海の幸・山の幸に恵まれた水俣市。もともと人々は半農半漁で生活をしていましたが、1950年代に発生した水俣病以降禁漁となり、農業のみになっていたそう。そして、この時期にスタートしたのが甘夏ミカンの栽培です。
水俣地域では、自分たちが化学物質の怖さを知っているからこそ、周囲から無理だと言われていた甘夏ミカンの無農薬栽培に取り組み始めた人も多かったといいます。ただし、無農薬での栽培は販路の開拓含めて難しいのが現実で、現在無農薬で甘夏ミカンを栽培しているのは、農家のおよそ1割だとか。
そんな貴重な無農薬有機肥料栽培の平松さんちの甘夏ミカンは、果皮まで安心して使えるため手作りマーマレードの材料にも最適です。さらに、ミカンだけではなかなか経営が難しいなか、専業農家としてやっている珍しい存在の平松農園では、ミカンの花や青ミカンを有効活用して芳香成分を抽出する活動にも協力しています。
ミカンの花と青ミカンは同じ水俣市でオーガニックアロマやコスメを企画・販売する「ネローラ花香房」に提供。「ネローラ花香房」の代表・森田恵子さんは「散るに任せていた花や青ミカンを活用した甘夏ネロリの商品化は、栽培農家に副収入をもたらしたほか、 生産者の高齢化による耕作放棄地の有効利用にも寄与し、水俣の環境保全と地域振興につながっています」と話します。
通常1~2月のうちに収穫して定温倉庫で保存し、4~5月に出荷するという甘夏ミカン。しかし一番おいしいのはやはり木で熟す「木なりミカン」です。平松農園では、甘夏みかん本来の甘さと酸味とのバランスがとれたみずみずしいミカンを食べてほしいと、木に実を持たせるにはギリギリまで待って収穫します。