佐賀県出身の安東さんは以前、大阪でサラリーマンとして働いていました。いつかは九州に帰りたいと今後の働きかたを考える中で、新就農フェアに参加をしました。そこである出会いを通じて農業の研修に参加をしたことがきっかけで、就農を考えた始めたそうです。今では農業が楽しいことを力強く感じている安東さん。「きつい、汚い仕事ではなく自分のやり方次第である」といいます。就農して10年。農業を始めることや美味しいアスパラガスを作ることにはたくさんの壁があり、どんな壁が来ても様々な方向から壁を乗り越えて今があるそうです。
就農にあたりまず初めにしたのは土地探しです。地元の方の協力もあり、ようやく見つけることが出来た土地は荒れてしまったみかんの果樹園でした。太良町にはみかん畑がたくさんあります。荒れた農地を自らの手でアスパラ畑へと蘇らせ、おいしさへのこだわりを持って毎年肥料の割合や内容を変えながらアスパラガス作りに取り組みました。努力の甲斐もあって、3年目の満月の日に採れたアスパラガスの味にはとても感動をしたそうです。そこで『森のアスパラ』と名付けました。10年経った今も美味しさへの追及にこだわっています。
『森のアスパラ』は朝採れしたものをお届けしています。太良町の特産である竹崎カニや牡蠣の殻を肥料の原料にし、安東さん自ら発酵液肥を開発し混ぜて土作りを行っています。アスパラガスは土の中に広く根をはる作物なので、大量の水を必要とするのですが、その水も太良のミネラルを多く含んだ渓流水を使って栽培をしています。1本1本がのびのびと育ったアスパラガスは25㎝以上の長さで太さも太め。栽培直後は水が滴るほどの水分量。えぐみがなく、食べた瞬間にみずみずしさと甘味を感じます。スジが少なめなので、お好みで生食もおすすめ。茹でたり、天ぷらにしても美味しく味わえます。
「この美味しさを知ってもらいたい。たくさんの方々に食べてもらう機会をつくりたい。」と、3年かけて自身の子どものように育て上げてた『森のアスパラ』を知ってもらう活動を始めました。その美味しさは、近隣だけでなくこだわりのある都内の飲食店の料理人さんまでも広く届き、たちまち多くの注文が入るようになったのです。
そんな軌道にのったアスパラガス生産。旬の時期には人手も必要となりました。そこでつながりのあった『おてつたび』さんに相談をしたそうです。学生から主婦の方々など、お手伝いに来られる年代は様々。さらには旅を兼ねて来られることもあり、各地から参加があります。「忙しい時期なので『大事な担い手のひとり』として携わっていただきますが、アスパラガスのことはもちろん、私たちのこと、その周辺地域のことまで新たな出会いとして楽しんでもらえる姿をみるとうれしくなりますね。」と安東さんはいいます。
「僕が感じた"農の楽しさ"をより多くの人々に知ってもらいたいです。そのためにもいろんな挑戦をし続けて、新たな"農業の在り方"をこれからも考えていきたいと思います。そして何よりも、届いたらぜひ、生のままアスパラガスを食べてみて欲しいですね。その感動とともに、アスパラガスを生んだ太良町に遊びに来てください。」
安東さんのあくなき向上心と研究心は、『森のアスパラ』のようにみずみずしくまっすぐどこまでも伸びていきます。