素材からはじまる

メリノウール｜なめらかで多機能な天然繊維 

2025/09/15

人と羊のつきあいは、1万年ほど前まで遡ることができると言われています。その長い歴史の中で、人々は愛情をかけて羊を育て、その見返りに羊毛を得てきました。やがてメリノ種という上質な毛を持つ羊が誕生します。この種の羊から採れるメリノウールは、なめらかな肌ざわりと、吸湿速乾性をはじめとした様々な機能性を持った特別な天然素材として世界に広まりました。

大切に育まれる羊たち

このメリノウールを与えてくれる羊たちは、どのように育てられているのでしょうか。私たちは、産地のひとつであるオーストラリアのニューサウスウェールズ州・アーミデールを訪ねました。ニューサウスウェールズ州は大陸の南東部に位置し、アーミデールはその中でもニューイングランド地方に属します。このエリアは丘陵地のため、しっかりと寒暖差があり、羊を育てるのに適した場所です。

緩やかな起伏を持つ広大な牧場に目を凝らすと、群れをなした羊たちがそこかしこで自由に草を食んでいます。草原の中には木立や森が点在し、涼しげな木陰で居眠りしている羊たちも見えました。

牧場の管理をしているご夫妻が、牧羊犬に的確な合図を送りながら羊たちを集めてくれます。人と犬と羊たちが、まるで魔法のように一体になってゆくのは驚くような光景です。「羊たちは良き隣人です。こちらが愛情を注げば、良質なウールでお返ししてくれます」と話してくれたのは、この土地に魅せられて住み込みで牧場管理をするマットさんです。

この牧場の羊は、虫の寄生を避けるためにお尻の肉を切除するミュールジングを行っていません。その分、衛生状況をこまめにチェックするなどの手間はかかりますが、羊の健康と良質なメリノウールの生産を両立するために誇りを持って取り組んでいるそうです。無印良品は、ミュールジングをせずに育てられた羊の毛だけを調達しています。

自然が生んだ機能性素材

こうして大事に育てられた羊の毛は、暑い夏が来る前に優しく刈り取られたのち、厳格な品質チェックを経て紡績されます。背中の細く長い毛は上質な梳毛（そもう）紡績にまわり、無印良品ではハイゲージのセーターなどに用いています。一方、脚やお腹の短い毛も無駄にせず、紡毛（ぼうもう）紡績を経てミドルゲージのセーターなどに活用しています。

メリノウールは繊維が非常に細いため、一般的なウールの印象と違ってとてもなめらかで、チクチクしにくい素材です。また、繊維の表面にあるスケールと呼ばれる鱗が開いたり閉じたりすることによって、吸湿や放湿を自然に行ってくれます。そして、クリンプと呼ばれる細かな縮れが空気を含むことで、冬は暖かさを保つことができます。

自然が生み出した天然の機能繊維であるメリノウールを、無印良品ではさまざまな商品にしてお届けしています。

【関連記事】
カポック｜ふわりと軽い天然繊維
オーガニックコットン｜健康な土が、次世代へつながる
リヨセル｜天然由来の再生繊維