(閉)イデー東京
【IDÉE TOKYO】LTshop主宰 松田沙織さんインタビュー 後編

2021/08/15
IDÉE TOKYOでは2021年7月21日(水)から8月23日(月)にかけて、リトアニアのデザインスタジオformuniformによるデザインプロダクトDrawstring BagのPOP UPを開催しています。
2010年からfrom East to East Projectとしてformuniformのみならずリトアニアのクラフト、デザイン、ライフスタイルの紹介を10年近くも続けられている松田さんに、なぜリトアニアなのか、どのようにしてformuniformと出会ったのかお話しを伺いました。
松田さんへのインタビューは全2回です。
今回は後編として、リトアニアでの滞在をきっかけにしてクラフト、デザインプロダクトを紹介されるようになるまでのお話しです。
<バックナンバー>
〇formuniformデザイナー アイステ・ネステロバイテさんインタビュー
〇LTshop主宰 松田沙織さんインタビュー 前編
*リトアニアでの写真はすべて松田沙織さん撮影。
(TOPイメージはスピンジュウス湖。首都ヴィリニュス近郊から車で40分ほど。)
(リトアニア南部の町、ヴァレーナで開かれるきのこ祭り。たくさんのクラフトだけでなく、料理やお菓子の出店がされている)
初めて訪れたリトアニアでライフスタイルの在り方やクラフトの豊かさを目の当たりにし、当時探していた答えのヒントを感じました。リトアニアと日本を繋ぐこと自体をデザインしていきたいと思うようになったんです。
まだ日本で認知されていないリトアニアの文化をクラフトやデザインを通して日本に伝えるだけでなく、親日家でもあるリトアニアへも日本の文化を伝えたいという思いで、アジアの東とヨーロッパの東を意味して、この企画をfrom East to East Projectと名づけました。
(ヴァガンタス・ヴァイタイティスさんは陶芸の教育と作陶を手がけている)
(muku:リトアニアに暮らすドーヴィレとミンドウガスがつくるリネンウエアブランド。)
公式インスタグラムアカウント @madebymuku
日本版公式インスタグラムアカウント @madebymuku_jp
(麦わらのオーナメント、ソダス。 卵を運ぶかごのかたちをした鳥のモチーフが特徴的。フィンランド語ではヒンメリとも言う)
(イデーでも人気の高いリトアニアのかご。イラさんとアナさん姉妹は松の根を使ったかご作りを今も続けている)
(Chocolate Naive:チョコレートナイーブはリトアニア初のビーントゥバーチョコレートファクトリー)
Chocolate Naive ONLINE SHOP
日本版公式インスタグラムアカウント @chocolatenaive_japan
(My Cup of Teaはリトアニアに自社工房を構えるお茶専門店。店舗はロンドン・ソーホー地区にある。)
日本版公式インスタグラムアカウント @mycupoftea_japan
先ずは自分自身もリトアニアについて学ぶために、暮らすように旅をしながらフィールドワークを重ね、現地の作り手を訪ねてまわりました。その中で、豊かな手仕事や、同世代のクリエイターたちのデザインの仕事など、共感できるものづくりに出会うことができました。
持続可能な活動にしていくためにも、小さい規模でも事業として展開したいという意志があり、出会ったクラフトやデザインプロダクトを直接輸入し、販売することを基盤に、販促に必要なものはすべて自分たちでデザインしながら活動していきました。特にデザインプロダクトに関しては、日本における輸入代理店という立場を担い、formuniform はじめ数社のリトアニア発信のブランドのご紹介・輸入業務を手掛けています。
―ファッションデザインを学んできたことで舞台衣装と出会い、そこからリトアニアに繋がったのですね。formuniformとの出会いについて教えていただけますか?
2010年に意を決して訪れたリトアニアの旅の中で、当時、市内の現代アートセンター内で運営していたHotel of Thingsというデザインプロダクトのセレクトショップに立ち寄りました。美術館の中というロケーションや、シートベルトを使ったインテリアなどが特徴的で印象に残り、滞在中に何度か足を運びました。
(Hotel of Things 黒い部分はシートベルトを素材としている)
各国のデザインプロダクトがある中でいくつかローカルデザイナーの商品も目に留まり、その中のひとつがformuniform でした。まだブランド名も生まれる前のことで、デザイナーの個人名であるアイステ・ネステロバイテの名前で活動していた頃です。シートベルトを使ったバッグやエプロンなどのプロダクトを販売していました。
(フォーマルカラーエプロンはクライアントからのコメントをきっかけにして生まれた)
(WOVEN bagはレザーやシートベルトを素材としている)
あとから知ったのですが、アイステはHotel of Thingsの立ち上げメンバーの1人だったそうです。自身のデザイン活動に専念するべく運営からは退いたのですが、そういった縁でアイステの製品を販売していたのです。
from East to East Projectのフィールドワークの中で現地の建築家やアーティスト、デザイナーなど様々なジャンルのクリエイターに出会い、リトアニアの文化を伝えるには、昔から引き継がれてきたクラフトの現代とこれからを表現するデザインという二つの柱がテーマになると確信しました。
2010年当時、独立して20年を迎えようとしていたリトアニアでは、まさに今がデザイン史の夜明けのときであり、これからの発展に可能性を感じたのです。そして、デザインを紹介していく上で脳裏に浮かんだのがHotel of Thingsで見たアイステのバッグやエプロンでした。
リトアニアに滞在した折にメールで直接連絡をして、現代アートセンターのカフェで会うことになりました。黒髪でグリーンの瞳をしたクールな見た目のアイステは物腰が柔らかく、優しさと細やかさが伝わってきて、同じ歳だったこともあり、すっかり打ち解けました。
