2021年2月、きしわだ自然資料館の学芸員の方々と一緒に冬の大阪湾に貝の観察に行ってきました。その時に訪れた男里川河口干潟にも夏がやってきました。
2021年6月24日、今回は寒い季節には奥深くで静かに過ごしていた、干潟の足元に空いた無数の穴の住人『ハクセンシオマネキ』に会いに行ってきました。
干潟での観察は、潮がよく引く干潮の時でないといけません。
潮の高さは月が地球に及ぼす引力などで約半日の周期でゆっくりと上下に変化しています。潮位が上がりきった状態が“満潮”で、反対に下がりきった状態が“干潮”です。
大阪府版の満潮や干潮の時刻が一覧表になっているのがこの冊子。インターネットで全国の海を調べることも出来ます。
干潮時刻の前後1時間が観察にはベストなタイミングなので、時間を合わせて電車で訪問します。
南海線 樽井駅から歩いて10分程で『ハクセンシオマネキ』の生息地に到着です。
ここは大阪府泉南市と阪南市の境を流れる男里川の河口に広がる干潟で、規模は小さいながらも砂質や泥質が広がっています。
今の季節は広い空の下で葦も青々と茂っています。
看板に書いてあったように干潟を踏みつけないように、観察を始めます。
警戒心が強い『ハクセンシオマネキ』の飛び出している目の視界はとても広く、観察するときのポイントはとにかく動かないでじっとしていること。
しばらくするとカチカチという音が聞こえてくるのに気が付きました。足元一面に小さな白い花が咲いているように見えるほどたくさんの『ハクセンシオマネキ』が穴から出ていました。
普段ははさみだけが白くグレーに白い模様の体色ですが、恋の季節である6月から8月には雄雌とも体色が乳白色に変化してとても可愛い姿になります。
この時期には雄が大きなはさみを振り上げて求愛ダンスを踊る様子が白い扇子を振るように見えるので、『ハクセンシオマネキ』と名付けられたそうです。
『ハクセンシオマネキ』は体長2㎝程の小さなカニで、干潟に深さ20㎝ほどの巣穴を掘り、その周辺を縄張りにして暮らしています。よく見ると、大きなはさみを振り上げながら雄同士が威嚇しあっています。
このこは雄。
雄は左右どちらか片手だけ、巨大なはさみを持つのが特徴です。
右ききと左ききが居るのがわかります。
彼らはそれぞれ自分の巣穴周辺の砂をさかんに口に運んで食べています。
このこは雌。
雌は左右両方の小さなはさみを使って餌を口に運びます。ちなみに雄は小さいほうのはさみを使って食事をするそうです。
餌は底生珪藻やバクテリアで、はさみで干潟の砂粒をつまみ取っては口に運び舐めるように食べます。残った砂粒は直径2㎜程の砂団子にして捨てています。
雄がはさみを高く振り上げて、自分の巣穴に雌を誘っています。
彼らは一生懸命なのですが、その姿はとてもユーモラスなので2時間程飽きることなく、このような光景を見続けることが出来ました。
足元には『ハクセンシオマネキ』だけでなく、大阪府で絶滅危惧種に指定されているこの写真の『シオマネキ』やその他のカニ類や貝類、『ミズクラゲ』たちにも出会いました。
前回にきしわだ自然資料館で探した『チリモン』に混じっていた体長2㎜ほどのカニの『メガロパ幼生』を知ってしまった今では、自然界で生きものが大きく育つのは奇跡的で、私たちと出会えることは魚類学者のさかなクンの言葉を借りると、まさに『一魚一会=一期一会』だと感じました。
今、生きていることに感謝しつつ、これからも美しい自然の中でいろいろな生きものと共生したいと思いました。これから夏真っ盛りの海で、魚たちとワクワク遊びますよ!
きしわだ自然資料館さん、取材にご協力いただきありがとうございました!
きしわだ自然資料館
〒596-0072 大阪府岸和田市堺町6-5
072-423-8100
ホームページ https://www.city.kishiwada.osaka.jp/site/shizenshi/
無印良品イオンモール堺北花田 2021.07.09