とろぶ日記 vol.1 亀岡
とろぶ日記とは、無印良品 イオンモールKYOTOで働くとろぶが綴る、京都での出会いと暮らしの日記です。今回訪れた場所は京都駅から電車に揺られること20分。嵯峨嵐山のさらに西に位置する亀岡市。亀岡城跡が残る中心街から少し離れると田園から蛙の声が聞こえてくるような、ゆっくりとした時間が流れる土地です。
亀岡に向かう僕の持ち物は汚れが目立ってしまい着ることが出来なくなった白いTシャツが一枚。なぜ初めて足を踏み入れる亀岡にそのようなワケアリの服を持っていくのかというと、今回の旅の目的は「柿渋染め体験」にあるからです。
柿渋染めをレクチャーしてくださる棉生テキスタイル 馬渕さんとは、無印良品 イオンモールKYOTOにて催されている「つながり市」に出店いただいたことがきっかけでお繋がりに。馬渕さんの布生地に関するお話しをすっかり聞きこんでしまい、亀岡への訪問を約束したのでした。
柿渋とは未熟果の青柿の果汁を冷暗所で数年貯蔵し発酵させることで得られる抽出液のことで、高い防水・防腐・防虫効果があります。そのため、古くから衣服や和傘などの日用品や、木造建築の建材にも使われており、近年ではその抗菌作用も注目を集めているようです。
馬渕さんとの一か月ぶりの再会を喜び、談笑が弾みに弾んだのち柿渋染め体験はスタート。
まずは大きめのバケツに柿渋の原液を2倍に希釈した溶液を用意し、思い切りよくジャブジャブとTシャツを浸けていきます。
すると案外あっさりと全体的に染まったように見えるのですが、気を抜いてはなりません。
縫い目の近くには浸透していない部分もあるのです。
そのような箇所に特に気を配り、またジャブジャブ。
その後、軽く絞り洗濯機で少しだけ脱水をし、天日干しをします。
適当な風でTシャツがくるくると回ることにより均一に渇くようで、その日は天気も良く風も適度に吹くぴったりの陽気でした。
一時間ほど待って渇きを確認してみると、柿渋の色が薄く入っていました。表面は軽くノリがかけられたようなパリッとした風合いに。似たような生地感をもつTシャツでも、表面加工の違いにより色合いは少し違うようで、一緒に伺った先輩社員さんのロングTシャツはピンク色に近いような色合いをしていました。
その状態の色が気に入ればそのまま完成ともできるようですが、より柿渋らしい色を求めて二度目の染め。一度目は生地の撥水効果などで染まりにくかった服も、二度目の染めにより深みのある色合いになるのだそう。
完全に乾けばついに柿渋染めTシャツの完成です。
洗濯し乾かす度に柿渋染めの色合いはまた変わるようで、天日干しをすると色は濃くなり、陰干しし収納をしていると色は薄くなるのだそう。まるで生きているかのようなお洒落着を手に入れ、さっそくその場で着替えていると馬渕さんがこんなことをおっしゃっていました。
「体験を通じて感じたものや考えたことはその人のものだけになるでしょう。そんな宝物のようなものを受け取ってもらいたい。」
初めて訪れた場所で、初めての染めをした僕にとって今回の体験は、全く知らなかった世界に時間をかけてゆっくりと足を踏み入れる夏休みの自由研究のようで、馬渕さんのお話しを聞いた時のワクワクや思い切って浸けた時のドキドキ、ついでに嵐山を抜けた時に車窓から目にした急流の保津川の景色までを思い起こす、自分だけの宝物を手に入れることが出来ました。
今週末27日(土)28日(日)に無印良品 イオンモールKYOTOで催される「つながる市」では
棉生テキスタイル 馬渕さんをはじめとする亀岡で魅力的な活動をされている方々が出店してくださいます。亀岡の深い魅力に触れる貴重な機会、ぜひご来店くださいませ。
無印良品 イオンモールKYOTO