップと作り手をつなげる問屋業を中心として、企画展の開催や展示アドバイスも行っています。またバイヤーとしてだけでなく、その豊富な知識と経験から“うつわの手帖”、“台所道具を一生ものにする手入れ術”、“ニッポンの台所道具と手入れ術”などといった書籍の出版もされています。
今回は木村肇さんの備前焼・一陽窯のすり鉢、金城宙矛さんのやちむん、大沼道行さんの飯碗、京都にあった料理屋・阿吽坊で使われていた河辺実さんの器などを出品くださいました。

日野さんは11月12日(木)のライブ配信の際に、自身にとっての工藝的なものについてお話しくださいました。
“自分の生活に買い足したいな、使いたいときについ探してしまうようなものです。でも、あんまり自分を主張しているもの、作者の顔が見えるようなものは苦手です。存在を忘れてしまうけどなくなったら困るものが私にとって工藝的です”

長く愛着を持って使い続けられるものを選びたいけれど、なにをどう選べばよいのかわからないことはよくあるもの。日野さん視点の物選びを真似ることで、自分に合った物選びの目線に気がつけそうですね。


 
小林さん
小林和人さん(OUTBOUND / Roundabout オーナー)
Instagram @kazutokobayashi
じっくり言葉を探すように考えながら話をされるのが印象的な小林さんは、吉祥寺にあるOUTBOUNDおよび代々木上原のRoundaboutのオーナーです。今回は山崎大造さんの竹籠、熊谷幸治さんの土器、渡部萌さんのくるみ籠などを出品くださいました。12日のライブ配信では、道具としてだけ存在しているわけではない「物」についてもお話くださいました。

“物っていうのは、二つの要素を同時に帯びていると考えます。たとえば籠があったとしたら、使いやすそうな道具としての「機能」が見えてくるけど、それだけでなくてその佇まいや素材の表情などに目を向けて周波数を合わせていくと、情緒的な関わりが生まれてくる。それは、普段はわざわざ意識しない部分かもしれませんが、例えば日野さんがおっしゃった「ないと困る」の話のように、いざそれが無くなってしまうと、替えになるような別のものはあってもこれじゃなきゃだめだという気持ちになる。まるで昔からの友人がいなくなるような喪失感のような…。この喪失感は結局なんなのか。それは、物というのは機能のみならず、情緒的な関わりである目に見えない作用をもたらしてくれる存在だということの裏返しなんだと思います。”


1か月間に及ぶ今回の展示。現代の日本で作られたものもあれば、紀元前の中東で作られたものもありました。同じ場所で共存できるとは考えがたいようにも思える品々ですが、各々の用途・世界観・物語をもちつつも、ひとつの解釈に固定されることなくギャラリー内で調和をしていました。異文化であっても、異なる時代であっても、多様性をもって共存している空間をお越しいただいた方々には心ゆくまで愉しんでいただけたことを願っています。


次回は3日間の設営期間を終えたあと、11月27日(金)より「天使とチョコレート」展が始まります。
美術作家スヴェルケル・エークルンド氏による天使のオブジェと、国内外の素材や製法にこだわったチョコレートがギャラリーに並びます。どうぞお楽しみに。


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