「顔の見える林業がしたい。自分たちが伐り出した木を、自分たちの手で加工し、街に届けたい」そんな想いで代表の青木亮輔さんが東京都森林組合を退職し、東京チェンソーズを創業したのは2006年のこと。当時のメンバーは4人、組合の下請け仕事からのスタートでした。以来コツコツと山主から直接仕事をもらうようになり、徐々に想いに賛同したメンバーも増えていき、地元に根差した企業としての地位を確立していきます。
かつての日本では、家や日用品、燃料に至るまで、生活に必要なものは山から供給されていました。木はとても大切に扱われ、家の土台、柱、梁はもちろんのこと、丁寧に剥いた皮は捨てることなく、屋根や壁の材料として使われました。山に残されていた細い枝も、生活の煮炊きのために拾って持ち帰られていたため、山はいつも綺麗だったそうです。
しかし、戦後になると復興の建築需要に応えるために、木材は効率化を目的に規格化され、また、電気やガスなどの普及に伴い炭や薪は必要なくなり、山には不要な材が残されるようになりました。そんな中で、東京チェンソーズは取り残されてしまった素材を見つめ直す試みを始めました。その一つが「森デリバリー」です。
建築材料などにならない細い木や枝、木材のかけらなどを都会のマルシェなどのイベントに届ける取り組みです。それらを使って、木のスプーンや木ベラなど日常で使いやすいものからブンブンゴマなど遊びに使えるものまでを作るワークショップなどを展開。未来の東京を創る子供たちに木の心地よさを伝え、「木のある暮らし」を提案していっています。
ここでご紹介していくものも、木から採れる様々な素材です。規格化の流れの中で取り残されてしまった木材を見つめ直し、一つひとつご提案しています。もちろん、使い方は皆さん次第。様々なアイディアを巡らせていただき、一緒に木材の使い方を、林業の未来を考えていって頂けますと幸いです。