一口に生姜といっても、その種類や呼び方は様々。「大生姜」「中生姜」「小生姜」といった品種による大きさの違いから、「新生姜」「囲い生姜」といった出荷時期による違い、また「葉生姜」「根生姜」「親生姜」といった部位による違いなど。『金時生姜』は昔ながらの「小生姜」の品種で、まだ根茎が小さく柔らかい時期に葉を付けたまま収穫する「葉生姜」は、「はじかみ生姜」として全国の料亭から引き合いがあります。昔の日本では小生姜の栽培が一般的でしたが、一反当りの収量が少ないため、大生姜の代表格『近江生姜』が日本に入ってきてからはめっきりと少なくなりました。
愛知県西部に位置する稲沢市では、かつてこの『金時生姜』を育てる農家が多く軒を連ねていました。香り高く辛みの強さから、全国にその名が知れ渡るようになりました。「この辺りの食事処では、“生姜の天ぷら”を出すところが多かったんですよね。小さい頃はそれが当たり前なんだと思ってましたが、大人になってそれがこの地域特有ということを知りました」そう話すのは、しょうが屋木村の栽培担当、伊藤将弘さんです。
元々、公務員だったという伊藤さんは、結婚を機に、奥さんの家業のしょうが屋木村を手伝うように。そのおいしさと栽培法の奥深さの虜になっていったと言います。「金時生姜は一度、栽培した畑は約7年は休ませなければならないんです。それだけ大地の栄養素を吸収しているということ。また、きれいな紅色に染まるように、光の調整なども行います」それだけ手間暇の掛かる栽培なので、今では金時生姜の生産者も数軒しか残っていないようです。
それでも金時生姜のおいしさ、その風味をより多くの人に味わってもらいたいと、しょうが屋木村では、栽培法にも一切の妥協を許さず生産を続けています。また、粉末生姜やしょうがジャムなど、金時生姜の風味の強さを生かした商品も様々開発し、無理なく食卓に生姜を取り入れる提案をしています。「しょうがジャム」は、トーストにはもちろん、肉と炒めれば生姜焼きに、炭酸水で割ればジンジャーエールになる逸品です。
何よりも生の「はじかみ生姜」を味わって頂きたいと話す伊藤さん。「旬のはじかみ生姜は“しょうがのトロ”とも呼んでいるんです。甘酢漬けはもちろん、醤油や味噌に付けて生のままぜひ!生姜の天ぷらや、生姜の肉巻きにしてもおいしいですよ」
全国の料亭から指名買いされる、しょうが屋木村の金時生姜。料亭の味をご自宅で味わってみてはいかがでしょうか。