「お気に入りの道具は、直してでも使い続けたい」 坂田ミギーさん

「お気に入りの道具は、直してでも使い続けたい」 | エッセンシャルオイル、ポリエステルたためる仕分けケース ほか

おたより/旅とMUJI

2026/05/13

日常をほんの少し離れ、いつもとちがう風に吹かれてみる。 自分を心地良く整えるための大切な時間。そんな旅を愛する人たちは、どこにいても自分らしくあるために、どんな道具を選んでいるのだろう。旅するように生きる人を訪ね、その在り方と鞄に忍ばせた愛用品を紐解く連載。

第2回は、アフリカ最大級のスラム「キベラ」のいまを伝え続ける、坂田ミギーさん。旅を続ける彼女が愛用するのは、素材を生かした無印良品のアイテム。もの選びの基準から、キベラで見つけた豊かさの本質を探ります。
(取材と文・山田さとみ 撮影・リン・イーリン)
坂田ミギー
坂田ミギー(さかた・みぎー)
福岡県生まれ。博報堂ケトルを経て独立。2018年に「利益の80%を分配する」を掲げる非営利プロジェクトを立ち上げ、2025年にNPO法人〈SHIFT80〉を設立。現地の教育支援や生理用品の配布、アーティストの育成に尽力している。著書には旅の記録を綴った『旅がなければ死んでいた』(KKベストセラーズ)などがある。
Instagram:@miggy_sakata

世界一周の旅で出会った、「キベラ」という運命の場所

かつて、広告業界でクリエイティブディレクターとして多忙な日々を送っていた坂田ミギーさん。現在は、仕事や生活の境界も、国境さえも越え、軽やかな暮らしを送っている。彼女がそんな生き方へと舵を切ったきっかけには、ある旅があった。

「会社勤めをしていた当時は、何日も家に帰らず働くような慣習がまだあって、心身を病んでしまったんです。世界のいろんな人の話を聞いたら自分をアップデートできて、生きるのが楽になるんじゃないかという期待があり、休職して世界一周の旅へ出ることにしました」

世界一周旅行の原動力について語る坂田ミギーさん
旅の原点は学生時代。鬱々と悩んでいた時期にインドへのひとり旅へ踏み出した。そのときの「生きるのが少し楽になった」という原体験が、彼女を世界一周へと向かわせる原動力になったという。

そうして1年間かけて世界各地を訪れた中で、ケニア・ナイロビにあるアフリカ最大級のスラム「キベラ」に出会い、運命が変わっていく。自分の常識が通用しない解放感と、そこに生きる人たちの剥き出しの生命力。その強烈なエネルギーに魅せられる一方で、現地の厳しい問題とも直面することになった。

「彼らはいつも元気いっぱいでパワフルに生きているけれど、困難は多い。十分な食事や学校に通うためのお金がないとか、生理用品を買えなくて学校を休まざるを得ない女の子もたくさんいます。そんな現実を知って以来、13年間キベラに通い続けて、少しでもその問題を解決できるように活動をしています」

困窮家庭や孤児、虐待下にある子どもたちの支援を行う坂田ミギーさん
2018年、月経教育と生理用品支援プロジェクトを開始。2022年には支援の輪を広げ、困窮家庭や孤児、虐待下にある子どもたちの継続支援を目的とした、利益の80%をアフリカへ還元する事業〈SHIFT80〉を立ち上げた。(写真:政近 遼)
ケニアの仕立て、お直し文化
ケニアには、お仕立て・お直しの文化があり、技術の高いデザイナーや縫製士がいる。彼らとともに服やグッズを制作・販売し、その利益をアフリカへ還元することで、継続的なサポートを行っている。(写真:政近 遼)

キャンピングカーを拠点に、旅をしながら働く日常

日本での拠点は、一台のキャンピングカーだ。どこかに出向く必要がなければ、全国を気ままに車を走らせ、場所にとらわれずリモートで仕事をこなしている。

「毎月3分の1くらいはキャンピングカーで出かけています。昨年は『盛岡さんさ踊り』『秋田竿燈まつり』『青森ねぶた祭』が見たくて、8月はずっと東北にいました。お祭り時期は宿も新幹線も混むけれど、キャンピングカーなら自由に移動して、寝泊まりできる。昼間はキャンプ場で仕事をして、夜はお祭りへ。そんなふうに1ヶ月を過ごしました」

「お気に入りの道具は、直してでも使い続けたい」 | エッセンシャルオイル、ポリエステルたためる仕分けケース ほか_F1dns4
限られたスペースに、必要なものはすべて収まっている。こじんまりとしていながら、自分を心地良く整えるための道具だけが揃った、満たされた空間。

文字どおり旅をしながら生きる坂田さんは、どんな環境でも日常を心地良く整えるための道具を常に探している。

「車内は狭いので、空気の質がダイレクトに居心地を左右します。だから、このエッセンシャルオイルは欠かせません。アロマストーンに数滴垂らすだけで、空気を一瞬でリフレッシュできる。月に一度は無印良品のお店をうろうろして旅に使えるものがないか探しますし、ウェブサイトのトラベル用品特集もよくチェックしますね。ナイロビには、レトルトカレーを大量に買って持っていき、大事に少しずつ食べるのも楽しみのひとつです」

