諸国良品
日本人による、日本人のための帽子づくり
2016/04/15
水運に恵まれ肥沃な土壌で麦の栽培が盛んだった埼玉県の春日部市では、明治30年頃から帽子づくりが盛んです。農作業用の麦わら帽子を中心に作り、最盛期には数十軒ほどの帽子屋さんがありましたが、現在も帽子作りを行っているのは3軒ほどに。明治期より130年にわたり麦わら帽子を作り続ける田中帽子店では、様々なニーズに応えられる体制で、日本人の頭に合わせた帽子を作り続けています。
実は日本人と外国人で頭の形は異なるそう。日本人は丸型、欧米人は卵型なのです。現在、木型を用いて帽子づくりをしている帽子店の存在は稀少ですが、田中帽子店では日本人用の木型で帽子を作っています。そのため、被った際のフィット感が抜群です。
カタカタカタ…という小気味良い音のする工房では、ベテラン職人たちが軽快に手を動かしています。すべてハンドメイドで作られ、使われている機械も創業以来大切に使い続けています。
ちなみに、麦わら帽子の原料は、主に麦の茎部分を編んだ「麦わら真田(さなだ)」というもの。もともと麦の産地だった春日部では、農家の副業として麦わら真田を作り、帽子の原料として海外へ輸出していました。
その後、帽子づくりが産業化した春日部では、空気が乾燥した冬の時期に、縫い上げた帽子を天日干しにする風景が風物詩となりました。湿気を取り除くことで、帽子の編み目が引き締まり、このひと手間が型くずれしにくく、長く使える帽子に仕上げるのです。