自分でつくったものを、自分で自信を持って販売するために…

自分でつくったものを、自分で自信を持って販売するために…

諸国良品

2020/11/13

柑橘の産地というと、和歌山・愛媛・静岡などが有名ですが、関東以西の温暖で日当たりの良い沿岸部には、所々に産地が点在しています。福岡県の新宮町もその一つ。博多からほど近いエリアですが、かつては天皇家への「献上みかん」の産地で、数百軒ほどのみかん農家が軒を連ねていたといいます。都市化の波もあり、今では30軒ほどまで減少しましたが、「いわくま果樹園」も昔から続く柑橘農家の一つ。大規模産地とは一線を画し、温州みかんを始め、レモンやライム、いちじくやすももなど、多品種少ロットながら丁寧な農業を営んでいます。
 
 

少なくとも4代前からこの地でみかんを栽培していたという、いわくま果樹園の現園主を担うのは岩隈研司さん。3男として生まれ、長男も次男も普通に企業勤めの道を選ぶなか、研司さんも大学卒業後、普通に就職し営業職として5年間従事していたそうです。ただ、その時に感じた違和感が、後に農業の道を選ぶ理由になったといいます。
「誰かがつくったものだと、自信を持って営業できなかったんですよね」

営業として失格と笑う岩隈さんは、その後、日本を離れ、ニューヨークで語学学校に通いながら2年間ほど暮らします。その時に、現地で訪れたFarmer's Marketに衝撃を受けたといいます。
「農家が直接、お客さんに対峙して販売しているんですよね。日本ではまだ市場を介してスーパーや八百屋で買うのが一般的だった時代。とても新鮮に映ったんです」

 

「自分でつくったものを、自分で自信を持って販売したい」
そう考えるようになった岩隈さんは帰国後、家業である農家を継ぐことにを決意。それまでは市場に卸すだけだったところ、近隣の若手農家たちとタッグを組んで、飲食店へ営業を掛けたりマルシェなどのイベントへ出店するなどして、徐々に販路を広げていきました。

栽培法についても、和歌山の柑橘の篤農家の元へ研修に訪れるなど、研究に余念がありません。柑橘は黙っていても実を付けてくれますが、美味しい果実に育てるためには、木の整理・剪定や摘果・摘蕾が大切なことや、肥料も即効性のある化成肥料ではなく、ぼかし堆肥という自然由来の発酵肥料にすることで、根をしっかり張らせることが重要ということも分かってきたといいます。

 

「先代から受け継いできた果樹を、もっともっと美味しくしていきたい。そのために、少しずつ改良していって、自分なりの果樹をつくっていきたいですね」
そう話す岩隈さんの言葉には、確固たる自信のようなものが漲っていました。

生産者紹介

  • いわくま果樹園

    生産者名 いわくま果樹園 詳細

    福岡県糟屋郡新宮町で、みかんやレモン、ライムなどの柑橘や、いちじく、すももなどを栽培する果樹園。糟屋郡の若手農家たちで組織した「かすやグンジーズ」というチームで、飲食店への直接卸しや、マルシェイベントへの出店など、積極的に販路開拓に従事。同時に、美味しい果実をつくるための栽培法の研究に余念がない。

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