山形県、南陽市。山々に囲まれた盆地特有の気候で、冬は一面雪に覆われるこの地域は、きれいな水に恵まれています。昼暖かく、夜冷え込む、寒暖の差が激しいこの気候の厳しさも、おいしい作物が育つ秘訣の一つといわれています。
そんな土地で、代々農業を営むのが「平農園」です。現在は6代目の一晃さんご夫妻が農園を引き継ぎ、りんごとさくらんぼを中心にした果樹と、訳16ヘクタールに及ぶ田んぼでお米をつくっています。
奥さんの良子さんはもともと東京育ち。出産し東京で子育てしていた頃、一晃さんの実家から送られてくる農産物を食べた幼い娘が「おいしいね」と笑顔になったことがきっかけで、農業を継ぐことに繋がっていったんだそうです。実際に従事してみると、農業は気候変動や価格の上下など、悩みは尽きないそうですが、「皆さんにもこのおいしさを知って欲しいという思いから、作物と向き合い、育てています」と話します。
かつてはぶどう栽培がメインだったところ、先代が桃栽培に切り替えたそうですが、ぶどうの後の土壌では桃は上手く育たなかったそうです。一晃さんが引き継いだ後は、戦前からあるさくらんぼの園地を守るべく、近年の気候変動に耐えられる高温に強い品種を植えるなど、園地の改植などを手掛けています。
「さくらんぼも甘くておいしいんですが、それ以上に僕の性に合っていたのがりんご栽培でした」と、一晃さんは笑顔で話します。
「りんごは酸っぱいものから甘いもの、サクサクなものから硬いものまで本当にさまざまな品種があるんです。生食向けはもちろん、ジュースなどにも加工もできるからおもしろいんです!」と、りんごの奥深さの虜になっていきました。今では40種を超える品種を育てていて、日本ではあまり作られていない珍しい品種まで手掛けるようになっています。それらを、あまり知られていない品種との出合いを生み出せるよう「夏りんご」「秋りんご」「冬りんご」として、生食用やジュースとして展開していっています。
「もちろん毎年、同じおいしさや収量を追求するんですが、気候変動もあるなか自然の産物なんで、まったく同じには仕上がらないんですよね。それらも含めて味わって頂けたらうれしいです」と語る平農園さんでは、「きまぐれりんごジュース」と称した、農園の旬のりんごを絞って仕立てた限定味も出しています。当然、時期や年によって異なることから、りんごジュースはいつも同じ味、と思っていたことを間違えだと認識させてくれる味わいが口いっぱいに広がります。ぜひお試しいただきたい逸品です。