奈良県といえば、東大寺の大仏や鹿が有名ですが、今や『古都華』も立派な名産品。古都華は、2010年の平城遷都1300年祭をきっかけに、古都・奈良に新しい華を添えられるようにという意味が込められ、翌年2011年に品種登録されたいちごです。
古都華の特長には、他のいちごと比べて甘め(平均糖度12~13度)で、酸味のバランスがよく、形が整っていることが挙げられます。「古都華はお客さんのニーズに100%答えたようないちご。普通は生産者のニーズともバランスがいいものを開発するんですけど、当時は奈良もえらい品種開発しよったなって」そう話してくれたのは生産者の萩原さん。
生産者の方にとってメリットになるのは、つくりやすさや採れる量の多さ。しかし、古都華はその逆で取れる量が少ない品種。他のいちごと比べても特に育てにくいのだそうです。
「環境整備して、しっかり管理していても100%思い通りにはならない。いちごを生産しているというよりは、彼らが育つのをお手伝いしているような感じやね」
去年採れたいちごから苗を採るのが本来の方法ですが、そうするとクローンの苗に親の苗が持っている病気が移るリスクも高いのだとか。萩原いちご農園では、たとえ時間や手間がかかっても、食べる人が笑顔になるようないちごをつくれるよう、毎年新しい苗を育てているそうです。
「クリスマスに採れるようになったのも、実は奈良の技術開発がきっかけなんですよ。内緒にしておけばいいのに、奈良の人は優しいから、みんなにこの技術を教えちゃったんで、全国にこの技術が広まったんですよね。技術の積み重ねや生産者のノウハウも古くからあるので、古都華のように育てるのが難しい品種でも、つくってみよう、改良してみようと考えられるのも奈良県だからじゃないかな」と萩原さんは語ります。
「農家って、この場所って決めたら一生ここから動かないわけですよ。ほんまの意味での地域密着産業で。こうしていちご農家としての生業をやっていくと地域に何か還元していけるようなことを進んでやっていくべきではないかなと思っています」
紹介記事:無印良品スタッフ 宮本さん