そう語るのは、菱沼農園の園主である、菱沼 健一さん。農業関係の学校を卒業後、20歳の頃から専業農家として農園の仕事を始めました。2024年で就農51年目。
菱沼農園のはじまりは、昭和20年。戦後、福島県福島市飯坂町の山の畑を祖父が、開墾したことが菱沼農園の始まりとなります。戦後の農地解放もあって、接収されそうになったときに父の健男さんが農家として本格的に動き出したのでした。
「くだものを育てて70年以上。はじめて畑を開墾したときは山の中で、野生のウサギにカモシカ、クマやサルにほとんどくだものをとられてしまい、思い通りに育てることができませんでした。そこから平地を求めて今に至り、現在みなさまから愛される桃やりんごを育てることができるのは、あのときのサルのおかげですね、サル様々です。」と健一さんはいいます。
40年の歴史をもつ菱沼農園では、さくらんぼも野菜も基本的な育て方はみな同じで、まるで子どもを育てるように優しくじっくりと見守るように育てるのです。さくらんぼで特に気配りしていることは、旨味と甘み、そして艶やかさと色味といった見た目の追求と徹底です。
福島さくらんぼの収穫・販売が始まる1年以上も前から既に作業が始まります。寒気のまっただ中である1月には既に剪定・摘蕾といった、特に重要な作業があります。菱沼農園のこだわりは、この作業に徹底することが一つの重要点となります。冬の間に枝を整え、『このようなさくらんぼの木にしたい』というイメージを描き、意識しながら剪定をします。そして、大玉で美味しいさくらんぼを作るために、摘蕾をして木の養分をバランスよく行き渡らせます。
そして、摘花、摘果の作業と続いていきます。
最も他の農園と異なることは『光センサー式付』選果機と呼ばれる果物や果実の甘さの単位である『糖度』をこまめに計測していることです。糖度のバランスを一定に保ち、安心で安定した甘さの福島さくらんぼをお届けしています。
菱沼農園では、GAP(GAPとはGood Agricultural Practicesの略で、「良い農業の実践」)を取得しています。取得前より安全への徹底はさることながら取得する理由の一つとして栽培管理のマニュアル化がありました。菱沼農園は他業種から農業への転職をした若手社員も活躍をしています。誰でも美味しいものが作れるようにと作業のマニュアル化を進めていたところ、GAPと概念が一致していたこともあり、取得に至りました。今現在でも美味しさへのこだわりを継承していく仕組みづくりを行い、お客様の元へお届けしています。「自然の中で生き物と仕事をしている。だからいかに美味しいものをつくりたい。」という強い想いをお話ししてくれました。