「那須はもともと“不毛の地”なんです。引水できる川が少なく、那須山の火山によって覆われた那須高原は、田畑にするのが難しく、結果、酪農のみが根付いていった地でした。そんな土地柄なので、昔から続いている食文化がない。それを作っていきたいんです」そう話すのは2004年以来、那須でハーブ園を営む浜津伸生さんです。
自然農法によるハーブ栽培の傍ら、2006年にオープンさせたショップ兼カフェでは、ハーブ畑を見渡しながらハーブティーを楽しむことができます。そんな環境に引き寄せられるように、集まり始めた新規就農希望の移住者たち。浜津さんが「ご縁としかいいようがない」と話すように、限られた農地を見付け、移住できた人たちによって、那須の開墾が始まりました。
とは言え、那須山の火山によって覆われた大地には、少し掘れば大きな岩のような石がゴロゴロ埋まっています。さらに、高原の冬は寒く、思うように作物は育ってくれません。それでも、寒暖の差が大きく、生物多様性の残っている那須だからこそ作れる野菜があると、浜津さんたちはひたすら那須ならでは野菜を追求し続けました。
その結果、生まれたのが様々な種類の野菜でした。限られた土地を有効活用するために、同じ野菜でも品種を変えて順繰りに育てていったのです。例えば、ニンジンであれば5~6種類、トマトに至っては約40種類もの品種が育つようになりました。
彼らはこれを、四季折々で美しい姿を見せる那須にちなんで、「那須いろ野菜」と名付けました。かつての日本には、大根ひとつとってみても150以上の種類があったといわれます。那須いろ野菜からは、同じ野菜でも様々な味わいがあることを思い出させてくれるはずです。