イデー東京 [イデーのみ]

【IDÉE TOKYO】バッチ作家 高橋彩子さん インタビュー(後編)

top

イベント・地域情報/イベント

2022/08/08

バッチ作家として活動されている高橋彩子さんはタイ、アフガニスタン、インド、中国、メキシコなどから民族衣装や装飾品を買い付けて、「バッチ」という新たな形として命を吹き込んだ作品を制作されています。そんな高橋さんに、作り始めたきっかけや制作についてお話しを伺いました。

前編 バッチをつくるようになったきっかけ
後編 制作で大切にしていること


―高橋さんは美大に通われていなかったんですね。てっきり通われているものだと思っていました。

今から行けるのであれば行きたいんですよ。よく“自分はなんのために作っているのか”を考えます。自分にとってのテーマってなんだろうなってことですね。

今でこそ「民族的な素材やモチーフのなかにあるモダンな形を見つける」というのがひとつのテーマかなと思っているけど、学校に行っていたらもっと早く気づけたかなと思うこともあるんです。

というのも、大学で学んでいたら「私はアクセサリーを作りたいんじゃないんだ」っていうのをもっとうまく伝えられるのかな、という気持ちがずっとあって。

作り始めた当時は美大行っていないことはコンプレックスになっていなかったけど、どうしてこれをやるのかバッチと改めて本気で向き合い、考え始めたときに、ちゃんと伝え方を学べていたらいいなぁと思ったんです。

―いろんな素材を掛け合わせてひとつの作品を作っていますよね。素材選びの基準や制作のイメージや大切にされていることはなんでしょうか。

私自身は0からものをつくることができないんですよ。見たら描けるけど、「馬を描いてください」って言われても描けないんです。

そういう0からつくるっていうよりも、たとえばボロボロになっている布だったら使えるところだけ切って使ったり、集めて組み合わせたりして素材を再構築するのが仕事だと思っています。

 
atelier

 
atelier_1

atelier

atelier
(素材のいくつかを見せていただいた。この状態のままで使うのではなく、高橋さんが切り取って使うことで“エスニック”というフィルターが外されて、別の素顔が現れてくるよう)

こういう素材ってエスニックショップでよく売っているじゃないですか。かわいいけど、垢抜けないものに見える瞬間もある気がします。

でも見方や切り取り方で、モダンな顔が見えてくることに気づきました。現地で彼らが作っている手仕事やモチーフのなかにある、モダンな要素を見つけるのが今の私にできることだなと作っているうちに思うようになりました。

―切り取って、編集して作るということなんですね。

この話はワークショップをするときにいつも話すんですけど、出来上がったものを見ても彩子さんのようにはならないわ、選ぶ素材やセンスが違うのねって言われるんですけど、そんなことなくて。

そこにあるものをそのまま見ずにカタチを探してみてくださいとアドバイスします。そして表面だけではなく、裏面の縫い目を見つけたり、一枚はがしてみたり。はっとするような美しさや思いもつかないかたちが現れます。そんな一面を見つけることを続けたいなと思っています。

 
atelier

(素材である生地のうち、紺色の部分だけを切り取って作っている作品を見せていただいた)

素材を見て、形を見つけて、この柄をどうにか使って形にすることはできるんです。前とは違う切り取り方をすれば新しい見え方になります。たとえばタッセルもタッセルのまま使うのではなく、布に縫い込んでみたり、切り取り方を変えると見た印象が変わるんです。

民族衣装の本物のオーラには勝てないから、なるべくそのまま使わない。黒い台紙にしているのも、フラットに見えるように願っているからです。

―素材を選ぶときの基準はなんでしょうか?
まずは強度と色ですね。すごく薄い生地は避けています。あとは、人の気配っていうのかな。同じように見えても、ある人はすごく神経質な作り方をしているとか、この人は大らかだなとか、そうした人の気配を強烈に感じます。

