代表の柳沢卓矢さんと農園長の折井祐介さんは、共に原村生まれの同級生。親同士が友人ということもあり、生まれたときから一緒に育ってきたという幼馴染です。青春時代にレゲエにハマり、2人でレゲエチームを組んでいたこともあったそう。そんな2人が原村に戻ることを決め、始めたのが農業でした。
「祖父母が辞めるタイミングで畑を引き継ぎました。最初はさまざまな野菜をつくっていたんですが、あるとき近所の農家さんが作ったとうもろこしを畑で生で食べさせてもらう機会がありました。その甘さとはじけるような食感に衝撃を受けました」(折井さん)
原村育ちの2人にとって野菜はおいしいのが当たり前。しかし、そのとうもろこしの味は初めての体験。感動して「自分たちが伝えたいのはこの味だ!」と、それ以降、生で食べられるとうもろこしを専門に育てるようになりました。
原村には、八ヶ岳から流れる潤沢な清涼水と、活火山の麓ならではの豊富な栄養の土、多様な種類の木々から溢れる葉土があります。また、標高1,000メートル以上の高原地帯で、昼夜の寒暖差が15度、日照時間や晴天率が全国でも群を抜いて高いという、とうもろこし栽培にうってつけの条件が揃っています。
また、とうもろこしは鮮度が命の野菜です。ハマラノーエンでは標高の異なる畑に、時期を細かくズラして植え付けをすることで、毎日甘さのピークに達したとうもろこしを約3ヶ月という比較的長い期間において、リレー形式で収穫できるよう実現。「お客様に最高の状態で食べてほしい」と、早朝に収穫した鮮度抜群なものを当日発送しています。
農業を始めた当初は市場へ出荷していたそうですが、消費者の顔が見えず、モチベーションが上がらずモヤモヤしていたといいます。折井さんも柳沢さんも就農前は営業マンでした。持ち前の交渉力を生かして、観光施設などへ直談判して、対面で販売できる場所を探したそう。
「お客様のリアルな反応を見れたり、自分たちに興味を守ってくれる人がいることが分かって、農業をやっていてよかったなと思うようになりました。地元の農家さんたちは寡黙な人がほとんど。もしかしたら営業出身の自分たちにしかできないことは“しゃべれる農家”として、野菜の味や想いをきちんと伝えることかもしれないということに行き着きました」(柳沢さん)
2023年夏には直売所兼体験農園である「ハマラハウス」を原村にオープン。前職で旅行代理店に勤めていた折井さんが思い描いていた「農業×観光」のひとつの形です。
「“超”がつくほどにド新鮮な生とうもろこしを畑の横で食べてもらいたい」「気軽に農を感じる場所として、第2のふるさとのような場所にしてもらいたい」と、苗植え体験や収穫体験をはじめとするイベントを実施するなど、原村に人を呼ぶ仕掛けも行っています。