リトアニアは人口が300万人弱という小さな国なので、リトアニア国内で立ち上げたブランドなどは市場を国内に求めず、はじめから外国へ輸出することを想定しています。EU加盟国ということもあって、少なくともヨーロッパ諸国では自由に商いが出来ることも後押ししているかもしれません。個人的にも日本文化を好むアイステは、formuniform の日本での販売についてもとても前向きでした。
その後、アイステのエプロンなどをfrom East to East ProjectやLTshopで紹介するようになりました。アイステが日本の合同展示会に出展することになって来日した際に私の自宅に泊まってもらったのですが、狭い我が家ながらも気遣いのあるアイステの人柄を感じ、仲良く過ごしました。
(2013年6月アイステさん来日。LTshopオープン前のことだった。)
逆に私がリトアニアに滞在した際には、アイステのパートナーのご両親の家にまで泊まらせてもらい、家族ぐるみの付き合いとなりました。お互いにフリーランスで活動しているアイステとは、仕事観や人生観で共感できることが多く、公私ともに刺激をもらう大切な友人となりました。
(アイステさんのパートナーのご両親宅。リトアニアの住宅の庭によくある定番的な温室とのこと)
アイステは常に適正なテンポやバランスを慎重に捉えながら、仕事を進めています。納得がいくまで時間をかけてアイディアを具現化し、試作品は実際に自身や家族で使いながらブラッシュアップしています。自分の目の届く規模を好み、今でもデザイン業務とブランドの運営はアイステひとりで手掛けています。
アイステの仕事を紹介して数年した頃、アイステが長らく温めてきたformuniformというブランド名を掲げ、その頃Drawstring Bagシリーズが生まれました。シンプルな作りのなかに確かな存在感のあるデザインに私はすっかり魅了されて、日本での紹介を始めました。どの企画やポップアップにも持ち込み、直接お客さまとお話しし、実際に使って頂くことでその使い心地やデザイン性のファンになって頂きながら、こつこつと紹介を続けてきました。
ブランド名として広く知られているわけではありませんので、製品そのものが勝負です。名前ではなくものの良さでお客さまに必要として頂けると、とても嬉しいです。
アイステの目指すユニバーサルなデザインというのは使う人があって完成するものだと考えた時、プロダクトが生まれるところからプロダクトとして成立していく過程に立ち合うことができて、私にとっても良い経験となっています。本当の意味でのユニバーサルなデザイン、定番として必要とされる製品になるよう、これからも地道に伝えていきたいと思っています。
―最後に、松田さんの思うリトアニアデザインの魅力はなんでしょうか。
私がご紹介しているリトアニアデザインの製品は、どれもデザイナーたちが生産背景を自社内に持ったり、formuniform のように専任の工房があったりと、デザインだけではなく何より品質をとても大切にして作られたものばかりです。使っていくうちに仕事の丁寧さを感じて頂けると思います。
デザイン性も素材感を生かしたシンプルで心地よいものが多いように思っています。自然が身近にあるリトアニアの暮らしから生まれたものづくりは、日本の暮らしにもすっと馴染み、忙しい都市の暮らしの中でも気持ちを調えてくれると思います。
―家で過ごす時間が増えてきたことで、多くの方が自分たちの暮らしを見つめ直しているかと思います。それゆえに自然豊かなリトアニアで続くものづくりに注がれる日本人の目線は、これからますます熱くなるように思います。リトアニアデザインとクラフトのこの先の未来が楽しみですね。今日はありがとうございました。
(松田さん、アイステさんへのインタビューを終えたあと、松田さんからのご提案でアイステさんには店内をご覧いただきました。)
リトアニアで活動されるアイステさんのデザインスタジオformuniformのPOP UPは8月23日(月)まで開催しております。これまでにないほど多くのラインナップを一度にご覧いただけます。この貴重な機会をどうぞお見逃しなく。
*IDÉE TOKYO POP UP取扱い商品ラインナップ
〇XS /スマホサイズ
〇SSサイズ
〇Sサイズ
〇Backpack / Lサイズ
instagram
アイステ・ネステロバイテさんのデザインスタジオ @formuniform
LTshop @ltshop_fete
IDÉE TOKYO @ideetokyo
IDÉE TOKYO
2010年からfrom East to East Projectとしてformuniformのみならずリトアニアのクラフト、デザイン、ライフスタイルの紹介を10年近くも続けられている松田さんに、なぜリトアニアなのか、どのようにしてformuniformと出会ったのかお話しを伺いました。
松田さんへのインタビューは全2回です。
今回は後編として、リトアニアでの滞在をきっかけにしてクラフト、デザインプロダクトを紹介されるようになるまでのお話しです。
<バックナンバー>
〇formuniformデザイナー アイステ・ネステロバイテさんインタビュー
〇LTshop主宰 松田沙織さんインタビュー 前編
*リトアニアでの写真はすべて松田沙織さん撮影。
(TOPイメージはスピンジュウス湖。首都ヴィリニュス近郊から車で40分ほど。)
(リトアニア南部の町、ヴァレーナで開かれるきのこ祭り。たくさんのクラフトだけでなく、料理やお菓子の出店がされている)
初めて訪れたリトアニアでライフスタイルの在り方やクラフトの豊かさを目の当たりにし、当時探していた答えのヒントを感じました。リトアニアと日本を繋ぐこと自体をデザインしていきたいと思うようになったんです。
まだ日本で認知されていないリトアニアの文化をクラフトやデザインを通して日本に伝えるだけでなく、親日家でもあるリトアニアへも日本の文化を伝えたいという思いで、アジアの東とヨーロッパの東を意味して、この企画をfrom East to East Projectと名づけました。





