山梨県のほぼ中央部にあたる甲府市の南端、中道地区で約2ヘクタールの桃を栽培している「志田農園」。もともとは養蚕農家でしたが、園主の志田健さんの代になり桃栽培へと転向しました。
当初は出荷する際に他の農家さんと共同選果をしていたそうなのですが、「一番食べ頃の美味しい桃を届けたい」という想いから、志田さんは個人での市場出荷へ踏み切ったといいます。
一般的には不利とされる個選出荷でしたが、市場では安定した品質を高く評価され、志田農園の桃は高値で取引されていたそう。そんななか、インターネットの時代へ。志田さんはいち早く興味を示し、限られた地域ではなく全国に届けられる「産地直送」のサイトを2001年にスタートさせたのです。
「正直市場に出す方が手間とストレスは少ないです。プロが見るとその年の天候なども考慮してもらえる。一般のお客様は昨年と同様の味を求めて来られるので大変です。ただ、お客様から直接もらえる“美味しかった”や“感動した”という声に私たちも毎年、感無量の体験をしていて、産直を続けてきてよかったと思っています」
志田農園ではシーズン中、絶え間なく桃を届けられるよう多品種栽培をしており、繁忙期はスタッフも増員して作業していますが、収穫と選別は志田さんが必ず行うそう。
「私たちの信念は“適熟収穫”ですが、すぐに身につく仕事ではありません。あと1歩、あと1歩と待ちながら、指先に全神経を集中させて桃の中心から伝わる微妙な弾力の変化を感じ取って、収穫時期を判断しています」
こうして外観よりも熟度を優先させて選別しているという志田農園の桃は、食べた人を笑顔にする味わいです。日持ちはあまりしませんが、志田さんの熟練の技が産み出した、心のこもった桃を是非お試しください。