イデー東京 [イデーのみ]【5月6日(月)閉店】

【IDÉE TOKYO】芸術家・中村大介 インタビュー(後編)

top

イベント・地域情報/イベント

2021/10/05

IDÉE TOKYO併設のギャラリーIDÉE GALLERYにて、2021年9月8日(水)から10月12(火)まで中村大介個展「流動」を開催しています。

お話しを聴いていくほどに気になっていく中村さんの世界観。後編となる今回は、どこから制作の着想を得ているのかお話しを窺います。

前回のお話しはこちらからどうぞ。
〇前編

  ―今展の中で中村さんが一番好きな作品はありますか?

 
_DSC9371.jpg



思ったようにできたのは木神シリーズですね。木神は最後に作った作品で、足から生えてきて木とつながっています。木肌ってゴツゴツしているじゃないですか。あと火山のマグマから生まれた表現をしたくて、こういう質感にしたんです。


 
20聡(ソウ)_1.jpg


 
20聡(ソウ)_2.jpg



(木神・聡:ソウ 台と脚、お面は鉄、上半身から頭までは木で作られている。他の作品は木そのものの形から作品がつくられていくが、木神たちは一点ずつ中村さんがイメージのもとに形を決めて作っている。全部で5体ある木神たちの台と脚の形状と質感は、ひとつずつ異なっている。)

―木神を作ろうと思ったきっかけはなんでしょうか。

今まで人をモチーフにして作ったことがなかったんですよ。でも人の要素を入れて表現してみたくなったのでこういう形になりました。あの顔はお面をつけていて、面をつけることで人の姿を模しているというのを表現しています。

―私も登山が好きで自然のなかへ行きます。自然のなかで人ならざるものの気配を感じても、その気配を実体化させるイメージへと繋がりませんでした。こういうもの作ろうかなと歩きながら普段考えてらっしゃるのでしょうか。

はい、考えていますね。落雷のせいなのかわからないけれど、倒木とか結構あるんですよ。そういうのもとても興味深くて。あとは生えている木でも顔に見えてくるものがあるじゃないですか(笑)。そういうのを見ればインスピレーションも湧いてきますし、山へ行くと自然な状態に自分をセットしてくれます。

その場のイメージと、いつも考えてきているイメージを合わせてみて、こうしたほうがいいなって。だから自然のなかに出かけて行くことはとても重要。

 
八ヶ岳1_スクエア.jpg
八ヶ岳2_スクエア.jpg
(撮影地:2枚とも八ヶ岳。長野県にある諏訪湖の東方にあるこの山域はなだらかな山容の北八ヶ岳、急峻な南八ヶ岳に分けて見られることが多い。北八ヶ岳は写真のように苔の宝庫であり、たくさんの登山者たちを魅了してきた。)
尾瀬_スクエア.jpg
(撮影地:本州最大の湿原である尾瀬ヶ原)
―山びこを題材にするようになったのは、山に入るようになったからでしょうか。
制作を始めたときからそうなんですけど、例えば鹿だとしたら、鹿の形そのままで作るのはやりたくないんです。自分で全部に手を加えて形をつくるっていうことはやりたくない。自然に生まれた木の形と、自分が考えた形とを合わせて作りたいなって思っています。

神様ってもともと人や動物の形をしていないんじゃないかと思うんです。人に近い形、動物に近い形のように、あまり形が定まっていない方が自分の考える神様の姿に近い。

山に登るとリラックスするんですよ。登るのってしんどいじゃないですか。なんでわざわざ辛い思いして登るのってよく言われるんですけど、その過程にあるいろいろ綺麗な景色を観たりして満たされる。新型コロナウイルスが流行ってからはかなり行けなくなってしまいましたが。

―仮に、好きな場所へ登りに行けるとしたらどこがいいですか?
夏のアルプスかなぁ。日程が関係なかったら黒部五郎岳、雲ノ平へ行きたいです。すごくいいところがあるんですよ。今までテント泊で二泊したことがなくて、だいたい一泊で。山形とかけっこうよかったなぁ、月山、鳥海山なんてすごくよかった。

月山はね、湿地帯みたいなところもあるんです。尾瀬の湿地は平坦だけど月山の湿地は起伏があります。けっこう湿地帯好きなんです。果てのない道があって、その道のなかにあまり大きくない池が点在しています。

―沼って汚いとか、気が滞っているとか、あんまりいいイメージを抱かれていないですよね。
元々はきれいなはずなんだから、汚くしているのは人間ですよね。それを汚いっていうのはナンセンスなんじゃないかと思う。

―現代は今までのことから変わっていかなくちゃいけない、という段階にきていますね。変化を怖がるのも求めるのも、人間の本質のように思います。中村さんの展示からは変化へ一歩踏み出していく勇気を感じます。

けっこう簡単な言葉だけど、やってみないと分からないって思います。もちろん一概に「やってみなよ」とは言えないけど、僕は今回の新作を「やらなくちゃ」っていう気持ちよりも、自然と「やってみようかな、今までやってきたものがあるからやってみよう」という感じで始まったんです。これまでやってきたことの積み重ねがあるから、自然な流れで変化してくのもいいと思っています。

-本当ですね。あらゆるものは移り変わり変化していく波に流されるわけでも抗うわけでもなく、そこに自然な流れを感じられれば楽しむ気持ちでもって変化していけそうです。作品を観る方、迎える方にもよい流れが生まれるといいですね。今日はありがとうございました。


今回インタビューに応じていただいた中村さんの個展は10月12日(火)20時まで開催しています。IDÉE TOKYO公式インスタグラムアカウント、IDÉE SHOP Onlineでも展示作品をご紹介していますので、併せてご覧ください。

また、今展では「山びこ」の図鑑もご購入いただけます。編集・執筆を中村大介さん、写真はモリソン小林さん、版画を高里千世さんが担当した本書には、美しい写真とともに中村さんが制作してこられた山に棲む神々「山びこ」たちの作品が納められています。店頭・通販の両方でご購入いただけます。

 
山びこ図鑑



 
山びこ図鑑_中開く_2


●山びこ図鑑 ¥4,500(税込)

〇期間 2021年9月8日(水)~10月12日(火)
〇場所 IDÉE TOKYO(クリックするとMAPが開きます)
JR東日本東京駅グランスタ地下北口改札を目指してお越しください。
お電話でも場所のご案内をいたします。お気軽にお問い合わせくださいませ。
TEL 03-5224-8861

〇instagram
IDÉE TOKYO公式インスタグラムアカウント @ideetokyo
中村大介さんのアトリエ・スペシャルソース @specialsource_atelier
中村大介さんアカウント @d_nakamura

IDÉE TOKYO


 
map1080px.jpg