房州の地竹を利用した手づくり竹籠

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諸国良品

2015/12/11

南房総は、日本三大うちわの一つ「房州うちわ」の産地でもあり、昔から知る人ぞ知る良質な竹の産地として様々な竹工芸品を生み出してきました。工業製品の登場で利用使途が減り、竹が放置され浸食を続ける竹害は全国的に問題となっていますが、民衆の中に生きる伝統的な技術は人から人を通じて脈々と受け継がれています。そんな技術を現代に利用しやすいように工夫した竹籠をご紹介します。

南房総の農村部では、背中の大きな竹籠に収穫した農産物や道具をいれて運ぶ農家さんが昔ながらの風景を今に伝えています。農業だけでなく、漁業にも用いられてきた竹籠は、軽くて丈夫で長持ちする便利な運搬具。

作り手が少なくなる中、友人がたまたま持っていた竹籠に興味をもったのが、「紅の実工房」の山口久美子さん。館山市に住む竹籠制作者のおじいさんを訪ねると、一緒に作ってみないかと誘われたのが制作の始まりです。

竹籠の素材は節と節の間が比較的長い「真竹(マダケ)」という竹の種類。竹工芸は、竹を選ぶ所から制作が始まっており、目利きの技術をもったおじいさんたちと協働して竹籠の制作を行っています。

ポイントは太く長く伸びた真竹を縦に割り、長さを残しながら細く薄く加工した「竹ひご」。傷がついて痛んだ箇所は除いて、注意深く一本一本割っていきます。この竹ひごがしなやかに曲がり竹籠の側面をなすのです。

技術を習得した山口さんは、より身近に竹籠を利用できるように様々な形を試してきました。竹籠は頑丈で軽いので、壊れやすかったり柔らかいものを運ぶのにぴったり。もちろん防腐剤や薬は一切使用していません。

特に昨今は、スーパーの袋を利用せずにエコバッグを利用して買い物をする方も増えています。そんなお買い物のお供に、竹籠はいかがでしょうか。

生産者紹介

  • 供給者画像:生産者名 紅の実工房 山口久美子さん

    生産者名 紅の実工房 山口久美子さん 詳細

    山口久美子さんは、南房総市千倉町生まれ。高校時代に美術の時間で陶芸を習った時から工芸品に魅かれ、1993年から市川菅野窯・田中勉氏の下で陶芸の基礎を学び、南房総にUターンしてからは鴨川市笹谷窯で作陶すると共に館山市の竹細工職人から竹籠を学び、現在「紅の実工房」として陶芸品と竹籠の制作を行っています。竹籠では地元産の真竹を利用しますが、陶器に彩りをつける釉薬(ゆうやく)も地元産の椿や梨から抽出するなど、できる限り地域の自然素材にこだわった作品を生み出す工芸家です。