「このメロンは私が農業始めた原点なんでね。やめられないんです」そう方波見さんが話すのはアールスメロンという品種で、一株から一玉しか採らないメロン。方波見さんのところでは珍しい赤肉系を手掛けており、夏場のお中元など贈答用に用いられるそうです。「このアールスメロン(別名マスクメロン)は網目模様が綺麗でしょ。これ実はひび割れなんですよ。メロンは果実の内部の方が微妙に成長が早いから、皮の方がひび割れて中の分泌液が固まると網目模様になるんです」
それはメロンの基本と話す方波見さんですが、栽培法の探求にも余念がありません。先述のBMW技術とはB=バクテリア、M=ミネラル、W=ウォーターの略で、農畜産物の排せつ物や残さなどを、バクテリアの力で「生き物によい水、よい土」に変える技術のことで、方波見農園の土づくりのベースとなっています。それだけならず、ビール粕・もみがら・牛糞・おからなどを独自の配合で発酵させた肥料も土に還元。その考え方の基本には、近年注目を集めているBLOF理論があります。
BLOFとはBiological Farming(バイオロジカルファーミング)の略で、科学的・論理的に有機栽培を行う理論のこと。経験と勘に頼りがちな農業において、科学的アプローチから構築された再現性のある栽培理論で、日本のみならず中国、アフリカなど海外でも実践する農家が増えてきています。それを咀嚼しながら、より甘く、より香り高くするには何が必要か、日々研究しているのです。
ただ、どれだけ綿密に計画を立て実行しても、天気や自然の変化にはかなわないと方波見さんは話します。もちろんメロンが病気や害虫にやられそうになったら、必要な処置を施します。「どこか子育てと通じるものがあるかもしれません。のびのび健やかに育つ環境を整えてあげるのが私たちの役目です。手塩にかけて育てたメロンが、甘い、香り高いといってもらえるのが何よりもの誉め言葉ですね。そのために頑張ってます」
そんな方波見さんのつくる数あるメロン。茨城県が10年以上の歳月をかけ400通り以上の掛け合わせを経た青肉系の「イバラキング」は、さわやかな甘さと滑らかな肉質、上品な香りが特徴のメロンです。また、赤肉系の「むつみレッド」は方波見農園オリジナルの品種で、しっかりとした歯ごたえと、まろやかな甘み、豊かな果汁が楽しめます。想いと理論に裏打ちされた味わいを是非ご賞味ください。