山の標高が低く、昔から水に苦労をしてきたという伊佐沢地区。だからこそ、そこに暮らす人々は水源となる山や森林・樹林を大切にする気持ちが強く、平成元年には「不伐の森条例」を制定しています。伊佐沢地区にある20.3haの森を永久に保存するというもので、「地区全体で地形を保全することで自然の恩恵を受けることができ、その恩恵に感謝することで素晴らしい農産物が生まれる」と住民が考えています。
そんな豊な自然に恵まれた地で、安部ぶどう園が力を注ぐのが「高尾」という希少品種のぶどう。巨峰の改良品種として生まれた東京生まれの品種で、高尾山にちなんで命名。甘みが強く、酸味は適度、濃厚な味わいの種なしぶどうです。食べやすさとおいしさから引き合いは強いものの、病気に弱く栽培管理が非常に難しいことから継続して作れる人が少なく、その作付面積は生食ぶどう全体のわずか1%にも満たない(平成21年度実績)そう。
そんななか、栽培が難しい高尾にこだわり40年以上栽培を続けている父親の背中を見て育った真理さんは、短大卒業後に山梨県の農業大学校へ進み、さらにドイツにあるワイン用のぶどうとりんごを栽培している農場で1年間研修を受け、24歳で就農。
「父の長年の栽培経験から化学肥料だけに頼らず、土と水の力を引き出す有機肥料を使用した畑づくりを行っています。私自身、生まれ育った伊佐沢の環境に感謝しながら、おいしいものを楽しく食べて、家族みんなが健康で長生きできる農園づくりをしたいと思っています。そして父の代からチャレンジし続けている高尾のおいしさを、より多くの人に届けられたらうれしいですね」(真理さん)
おいしい農産物づくりは自然からの恵みを守ること”。地元である伊佐沢のフルーツ桃源郷を目指し、親子2代にわたって挑戦し続ける「安部ぶどう園」からのお裾分けをぜひご堪能ください。