園主の篠田さんは今から20年前、当時勤めていた会社を早期退職し、西宮市から実家のある西脇市に帰ってきました。「長男として生まれて実家の跡を継がないといけない」という責任感と「いまが辞め時かな」という仕事の役職定年を控えたタイミングでした。けれどこの時はまだ、実家に帰って農業をするとは思いもしていなかったそうです。
幼い頃に目の当たりにしてきた農業はしんどくて、あんまり好きだとは思えなかったそう。しかし、これから何をして生計を立てていこうかと情報収集をする中で「兵庫県のハウスいちご高設栽培の確立」についての新聞記事をたまたま見つけました。その記事が面白く、また計画性もある農業経営だったことから一念発起。最後には奥様からの一押しもあり、新規就農を決意しました。
その後は県の新品種改良に栽培者として協力してきました。そうしてできたうちの一つが「あまクイーン」という品種。いちごらしい可愛いフォルムに、まろやかな甘さが際立つ贅沢ないちごです。しかしあまクイーンは繊細で、安定した栽培をするには相応の技術も必要。なかなか生産者が増えていかない現状もあります。
そうした中で「篠田いちご園」では研修生の受け入れも多数行い、若手の育成や栽培技術の向上への取り組みも行っています。篠田さんはこれまでの活動を認められ、令和3年12月には、兵庫県農業賞「いちご高設栽培の先駆的導入と後継者育成の功績」を授与されました。また、兵庫県ハウスいちご研究会の会長(現相談役)なども勤めています。
「農業を続けるにあたって大事なことは基本的なことをきっちり続けること。何かあれば基本に立ち戻ること。そして周囲の人々との積極的なコミュニケーションだと思っています」と篠田さん。
「『篠田いちご園』では、今後も若手農業者がやりがいと繋がりをもって農業を続けられるよう、精一杯サポートを考えながら、体力、知力、気力が続く限り農業を続けていきたいと思っています」と話してくれました。