少なくとも4代前からこの地でみかんを栽培していたという、いわくま果樹園の現園主を担うのは岩隈研司さん。3男として生まれ、長男も次男も普通に企業勤めの道を選ぶなか、研司さんも大学卒業後、普通に就職し営業職として5年間従事していたそうです。ただ、その時に感じた違和感が、後に農業の道を選ぶ理由になったといいます。
「誰かがつくったものだと、自信を持って営業できなかったんですよね」
営業として失格と笑う岩隈さんは、その後、日本を離れ、ニューヨークで語学学校に通いながら2年間ほど暮らします。その時に、現地で訪れたFarmer's Marketに衝撃を受けたといいます。
「農家が直接、お客さんに対峙して販売しているんですよね。日本ではまだ市場を介してスーパーや八百屋で買うのが一般的だった時代。とても新鮮に映ったんです」
「自分でつくったものを、自分で自信を持って販売したい」
そう考えるようになった岩隈さんは帰国後、家業である農家を継ぐことにを決意。それまでは市場に卸すだけだったところ、近隣の若手農家たちとタッグを組んで、飲食店へ営業を掛けたりマルシェなどのイベントへ出店するなどして、徐々に販路を広げていきました。
栽培法についても、和歌山の柑橘の篤農家の元へ研修に訪れるなど、研究に余念がありません。柑橘は黙っていても実を付けてくれますが、美味しい果実に育てるためには、木の整理・剪定や摘果・摘蕾が大切なことや、肥料も即効性のある化成肥料ではなく、ぼかし堆肥という自然由来の発酵肥料にすることで、根をしっかり張らせることが重要ということも分かってきたといいます。
「先代から受け継いできた果樹を、もっともっと美味しくしていきたい。そのために、少しずつ改良していって、自分なりの果樹をつくっていきたいですね」
そう話す岩隈さんの言葉には、確固たる自信のようなものが漲っていました。