日常の食卓を、ちょっぴり輝かせるお塩

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諸国良品

2015/01/30

「この食卓で、今のところ買わなければいけないのは酒だけですね」。ゆったりと笑う蒲夫妻の食卓に並んだのは、庭でとれた新鮮な野菜を使ったかき揚げやサラダに漬け物や煮物……、そして、絶品塩むすび。料理に欠かせない塩を作り、畑や田んぼで作物を育てる蒲さんたちにとって、食卓のほぼすべてが自給できています。瀬戸内海の海水のみを使い、約40年ぶりに島に昔ながらの塩づくりを復活させたのが、蒲夫妻の『御塩』でした。

小豆島では古くから塩作りが盛んで、江戸時代には幕府への献上品にもなっていました。しかし、特産は加工品である醤油へと移行していき、いつしか塩屋は島から消えてしまいました。

そして、かれこれ40年ぶりに塩作りを復活させたのが、蒲敏樹さんでした。きっかけは、「瀬戸内海をじっと見ていたら、中学の自由研究で行った塩作りを思い出したんです」。

夏場は40℃を越す小屋の中。過酷な状況下でも、24時間365日火を炊き続けることによって窯自体にミネラルやカルシウムなどが付着し、白い塩を生み出すようになるのだそう。

敏樹さんは、1日に何度も窯の様子を見て、浮いてきたカルシウムを取り除きます。「口に入れても溶けないので、取り除かなければもさもさとした悪い舌触りになってしまうんです」。

「何にもないんだけどね」、と言いながら台所に立つ奥さん・和美さんの手にかかると、ニンジンの葉だって塩むすびだって、時間をかけて頂きたくなる“ごちそう”だと、はっとします。

丸みを帯びた舌触りのお塩。“当たり前”のおむすびも、ちょっぴりいつもと違った表情を見せる。『御塩』の密やかなマジックは、ふたりの人柄が生み出すものなのでしょうか。

生産者紹介

  • 供給者画像:生産者名 蒲敏樹・和美さん夫妻

    生産者名 蒲敏樹・和美さん夫妻 詳細

    穏やかな海を求めて移住先を探したら、小豆島に来たというおふたり。釣りや田んぼ、畑や猟に関する知恵を地元の「師匠」から受け継ぎ、食卓のほぼすべてを自給する暮らしには、たくさんの知恵が詰まっています。「この島には何でもあるけど、娯楽はないよね」と、敏樹さん。「確かに無いけど、やりたいことをやっているから、全然退屈したことないよね」そう、和美さんが微笑む。ふたりの人柄が、お塩にあらわれているようです。