好みの色はかっこいい色。年代や織り方は私にとっては重要ではありません。特に好きなのはグァテマラと中国の生地。中国のは繊細で巧みな技法が使われていて複雑な色合い、グァテマラは大らかで色気があると感じます。

どの民族衣装も現地の人の顔立ちや肌の色、その土地の太陽の光とよく合います。その中でも私にとってはグァテマラの服は彼らにしか着ることのできない美しさがあります。中国のは刺繍とか技が細かくて、誇り高さを感じます。グァテマラと中国の素材に惹かれるのはそんな理由です。
 
atelier

atelier
(民族衣装は着ている服によってその人の出自がわかるという。グァテマラは村によって刺繍のモチーフが異なる。)
 
atelier

atelier
(おそらく婚礼用の衣装とされる布。身体を覆うように羽織って使っていたとのこと。)

―どの生地もとてもパワーというかオーラがありますね。切る時に勇気がいりませんか?

はい、すごく勇気を出して切っています。私は完全な状態で残っている生地にはハサミを入れないってルールを自分に設けているんです。買わないし、切りません。

私が使っている生地は、最近はアフガニスタン人のおじさんから買っています。コロナになってから買い付けに行けないんで、長い付き合いのあるその方から買っているんです。

そのおじさんは私に、これは美しくて状態がいいからと教えてくれるんですよね。何年もやりとりしているから状態がいいというのは本当にいいと思うんですけど、私のルールと反するから買わないんですよ。すると「good price for you?:いくらだったら買う?」って言われて、それでも買わないといろいろ言われます(笑)

彼とは買い付けに行けていたときに市場で出会いました。ちょっとした端切れなんかも売っているし、圧が強い商売人たちのなかでもそのおじさんは付き合いやすかったんです。

半年に1度くらいの頻度で通っていました。お店のなかに私はだいたい3~4時間くらいいるんですけど、そうすると奥の方から全部出してくれて、自分の店にあったことすら忘れていたものもあり、私が来ると棚卸ができる、と言います。

新型コロナウイルスが広まってからはメールで写真を送ってもらい、電話でやりとりをして送ってもらいました。彼に支えてもらってます。彼がいないと作れなかったですね。
 
atelier
(いつも生地を買い付けるおじさんのことを“アフガンおやじ”と呼ぶ高橋さん。お話しを聴いていると、長い取引のなかで培ってきたお互いへの信頼関係を感じられる。)

―とても自然な流れで、今のアッチコッチバッチに繋がってきているんですね。

バッチにこだわっているわけではないけど、バッチを作るのがいちばんしっくりきています。自分が好きな旅することがつながっていて、気軽で、工作っぽくて。欠片も無駄にしないという想いのもと使える部分をどう生かすかを考えて、素材と向きあっていきたいですね。

 
atelier

(高橋さんのアトリエにて)




高橋彩子さんの展示会は2022年8月29日(月)までJR東京駅グランスタ東京地下1階にあるIDÉE TOKYOにて開催中です。作品は手に取ってご覧いただけますので、ビビッとくる子がいたら、添えられている黒いカードと一緒にカウンターまでお持ちくださいませ。

<展示会概要>
期間 2022年7月29日(金)~8月29日(月)
場所 IDÉE TOKYO(JR東京駅改札内)
時間 10:00 - 21:00(定休日なし)



instagram
IDÉE TOKYO @ideetokyo
Saeko Takahashi @bacchiworks_saeko


<お店への行き方>
○場所
東京都千代田区丸の内1-9-1
JR東日本東京駅改札内
グランスタ東京 B1F スクエアゼロエリア 48番

①丸の内地下中央口から
改札入場後、銀の鈴待ち合わせ場所方面に直進。左手のはせがわ酒店を越えたら左折して直進。ピエール・エルメ隣。

②グランスタ地下北口から
八重洲・丸の内連結通路途中のグランスタ地下北口から入場し直進。右手のガトーフェスタ・ハラダをこえて左手。



マップ1080_0.jpg