公式インスタグラムアカウント @madebymuku
日本版公式インスタグラムアカウント @madebymuku_jp





(Chocolate Naive:チョコレートナイーブはリトアニア初のビーントゥバーチョコレートファクトリー)
Chocolate Naive ONLINE SHOP
日本版公式インスタグラムアカウント @chocolatenaive_japan

日本版公式インスタグラムアカウント @mycupoftea_japan
先ずは自分自身もリトアニアについて学ぶために、暮らすように旅をしながらフィールドワークを重ね、現地の作り手を訪ねてまわりました。その中で、豊かな手仕事や、同世代のクリエイターたちのデザインの仕事など、共感できるものづくりに出会うことができました。
持続可能な活動にしていくためにも、小さい規模でも事業として展開したいという意志があり、出会ったクラフトやデザインプロダクトを直接輸入し、販売することを基盤に、販促に必要なものはすべて自分たちでデザインしながら活動していきました。特にデザインプロダクトに関しては、日本における輸入代理店という立場を担い、formuniform はじめ数社のリトアニア発信のブランドのご紹介・輸入業務を手掛けています。
―ファッションデザインを学んできたことで舞台衣装と出会い、そこからリトアニアに繋がったのですね。formuniformとの出会いについて教えていただけますか?
2010年に意を決して訪れたリトアニアの旅の中で、当時、市内の現代アートセンター内で運営していたHotel of Thingsというデザインプロダクトのセレクトショップに立ち寄りました。美術館の中というロケーションや、シートベルトを使ったインテリアなどが特徴的で印象に残り、滞在中に何度か足を運びました。

各国のデザインプロダクトがある中でいくつかローカルデザイナーの商品も目に留まり、その中のひとつがformuniform でした。まだブランド名も生まれる前のことで、デザイナーの個人名であるアイステ・ネステロバイテの名前で活動していた頃です。シートベルトを使ったバッグやエプロンなどのプロダクトを販売していました。


