「ヤマニ果樹農園」の9代目、板橋亮さんは子どもの頃から家の前の梨畑で遊んで育ち、大学でも梨をテーマにした研究をしていました。卒業後は自然と農家への道へ。県の試験場で実践的な技術指導を受けた後に就農しました。
お父さんの代から環境に配慮し、安定的に梨を生産できる限界まで農薬の使用を削減している「ヤマニ果樹農園」。農園内には、セミをはじめ多くの生物が飛び交っています。そんな畑で育てられた梨は、化学合成農薬と化学肥料を通常の半分以下に減らして栽培した農産物に与えられる「ちばエコ農産物」の認証を受けています。
有機質肥料を使った土づくりに力を入れたり、多くの農園が草を生やさないようにする樹の株元に、あえて草を生やす取り組みをしたりしています。この草にカブリダニなどの天敵が住み、害虫の被害を低減することに成功しているといいます。
「エコ栽培は病気の発生時期を見極めて、適度なタイミングで農薬以外のケアをしたり手間がかかりますが、みなさんに安心して食べてもらえるよう、誠心誠意育てています」と亮さんは話します。
そんな「ヤマニ果樹農園」に2022年新たな仲間が加わりました。弟の大輔さんも農園を手伝うようになったのです。大手ホテルで地域の魅力発信をしたり、ソムリエとして働いていた大輔さんは、各地を見ていくなかで改めて地元の良さを実感し、家業のブランディングをしたいと思うように。
「梨が身近すぎて、これまでは特別に感じていませんでしたが、実家のことを話した時の周りの反応から自分の生まれ育った環境の魅力を再確認できました」と大輔さん。兄弟が揃って「やり方や価値観をわかっているからやりやすい」と亮さんもうれしそうです。
なお、「ヤマニ果樹農園」は数十年前に市場への出荷を辞め、直売のみをしています。そうすることで完熟した糖度の高い梨を、収穫したその日に出荷することができています。
「千葉県で一番古くから続く梨の産地を絶やさぬよう、地域に必要とされる農家でありたいですね」と話す板橋兄弟が手がける完熟梨をぜひご賞味ください。