戸馳島からパッションフルーツの美味しさを届けたい。

戸馳島からパッションフルーツの美味しさを届けたい。

諸国良品

2022/06/10

南米原産で亜熱帯地域でつくられる「パッションフルーツ」。日本でも沖縄県や鹿児島県など南の地域でつくられており、そのトロピカルな味わいは知る人ぞ知る夏の味として好まれています。そんなパッションフルーツを、熊本県の宇土半島の最南端に位置する戸馳島(とばせじま)で栽培に取り組む若手農家がいます。「安全でおいしい戸馳のアボカド&パッションフルーツを、日々の食卓に届けたい!」をコンセプトに、「Tobase Labo」を立ち上げた中川裕史さんの活動をご紹介します。

熊本市内から車で約1時間、天草の入り口に位置する人口約1,200人の小さな島・戸馳島。胡蝶蘭などの洋蘭の栽培が盛んで「フラワーアイランド」とも呼ばれています。この島で生まれ育った中川さんの家業は、3代続く胡蝶蘭農家。高校卒業後に理学療法士を目指していた中川さんでしたが、自然と農業に興味を持ち、19歳から父親の手伝いを始めました。

その後、最先端の農業を学ぶために渡米。農業研修でハワイ島に訪れた際、パンケーキに載せられていたバターの味に衝撃を受けたといいます。それは「リリコイバター」と呼ばれるバターで、リリコイとはハワイ語でパッションフルーツのこと。甘酸っぱい風味のまろやかなバターで、それさえあれば他にジャムなどは必要ないほど、美味しくパンケーキを食べられたそうです。そんな味を日本でも作りたい。帰国後にアボカドと同時に栽培を始めたのがパッションフルーツでした。

パッションフラワーはトケイソウ科の一種で、その花がトケイのように見えることからその名が付いたといわれています。3つに分裂した雄しべが確かに長針、短針、秒針に見えますね。見るからに南国植物のような花ですが、この花が咲くのはたったの1日。そのタイミングに受粉しないとパッションフルーツの実が結実しないようですが、ハウス内に放たれたミツバチたちがいれば、機を逃さず確実に行ってくれるようです。

栽培品種は、鹿児島県でパッションフルーツの品種改良を重ねる農家の下を訪ね、約50種類にのぼる品種を食べて、これ!と感じたものを選んだという中川さん。「一般的なパッションフルーツは”酸がきてから香りがくる”感じで、追熟しないと酸っぱいものが多いですが、うちで作っているものは”香りがきてから酸が抜ける”感じで、採れたてでも美味しく食べられます」と胸を張ります。

「真ん中で二つにカットして、そのままスプーンですくって食べるも良し、ヨーグルトやバニラアイスにかけたり、はたまた杏仁豆腐との相性も抜群ですよ」と話すTobase Laboのパッションフルーツ。今では熊本県内の産直はもとより、飲食店やバーからも引き合いがあるといいいます。情熱的な夏を想起させるパッションフルーツは、夏の時期カクテルにもよく用いられるそうです。

「この小さな島にも少子高齢化によって荒地が増えてしまっています。余った農地を再利用して雇用を増やすことも目指しています。将来的には亜熱帯食物(アボカド、パッションフルーツ、バニラビーンズ)の観光農園をオープンして、大好きな島をもっと多くに人に知ってもらいたいと思っています」そう語る中川さんの挑戦は、少しずつ実を結び始めています。

生産者紹介

  • KP001001063 | Tobase Labo・中川裕史

    Tobase Labo・中川裕史 詳細

    戸馳島出身、在住の農家。高校卒業後、理学療法士を目指すものの、家業が胡蝶蘭農家であり、農業に興味を持ち始める。最先端の農業を学ぶため渡米。日本では馴染みのないアボカド、パッションフルーツに魅了され国内栽培に挑戦することを決意。カリフォルニア州立大学デービス校農業経営短期コースを修了し、帰国。現在、40品種以上のアボカド(ハウス栽培国内シェア2位)、パッションフルーツの栽培や加工品事業を手掛ける。少子高齢化に伴う戸馳島全体を元気にしたいと、Tobase Laboを発足。