(閉)イデー東京

【IDÉE TOKYO】LTshop主宰 松田沙織さんインタビュー 前編

松田さんポートレート.jpg

イベント・地域情報/イベント

2021/08/15

IDÉE TOKYOでは2021年7月21日(水)から8月23日(月)にかけて、リトアニアのデザインスタジオformuniformによるデザインプロダクトDrawstring BagのPOP UPを開催しています。

*formuniform お取り扱いラインナップ

2010年からfrom East to East Projectとしてformuniformのみならずリトアニアのクラフト、デザイン、ライフスタイルの紹介を10年近くも続けられている松田さんに、なぜリトアニアなのか、どのようにしてformuniformと出会ったのかお話しを伺いました。

松田さんへのインタビューは全2回です。
formuniformデザイナー アイステ・ネステロバイテさんへのインタビューは以下からお読みいただけます。

【IDÉE TOKYO】formuniformデザイナー アイステ・ネステロバイテさんインタビュー



―松田さんは武蔵野美術大学空間演出デザイン学科ファッションデザインコースに入学されていますが、入学にはどのような動機があったのでしょうか?

私は小さい頃から針仕事が好きで、巾着袋を縫って遊ぶような子供でした。そこから人形の服作り、自分の服作りへと発展してゆき、いつしか衣服の制作に携わる仕事をしたいと思うようになったんです。ファッションを学べる大学を探して、武蔵野美術大学を目指しました。美術大学ではクリエイティブディレクターの小池一子氏のゼミに所属し、様々な分野で物作りを学ぶ人たちに関われたので、ファッションに留まらず視野が大きく広がりました。

―当時はファッションデザイナーを目指されていたのでしょうか?

流行を追うファッションよりも、映画や舞台芸術が好きだったこともあって衣装の世界で衣服に関わることを夢に描いていました。縁や技量、適性など様々な流れで衣装デザインを自分の生業にすることはできませんでしたが、舞台芸術への関心がその後のリトアニアとの出会いにつながりました。

大学四年の夏休みに所属学科の教授陣のひとりであった小竹信節先生(舞台美術・アートディレクター。寺山修司全作品の舞台美術および映画美術を担当される)が美術を担当された企画に、衣装制作チームとして参加しました。ロシア・ルーマニア・フランスといったヨーロッパを巡業する旅に同行させてもらい、このときにリトアニアの劇団の演劇を観る機会に恵まれました。

 
ヨーロッパ巡業スクラップブック_1.jpg
(リトアニアの劇団に出会うきっかけとなったルーマニアで開催されたシェークスピア演劇祭のパンフレットとチケット。ページ左にあるのはルーマニアの都市クライオバで出会った葉。)


 
ヨーロッパ巡業スクラップブック_2.jpg
 
(松田さんはチケット、葉っぱ、トイレットペーパーなど気になるものを旅のスクラップブックに毎日貼られていたそう。)


その演出や衣装に衝撃を受けてとても感激し、リトアニアの芸術文化の豊かさを感じて興味を持つようになりました。とはいっても、今ほど何でもインターネットで調べれば分かるような時代でもなく、漠然といつか訪れたい国として脳裏のどこかでいつも思っているに留まっていました。


―リトアニアとの出会いがあったのは学生の頃だったのですね。そのあとNUNOでお仕事をされていたようですが、どのようなことをされていたのですか?

知人の紹介で在学中よりNUNO(株式会社布 テキスタイルの企画・製作・販売を一貫しておこなっている)で経験を積ませていただく機会を得ました。右も左もわからぬ20代だった私がお世話になった会社です。テキスタイルだけではなく、企画・物の流通、ものづくりを支える背景も実践して学びました。

美術大学へ行ったからには独立するんだ、自分でなんとかやっていきたいという独立心がすごく強かったんです。組織に関わらせて頂きながらも自分で仕事していく方法を模索していました。30歳になるときに会社勤めを続けるか、独立していくか決めなくてはいけないと感じており、このままではどっちつかずになるという瀬戸際にいました。それで独立していく道を選びました。

―suimokの立ち上げにはそんな経緯があったんですね。

はい、自立してデザインやクリエイションと関わっていきたい思いが強かったんです。NUNOで経験を積ませていただきながら、美術大学の同窓生である清水悟と二人でデザインスタジオsuimokを立ち上げました。二人の名前に入っている“水”と“木”で“スイモク”という屋号になりました。結果、リトアニアは森と湖の国なので嬉しい偶然です。

 
suimoku_1.jpg
 
suimoku_2.jpg
(suimokの活動のひとつとしてスタートしたfrom East to East Projectの様子)

物が溢れているこの時代に、何をテーマにデザインと関わっていくべきかということを長らく模索していました。物を作って売るということにしても、これだけ物がたくさんあるのに発信していく必然性が自分の中に見出せず、責任をもってどうやってものづくりと関わっていけばいいのか悩んでいました。

衣装の仕事もめぐり合わせがない、でもものづくりには関わっていきたい。このときに学生の頃より興味を抱いていたリトアニアをはじめ、ヨーロッパを旅して周りました。自分なりにひとつは答えを出さなくてはいけないなと思いながら。



 
倉庫群_1.jpg

(カラフルな扉が並ぶ倉庫と右奥に集合住宅が見える。松田さんが初めてリトアニアに降り立ったときの、リトアニアに対する第一印象となった風景。)
 
トロリーバス_1.jpg
(ヴィリニュス市街地を走るトロリーバス。チケットは空港内にあるキオスクでも購入できる。)
 
教会の塔の上から_1.jpg
(教会の塔の上から旧市街地の中心を眺める。)
ニダ_1_1.jpg
(リトアニア最西端のネリンガにあるニダからバルト海を臨む。海を隔てた向こうにはスウェーデンがある。)
クルシュー砂州.jpg
(多くのリトアニア人が愛するニダは、細長いクルシュー砂州と美しいクルシュー潟で有名。首都ヴィリニュスから車で5時間ほどとかなり時間がかかるが、松田さんもリトアニアの方々に勧められて向かわれたそう。)
ニダ_2_1.jpg
(バルト海沿岸を背にして眺めるクルシュー砂州。この幅2km、長さ98kmの細長い砂州には9つの街があり、リトアニア国内だけでなくロシアやドイツからも観光客が訪れる場所である。)
IMG_9318_1.jpg
(道中に出会ったシュバシコウと民家。リトアニアではガンドラスと呼ばれるこのコウノトリの仲間は、リトアニアの国鳥でもある。)
IMG_3216_1.jpg
(かごづくりをされているイラさんとアナさんの家に向かう途中に出会った、首都ヴィリニュス郊外の草原。)



<後編へつづく>
(リトアニアでの写真はすべて松田沙織さん 撮影)

インスタグラムアカウント
LTshop @ltshop_fete
formuniform @formuniform
IDÉE TOKYO @ideetokyo


IDÉE TOKYO