誰かのためはみんなのため
胸のボリュームをおさえたい。インナーの新しい役割

2026/02/04
素材や、かたち、配色…。無印良品の商品には、誰かの“困った”に寄り添う工夫が込められている事があります。最初は「誰かのため」を原点にしたものづくりが、やがてみんなの安心や快適へとつながっていく。そんな商品の誕生ストーリーに迫ります。第2回目は、2025年2月に販売するやいなや、大きな反響があり、2026年1月には、お客さまの声をもとに改良を重ねて再登場した胸のボリュームを目立ちにくくする「ブラタンクトップ」についてのお話です。
(取材と文・オカモトノブコ イラスト・村松佑樹)
“女性らしさ”をすべての女性が求めているわけではない
2025年2月の発売からSNSでも大きな話題を集め、わずか1ヶ月ちょっとでほぼ完売となった「胸のボリュームをおさえるブラタンクトップ」。
ブラジャーの代わりとしても着用いただける「ハーフ丈」をラインナップに加え、お客さまからの声をもとに改良し、2026年1月に再登場しました。

これほど多くの支持を集めた理由とは…? 婦人インナーの商品開発を担当する田中さんと、デザイン室の志賀さんに、その背景と開発に込めた思いを聞きました。

「正直なところ、最初はここまで反響があると思っていなかったんです。けれどWebメディアに取り上げられたり、“次はいつ出るの?”といった声も多くいただいて」と、田中さんが振り返ります。
では、そもそも開発のスタート地点はどんなところにあったのでしょうか?
「実は“胸のボリュームをおさえる”という以前に、いわゆる“女性らしさ”をすべての女性が求めているのだろうか…? という疑問があって。ジェンダーニュートラルという言葉も広がる中、“女性らしさ”を強調しないインナーをつくれないか、という考えがはじまりとしてあったんです。
実際、自分のまわりにも胸が大きいことに悩んでいる女性が少なからずいて、そういった方のニーズに答えるような商品をつくりたいと思いました」と、デザイナーの志賀さん。
さらにこうしたアイデアが生まれた背景には、マイノリティの視点も大切にする無印良品ならではのものづくりの姿勢が。
「大前提として、誰もが使いやすい、ひとと暮らしに寄り添ったものづくりは大切にしています。ただ、それだけではなく、誰かが必要としているならば、たとえその数が大きくなかったとしても商品に誠実に向き合う姿勢が無印良品ならではだと思います。
実は、2人とも入社して3年ほどですが、腕を上げたり、背中側に手を回しにくい方などが、簡単に着脱できる前開きインナーをはじめ、マイノリティの方の声にも答えるような企業姿勢には、正直驚きました」
そんな背景があと押しとなり、「ジェンダーニュートラルなインナーをつくりたい」との思いを強くした志賀さん。
かたちもブラジャーやキャミソールなどではなく、タンクトップだったのにも理由があるといいます。
「ブラが透けて見えないようにTシャツの下にもインナーを着る女性は多いことにくわえ、“女性の象徴”であるブラを着けること自体に、抵抗がある方もいると聞いて。
であれば、女性のブラに使われることが多いレース素材などではなく、綿混素材で、ユニセックス感のあるシンプルなかたちのタンクトップが良いのではと考えました」
既存の価値観にとらわれない発想が、大きなニーズへと広がっていく
こうして始まったブラタンクトップの開発では、「胸のボリュームをおさえる」と「苦しさを感じさせない」を両立させるため、さまざまな工夫と改良が重ねられたのだそう。
「胸のパッドは、これまで無印良品にはなかった平坦なかたちのものを特別に開発してもらいました。さらにパッドの前面にはパワーネットという伸縮性の強い生地を重ね、さらし状に背中までぐるっと、広い面積で力を分散しながら胸をおさえつけられる構造になっています」

さらに素肌に直接触れるインナーだからこそ、着心地にもあらゆる工夫が。
「これは無印良品のインナーすべてに言えることですが、無理なく楽に身につけられて、着心地が良い天然由来の素材を使うというのが基本にあって。
このタンクトップでも肌に当たる部分は綿混の生地を使用したり、脇も縫い目のないシームレスなデザインにすることで、肌あたりの良さを追求しました。

また、胸の下側を支えるアンダーゴムもすべて綿混の生地にくるんで、合成繊維が肌に直接当たらないような工夫を細部にもほどこしています」

多くの人にフィットするデザインを開発するにあたっては、さまざまな女性の意見をヒアリングしたといいます。
「胸のサイズやかたち、お悩みも、人によって千差万別なんです。実際には30人くらいに試着してもらい、5~6回ほど改良を重ねることで、締め付けが強くて苦しいという声も最終的には解消することができました」
こうして完成したブラタンクトップ。実際に、お客さまからはどんな反応があったのでしょうか?
「ちょっと厚手の透けにくい素材なので、下着としてだけではなく、シャツの前を開けてインナーを見せたり、夏の時期はサラっとこれ1枚だけを身に着けたり。Aラインのようにストンと落ちるシルエットのワンピースを着るときも、胸のボリュームをおさえることでボディラインがすっきり見える、といったお声をいただきました。
また、着物を着用する方からの反応も好調でした。もともと、着物着用時の使用は想定をしていて、後ろの襟ぐりを広く取ったデザインにしていたのです。
ほかにも、意外なところでは、男性キャラの衣装を着るコスプレーヤーの方々からの反応も。ジェンダー問わず、胸を強調したくないニーズはこんなにいろいろあるんだ…というのは、開発チームにとっても新しい発見でした」
そして、今回はカラーや形を工夫を重ね、使い手により寄り添ったデザインにリニューアル。
「お客様からの声をもとに、L、XL、XXLサイズは前のネックの開きを浅くしてより胸をカバーできるようにしたことに加え、左右の肩紐の間隔を少し狭めて、なで肩の方でもずりおちにくくしました」

さらに、重ね着したくない暑い時期にも使いやすい『ハーフ丈』もつくりました。一般的なブラジャーよりも長めの着丈で、トップスから透けても下着感がでにくいようにしています。
いずれも、透けにくいライトベージュを新色として追加。多くの方に使いやすさを実感していただけたら嬉しいですね。

「胸のボリュームをおさえるブラタンクトップ」以外にも、乳がん患者の方のための「綿混胸パッド」(2026年5月再販予定)、医療従事者・患者様からの声を反映した「肌あたりがやさしい前開きブラジャー」など、たとえニーズは多くなかったとしても、大切に育てた商品が無印良品にはたくさんあります。
既存の価値観にとらわれることなく、商品が本当に必要とする方に届いて、お困りごとが安心感へと変わっていく。それは開発を担当する私たちにとっても、すごくやりがいのあることだと感じています」
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