無印良品のエッセンシャルオイルとアロマストーン
無印良品のエッセンシャルオイルとアロマストーン
愛用している香りは「ひのき」と「すっきりブレンド」。そのときの気分で選べば、限られた空間を瞬時に心地良く整えられる。左の「すっきりブレンド」は旧パッケージのもの。

ナイロビへ向かう荷物には、欠かせない服もあるという。

「現地は治安の関係で外を出歩くのが難しいので、宿泊先のジムで体を動かすためのスポーツウェアは必須ですね。ただ、私はすぐに荷物をグチャグチャにしてしまうので(笑)、『ポリエステルたためる仕分けケース』を重宝しています。最近は圧縮できるタイプも出ているので、すごく気になっています」

無印良品のポリエステルたためる仕分けケース
坂田さんが選んだのは、『ポリエステルたためる仕分けケース』のダブルタイプM。収納部が2層に分かれ、着用前と着用後、あるいは種類ごとに整理できるので、慌ただしい旅先でも荷物が迷子になるのを防いでくれる。

「背景」を知ることで変わった、もの選びの基準

キベラへ通い、友人が増え、訪ねる度に楽しい時間を過ごした。ただ、そこで目にする厳しい環境もまた事実だった。そうした日々を重ねるうちに、ものに対する価値観も少しずつ変わっていった。

「要らないものは買わなくなりましたね。ケニアには世界中から膨大な古着が届きます。キベラにもおしゃれ好きは多くて、安価にファッションを楽しめる側面もありますが、一方で現地で服作りを志す人たちの商売が成り立たなくなっている。それは、先進国で大量消費された服が大量廃棄されている結果です。だからこそ、ちゃんと考えてものを買いたいと思うようになりました」

パッキングをする坂田ミギーさん

以前、坂田さんが訪れたサステナブルイベントでは、良品計画のトークイベントが行われていた。そこで語られた、無印良品の「素材を生かすものづくり」の哲学に、あらためて共感したという。

「お話を聞いて、『ああ、だから私は無印良品で買い物するのが好きなんだ』と再認識したんです。このトラベルウォレット(現在は終売)も、気に入って4つ持っています。ひとつは盗難対策として少額の現金だけ入れ、もうひとつはカードや予備のSIMカードなど、絶対に失くせないものを入れる。いまは廃盤になってしまったようですが、伸びてしまったゴムを縫い直して使い続けたいほど気に入っています」

無印良品のトラベルウォレット
メッシュポケットには、キベラで友人からもらった思い出の一枚を。実用的ながら、旅の思い出もそっとしまっておける。
無印良品のトラベルウォレット
旅には、必ずこの財布を携帯する。手元には、予備を2つ買い溜めてあるほど、欠かせない存在。

環境を言い訳にしない、剥き出しの情熱を届けるための旅

現在は1年のうち約2ヶ月をナイロビでの現地活動、残りの時間を日本での寄付集めやキベラの啓発活動に充てている。一見、以前身を置いていた広告業界とはまったく異なるフィールドに思えるが、本人の捉え方は違う。

「私の中では、そんなに違いはないんです。広告の方が単価が高いっていうのはありますけど(笑)。でも、人の課題や困難を解決するという仕事の本質は同じですね」

坂田ミギーさん

やはり、坂田さんの心にボーダーはない。彼女はどのようにして、キベラの「いま」を伝えているのだろう。

「これまではどうしても、外国人の視点で切り取られたキベラが表に出ることが多かった。でも、そこに住む人にしか表現できないことが必ずあるはず。だから、最近はキベラで活動するアーティストに声をかけ、彼らが自ら見てほしいと思う姿をかたちにした展示〈キベラ“スラム”から見つめる世界 ―語られてきた私から、語る私へ。―〉 を企画しました」

昨年からは、日本で使われなくなったカメラの寄付を募り、希望者に技術をレクチャーするプログラムも実施している。しかし、現地の制作環境はまだ十分に整っていない。

「展示用に送られてきた写真データの容量が、60KBしかないこともありました。理由を聞くと、クラウドを契約するお金もないし、ハードディスクは盗まれたり壊れたりしてしまう。本当に小さなスマホの容量をやりくりして、必死に作品を保存しているんです。PCを持っていない映像作家に『どうやって編集したの?』と尋ねたら、スマホアプリでショートフィルムをつくっていた。環境が整っていなくても、情熱さえあれば表現はできるんだと、感動させられましたね」

決して恵まれた環境ではない。けれど、手に入る限りの道具で、自分たちの物語を紡ごうとする。勝手に溢れ出す情熱だけでかたちにする。それは、唯一無二のアートへと昇華される。

そんな熱を、一人でも多くの人に届けるため、坂田さんはこれからも旅を続ける。

キャンピングカーを運転する坂田ミギーさん

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