素材からはじまる
リネン|長く使うほど馴染む天然素材

2026/02/16
地域に根差したリネンの原料
夏にヨーロッパの街を歩いていると、リネンを爽やかに着こなす人を多く見かけます。風を通して肌触りが良いリネンは、ヨーロッパや中央アジアで古くから愛されてきた天然素材。水に濡れると強度が増すため、丈夫で長く使うほどに風合いが変化して肌に馴染みます。原料となるフラックス(亜麻)は、一般的に、栽培時に大量の水や農薬を必要としないため、環境負荷が少ない素材としても改めて注目されています。


私たちは、リネンの原料となるフラックスの主な産地であるフランスのノルマンディー地方を訪ねました。世界のフラックスの約60%は、ここフランスで栽培されているそうです。
案内してくれたのは、地域の農家からフラックスを買い集めて繊維を取り出す「スカッチング」と呼ばれる工程を行う会社(スカッチャー)の方です。スカッチャーは農地に根差し、毎週のように生産者を訪ね、リネンの育て方を指導したり、作物の状況を確認したりする要の存在。この会社は家族経営で、現在は5代目になるそうです。
繊細な品質管理

フラックスの栽培には土がとても重要で、種を蒔くまでには、6〜7年をかけて土づくりをします。ジャガイモ、とうもろこし、小麦、ビーツなどを輪作することによって、土地が痩せることなく、必要な養分を蓄えるように工夫されているのです。
準備が整った土地に、3月から4月にかけて種を蒔きます。種を蒔いたら雨に頼り、余計な灌漑はしません。気温が低く、晴れと雨を繰り返すノルマンディー地方の気候が、フラックスを育てます。

フラックスは生育が早く、6月には草丈が1.2mほどになって美しい花を咲かせます。7月半ばには地面から抜き取り、1ヶ月ほど畑で寝かせて、太陽の光と適度な雨風、そして微生物の力も借りて発酵させる「レッティング」という工程に入ります。こうすることで、必要な繊維を取り出しやすくするのです。
発酵が少ない場合は黄色っぽく、進むと黒っぽくなっていくため、状態を見ながら裏返すといった丁寧な作業が必要です。この発酵の具合によって、繊維の色が決まるのだといいます。


レッティングを終えたフラックスは、スカッチングによって必要な繊維を取り出します。繊維の品質は、主に性質や色、強さ、細かさとその均一性といった基準で評価されるそうで、品質管理を担えるようになるまでは通常7年ほどの経験が必要とのこと。
ワインを評する時によく使われる“土地特有の味わい”のことをテロワールと言いますが、フラックスもワインと同じようにテロワールがあるのだといいます。スカッチング会社代表のヴァンサンさんが、品質を確かめるために繊維を引っ張りながら「繊維が歌う声が聞こえるんだよ」と誇りを持って話してくれました。

使うほどに馴染む素材
フラックスの生産の多くがフランスで行われている一方で、繊維から糸を作る工程のほとんどは中国の紡績工場が担っています。
フラックスは濡らすと強度が増すため、水で濡らしながら繊維を撚り合わせて糸を紡いでいきます。こうして紡績された糸と織られた生地をリネンと呼びます。織りの工程でも、工場を水蒸気で湿度を保ちながら織り上げます。

このように水に濡れると強くなる性質を持つリネンは、丈夫で長持ちするのが特長です。洗うほどに柔らかな風合いとなり、肌に馴染む変化を楽しむことができます。フランスでは、何代にもわたって受け継がれてきたシーツやテーブルウェアなどのリネンを見せていただく機会もありました。


栽培の環境負荷が低いだけでなく、長く使い続けられるという視点でも優れているリネンは、深い歴史を持ちながらも未来を紡ぐことのできる天然素材です。
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