足なり直角靴下
人のかかとに合わせた“90度設計”で、ずれにくく快適なはき心地をかなえる無印良品の「足なり直角靴下」。一般的な靴下の多くが120度でつくられる中、足のかたちに寄り添う直角のかかとを採用。今では無印良品のすべての靴下がこの仕様でつくられています。
足首に沿うシルエット(左)や、はき口にゴムを使わずやわらかく仕立てたモデル(右)など、バリエーション豊富に展開。
きっかけは、チェコで出会ったおばあちゃん
『足なり直角靴下』の一番の特長は、その名の通り、かかとを“90度”でつくっていること。毎日身につけるものだからこそ、常に気持ち良くはいてほしいと生み出されたこの靴下のひみつを、商品開発担当に聞きました。
―― どんなきっかけから、『直角靴下』のものづくりが始まったのでしょうか?
「はじまりは、無印良品のスタッフが縁あって、チェコのおばあちゃんと知り合う機会があったことからです。雪国のチェコでは肉厚のゴム長靴に合う靴下を自分たちで編むそうで、そのおばあちゃんの靴下は長靴の中でもずり落ちない。かかとを見ると、直角だったんです。その形にスタッフがピンと来て、ずれにくい、直角の靴下を作れないか、と考えたのがスタートです」(商品開発担当)
締めつけなくても、ずれないかたち
―― 一般的な靴下は、かかとがもう少し開いていますよね。
「一般的には120度の角度のものが多いです。これは工業化や編み機の普及にともなって、効率的に速く編めるという観点から普及した角度かと思います。はき心地だけを考えると、かかとをしっかりと包み込む90度に近い角度の方が良いと考えています。ただ、使う糸の量や針上げ数が多くなってしまうので、生産コストも時間も要してしまうのですが」(デザイナー)
―― はき心地を追求した結果の、かかとの角度なんですね。
「靴をはくと、どうしても靴下の生地が前に引っ張られてしまいますが、かかと部分さえしっかりフィットしていれば、前に進む動きでもずれにくい。足首もきちんと固定されるので、はき口を余計にきつくしなくても良いという利点もあります。なのでこの直角靴下は一日はいても跡がつきにくく、快適に過ごせます。はき口の締めつけ感が苦手な人にもおすすめです」(商品開発担当)
―― そのほかに、工夫した部分はありますか?
「見た目ではわからないのですが、特に摩擦が多く破れやすいかかとやつま先には、摩耗に強いナイロン糸などを混ぜて編み、穴が開きにくいようにしています。靴下は着用する度に洗うものでもあるので、耐久性にもこだわりました」(デザイナー)
「心地良さ」は、人それぞれ
―― 無印良品の靴下は、たくさん種類がありますよね。
「ある程度の締め付け感が欲しい人、出来るだけ締め付けたくない人、厚手が好きな人、薄手が好きな人、丈が長い方が安心感があるという人、短い方が好みの人……少しの違いなんですが、実は誰しも“私にはこういう靴下が一番しっくりくる”という潜在的な好みをお持ちだと思います。お客様それぞれの“お気に入りの一足”をお届けできるよう、種類を豊富に揃えています」(商品開発担当)
―― 男性には、スニーカーソックスも人気だとか。形が少し変わっていますね。
「土踏まず部分は多くの人がへこんでいますが、生地が余るとそこから靴下がずれてしまうので、紳士サイズの
スニーカーソックスには足の甲部分にゴムを入れ、足との密着度を高めています。特に男性はフィット感が強い方を好む方が多い傾向があり、この仕様を採用しました」(デザイナー)
―― 子ども用の靴下も展開していますね。
「見た目ではわかりませんが、実は
こども用の靴下のほとんどは、かかと部分の編み地が4分割されているんです。足の成長に合わせて、かかとがフィットする位置が変わるようになっていて、成長の早い子どもでも、同じものを出来るだけながくはけるように工夫しています」(商品開発担当)
―― 小さな子どもは本当に成長が早いので、親にとっても嬉しい工夫ですね。
「子ども用靴下のはき口の内側には、名前が書き込める欄を設けているのも特長のひとつです。また、次に買うときに“今どのサイズを履いていたっけ?”と迷わないよう、サイズ表記も施しています。ちなみに“お名前欄が細くて書きづらい”という声があり、以前よりも幅を広げ、油性ペンでも書きやすく、読みやすいよう改良しました」(デザイナー)
ぴったり寄り添う、快適さを
かかとを90度に設計することでずれにくく、快適に過ごせる『足なり直角靴下』。摩耗しやすいつま先やかかとには耐久性のある糸を組み合わせ、毎日の洗濯にも強い仕様に。子ども用には、成長に合わせたサイズ調整やお名前欄など独自の工夫も。日々の小さな不快感を解消し、心地良さを叶えるこの靴下はまさに無印良品を代表するロングセラーでした。