あとから知ったのですが、アイステはHotel of Thingsの立ち上げメンバーの1人だったそうです。自身のデザイン活動に専念するべく運営からは退いたのですが、そういった縁でアイステの製品を販売していたのです。
from East to East Projectのフィールドワークの中で現地の建築家やアーティスト、デザイナーなど様々なジャンルのクリエイターに出会い、リトアニアの文化を伝えるには、昔から引き継がれてきたクラフトの現代とこれからを表現するデザインという二つの柱がテーマになると確信しました。
2010年当時、独立して20年を迎えようとしていたリトアニアでは、まさに今がデザイン史の夜明けのときであり、これからの発展に可能性を感じたのです。そして、デザインを紹介していく上で脳裏に浮かんだのがHotel of Thingsで見たアイステのバッグやエプロンでした。
リトアニアに滞在した折にメールで直接連絡をして、現代アートセンターのカフェで会うことになりました。黒髪でグリーンの瞳をしたクールな見た目のアイステは物腰が柔らかく、優しさと細やかさが伝わってきて、同じ歳だったこともあり、すっかり打ち解けました。
リトアニアは人口が300万人弱という小さな国なので、リトアニア国内で立ち上げたブランドなどは市場を国内に求めず、はじめから外国へ輸出することを想定しています。EU加盟国ということもあって、少なくともヨーロッパ諸国では自由に商いが出来ることも後押ししているかもしれません。個人的にも日本文化を好むアイステは、formuniform の日本での販売についてもとても前向きでした。
その後、アイステのエプロンなどをfrom East to East ProjectやLTshopで紹介するようになりました。アイステが日本の合同展示会に出展することになって来日した際に私の自宅に泊まってもらったのですが、狭い我が家ながらも気遣いのあるアイステの人柄を感じ、仲良く過ごしました。

逆に私がリトアニアに滞在した際には、アイステのパートナーのご両親の家にまで泊まらせてもらい、家族ぐるみの付き合いとなりました。お互いにフリーランスで活動しているアイステとは、仕事観や人生観で共感できることが多く、公私ともに刺激をもらう大切な友人となりました。

アイステは常に適正なテンポやバランスを慎重に捉えながら、仕事を進めています。納得がいくまで時間をかけてアイディアを具現化し、試作品は実際に自身や家族で使いながらブラッシュアップしています。自分の目の届く規模を好み、今でもデザイン業務とブランドの運営はアイステひとりで手掛けています。
アイステの仕事を紹介して数年した頃、アイステが長らく温めてきたformuniformというブランド名を掲げ、その頃Drawstring Bagシリーズが生まれました。シンプルな作りのなかに確かな存在感のあるデザインに私はすっかり魅了されて、日本での紹介を始めました。どの企画やポップアップにも持ち込み、直接お客さまとお話しし、実際に使って頂くことでその使い心地やデザイン性のファンになって頂きながら、こつこつと紹介を続けてきました。
ブランド名として広く知られているわけではありませんので、製品そのものが勝負です。名前ではなくものの良さでお客さまに必要として頂けると、とても嬉しいです。
アイステの目指すユニバーサルなデザインというのは使う人があって完成するものだと考えた時、プロダクトが生まれるところからプロダクトとして成立していく過程に立ち合うことができて、私にとっても良い経験となっています。本当の意味でのユニバーサルなデザイン、定番として必要とされる製品になるよう、これからも地道に伝えていきたいと思っています。
―最後に、松田さんの思うリトアニアデザインの魅力はなんでしょうか。
私がご紹介しているリトアニアデザインの製品は、どれもデザイナーたちが生産背景を自社内に持ったり、formuniform のように専任の工房があったりと、デザインだけではなく何より品質をとても大切にして作られたものばかりです。使っていくうちに仕事の丁寧さを感じて頂けると思います。
デザイン性も素材感を生かしたシンプルで心地よいものが多いように思っています。自然が身近にあるリトアニアの暮らしから生まれたものづくりは、日本の暮らしにもすっと馴染み、忙しい都市の暮らしの中でも気持ちを調えてくれると思います。
―家で過ごす時間が増えてきたことで、多くの方が自分たちの暮らしを見つめ直しているかと思います。それゆえに自然豊かなリトアニアで続くものづくりに注がれる日本人の目線は、これからますます熱くなるように思います。リトアニアデザインとクラフトのこの先の未来が楽しみですね。今日はありがとうございました。

リトアニアで活動されるアイステさんのデザインスタジオformuniformのPOP UPは8月23日(月)まで開催しております。これまでにないほど多くのラインナップを一度にご覧いただけます。この貴重な機会をどうぞお見逃しなく。
*IDÉE TOKYO POP UP取扱い商品ラインナップ
〇XS /スマホサイズ
〇SSサイズ
〇Sサイズ
〇Backpack / Lサイズ
アイステ・ネステロバイテさんのデザインスタジオ @formuniform
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