果樹園の11代目に生まれた顕太朗さんは、東京の大学で経営を学び一度東京で就職。その後、2008年に実家に戻り、家業の果樹園に携わるように。それまでは市場に出荷していたところ、このままでは経営が立ち行かなくなると危機感を持ち、お客さまに直接果物を届ける直販に切り替えました。2019年には株式会社化し、それまで別で働いていた妻の由貴さんも営業やブランディングに従事するようになったといいます。
そのタイミングで決めたのが「農業にもっと“わくわく”を」というコンセプト。我が子たちが畑や自然のなかで遊ぶ姿から、毎日が好奇心いっぱいでワクワクすることの大切さや楽しんで取り組む姿勢に、生きていく上で大切なことを気付かされたそうです。
また、将来を担う子どもたちに「自然の営みの素晴らしさを感じてほしい。農家の楽しさを伝えたい」と顕太朗さんは話します。
そんな中川果樹園が大切にしているのが「主人公は“樹”である」ということ。黒ボクと呼ばれる肥沃な土地で、肥料は一切入れずに、りんご本来の樹の力で実を付けさせる。除草剤を使わずに、あえて雑草を生やして、それが枯れて分解され栄養に。
「自然の営みにはかなわないので、それに逆らわない形で、私たちは少しでも樹が丈夫に育ってくれるようにちょっとだけ手助けするだけです」と顕太朗さん。
そして、果実はすべて樹上で完熟してから収穫しています。それは家族で小規模運営しているからできること。また、果実は子どもと同じで「個性の塊」とも話します。
「毎年同じものができるわけではなく、樹一本ごと、枝ごとにも違うので、一つひとつの果実の違いを味わってほしいですね」
個性あるりんごといえば、豪雪地帯の雪を活用した「雪室りんご」もならではのもの。りんごが大好きなお客さまから「できるだけ長い期間りんごを食べたい!」という要望に応えらえるように商品化しました。
りんごは本来時間が経てば経つほど、水分が抜け、蜜も消費されてしまうのですが、年中山にある天然雪を使った雪室に、収穫してすぐのりんごを入れておくことで、りんごが休眠状態に。雪室によって高湿度と低温が保たれた状態で保存でき、酸味が抜け、甘みが強く感じられるようになるといいます。
我が子のように愛情をたっぷりかけて育てられている、中川果樹園の果物たち。外見よりも味を重視しており、大好きな子どもたちが食べたときにパァと喜ぶ顔を想像しながら、安心安全な果物づくりを心がけています。
「毎日冒険心とワクワク感で溢れた新たな農家の形を創造するのが、私たちの役割かなと思っています」と由貴さん。
中川果樹園から一番おいしい時期に届く、果実の贈り物をぜひご賞味ください。