無印十年物語
「ガラスピッチャーは、家族と一緒に、いつもそこにある存在」Tamy(イラストレーター)

2026/04/14
今回は、多くの無印良品アイテムを長年愛用しているイラストレーターのTamyさん。その中でも耐熱ガラスピッチャーは、365日、家族の日常とこどもの成長とともにありました。
(文・Tamy 写真・幸喜ひかり)
Tamy
タミー イラストレーター・エッセイスト。ドイツワインの輸入商社勤務を経て、結婚・出産。二児の子育てと義両親の介護のかたわら、ワインエキスパートの資格を取得。食べものやさんぽの絵日記がInstagramで話題に。丁寧でやさしいイラストは国内外から人気を呼ぶ。著書に「世界一おいしいワインの楽しみ方」(三笠書房)『トラベラーズノートと歩く 東京のかわいい街さんぽ』(山と渓谷社)などがある。
Instagram:@tamytamy2015
こどもが幼稚園に入園し、水筒を持って行くようになったのが、麦茶生活のはじまりだった。
選んだのは釜炒りの丸粒大麦。私が幼いころ、祖母は井戸水を沸かして丸粒大麦で麦茶をつくってくれていたのを今でも覚えている。
それ以来、365日欠かすことなく、ヤカンで麦茶を沸かしている。
台所でぐらぐらと麦茶を沸かし、煮出していく。
香ばしい匂いがしてきたら火を止めて、常温になるまで待つ。2.5リットルのヤカンから麦茶を移すのは、無印良品の1Lと0.7L、ふたつの耐熱ガラスピッチャー。
このピッチャーに辿り着くまで、いくつものピッチャーを渡り歩いた。どれも一長一短あり、何を優先するのか考えた末に、手に取ったのがこのピッチャーだった。
口が広く、私の無骨な手でも底までしっかり洗えること。ガラスの真っ直ぐな美しさは、常に清潔を保とうと思えるし、眺めているとスッと気持ちが落ち着く。
0.7Lのピッチャーは、4人分のコップにちょうどいい容量。耐熱ガラスなので、ハーブティーや烏龍茶の茶葉に熱湯を注ぎ、そのまま冷ますこともできる。暑い季節は特に出番が多い。
1Lのピッチャーは、子どもの水筒2本分の量。よく動き暑がりな我が子は、真冬でも水筒に氷を入れて麦茶を持って行く。
ガラスだから割れるかもしれない。
そんな不安もあったけど、この十数年間で割ったのは一度だけ。
そのとき、あまりにも生活に馴染んでしまっていたので、なくなる想像が出来ていなかった。
いつもの麦茶ルーティーンが崩れたことに焦り、すぐにお店へ買いに走った。
そして、通い慣れた無印良品の陳列棚に、同じデザインのピッチャーが当たり前のように並んでいるのを見てほっとした。
サイズも形も変わらず、そこにある。
それは決して普通のことではないと思う。
流行などに合わせて変化していくものが多い中、何も変わらずあり続けることが、どれだけ信頼できることか。冷蔵庫を開けると、扉ポケットに収まるピッチャーが、なくてはならないものだと感じた。
慌ただしい子育てのまっただ中に、自分の時間が欲しくて絵日記を始め、今やライフワークとも言えるようになった。絵日記には、出かけた先のレストランなどで食べた料理を描くことが多い。
今年の春に小学校を卒業した下の子は、「お母さん、お仕事もう少しがんばってもいいかな」の問いかけに、小さくうなずいて背中を押してくれている。
仕事や育児、私の暮らしの根底を支えているのは、朝、このピッチャーから始まる家族の日常なのだと思う。
← 前の記事へ
← 前の記事へ








