「Ome Farm」がスタートしたのは2015年のこと。代表の太田太さんは農業を始めるにあたり、長らく暮らしていたニューヨークでは身近なオーガニック農法に自然とたどり着いたといいます。「NYでは農家さんが直接野菜を販売するファーマーズマーケットが週3回くらい開かれていて、鮮度が高く、農薬などを使っていない野菜が気軽に手に入りました」
太田さんたちはまず、三重県の「土の匠」のもとで、約1年かけて土づくりを習得。余った野菜くずに米ぬかやもみ殻などを加えて半年以上発酵させ、堆肥を自給していっています。「理想は落葉や枯れ枝が自然に分解される山の環境に近い土。余計なものを入れなくても、自然の循環のなかで植物は育つんです」
また、農薬耐性があったり一世代交配の種は極力使わずに、自分たちで種採りをするのも「Ome Farm」のこだわりです。その昔は農家さんが種を採るのは普通のことでしたが、今では品種改良された育ちやすい種を買って使うのが一般的ななか、稀少な活動といえます。
そんな彼らが育てるのは、スーパーにはあまり並ばない野菜たち。「日本は食糧廃棄率が高すぎます。選ぶ人が楽しくなるような“モテる”野菜だけを作るようにしています。そうすれば自ずと廃棄するものも減らせますから」と太田さんは話します。
なお、「Ome Farm」の畑は青梅市内の9カ所に点在していますが、少しでも場所が変わると、土の質に風の強さや湿度、日当たりなどの環境は大きく変わるといいます。種を蒔いてきちんと発芽するかなど見極め、適材適所で年間を通しておよそ40品目の野菜を育てています。
今後の目標は「近隣と有機農業のコミュニティを作りたい」と語る太田さん。現に、「Ome Farm」が青梅で農業を始めて以降、周りにも農薬を使わずに栽培をする農家さんが徐々に増えつつあり、農耕を通した東京のまちづくりがスタートしています。