誰かのためはみんなのため
大切な情報を見失わない。困りごとを防ぐ、暮らしのノートと収納

2025/11/13
(取材と文・オカモトノブコ イラスト・村松佑樹)
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パッと目に入って記憶に残る“暮らしのノート”
ついつい忘れてしまったり、見当たらなくなったり……。無印良品には、日々のそんな“記憶”や“記録”を保存したり、整理したりできるアイテムがさまざまにあります。
今回は生活雑貨部企画デザイン課でステーショナリーを担当し、保存や整理に関するアイデア商品を多数生み出してきた丁野さんに、発想の原点、開発までのプロセスを聞きました。
「スタート地点は、日々の生活に関わる情報を忘れやすい、覚えられないといった自身の困りごとでした。メモはするんですが、それ自体がどこへ行ったか分からなくなったり。携帯のメモもアラーム通知を使わない限り、存在自体を忘れてしまいがちです。
またデジタルがこれだけ普及した時代でも、覚えておきたいことをパッと書きとめるのはやっぱり紙が便利。そこでデザインチームでは“メモやふせんなども含めてすべてノートである”という考えのもと、記録にまつわる困りごとを探しながら、“暮らしのノート”というテーマで商品を開発していきました」
そのひとつが、丁野さん自身の読書体験から生まれた『書きこめるしおり インデックス付』。
「本や漫画で登場人物が増えてくると、だんだん覚えられなくなることが多くて。以前は、普通のふせんを使って相関関係を書きとめたりしていたんですが、もっと使いやすくできないかなと考えました。
そこで、よく新刊本にはさまっている、スリップとも呼ばれる短冊のかたちからヒントを得て、本にはさんで読みながら書き込める、しおり型のメモというアイデアが生まれたんです」

ほかにも“暮らしのノート”として生まれたアイテムの中には、家や仕事場の“掲示板”的な役割を担う、ありそうでなかったこんなメモたちが。
「大切な情報は、すぐ視界に入るところに入れておきたいですよね。そしてその場所は、家族構成や生活スタイルによっても変わってくると思います。
例えば『フック穴付きメモパッド 日めくりタイプ』は玄関まわりやキッチンなど、みんなが見える場所に壁かけして。また、メモそのものが自立する『卓上用メモ』は、机の上など目につきやすい場所に置いて使えるようにしました」


こうして生まれた“暮らしのノート”の数々。丁野さんにとって、紙に書く“アナログ”の良さはどんなところにあるのでしょうか?
「デジタルが便利なのはもちろんですが、自分で探しに行かないと情報が目につかないのに対して、パッと一覧で目に入りやすく、記憶に残りやすいのもメリットだと思います。
そして、ちょっと手紙に近いというか。自分にも、他者に向けても、情緒的な情報も何となく伝わるというのも、手書きならではの良さですよね」
人々の暮らしを観ることで、アイデアは育つ
ほかにも暮らしの中で整理しづらい情報の“困った”を解決するアイテムとして丁野さんが開発を担当した『マグネット付き収納ケース』が、2025年11月に新登場。

「デザインチーム内で会話をしていたときに、『デジタル社会になった今も、封書やハガキ、チラシといった紙の情報はなくならないよね』という話題が上がりました。
私たちは商品開発をする際“オブザベーション”といわれる行動観察調査を行っていて、紙の情報をみなさんどうやって管理しているのか分析しようと、担当者をはじめ、その家族と友人などに、家の中のあちこちを、ありのままに撮ってもらった写真を集めてオブザベーションをしました。
その中から見えてきたのは、情報を冷蔵庫に貼り付けて“家の掲示板”のようにしている家がとても多いということ。ならばみんなが求める居場所に、ゆるくまとめて紙類を整理できる場所をつくろう、と開発されたのがこの商品です。
試作では白やクラフトを使ってみたのですが、中が見えないと、2年くらい放置しちゃうよね(笑)、となって。結果、情報がちゃんと目に入るクリアな素材のケースになりました」

紙類を整理するアイテムとしてほかにも、お客さまから「こんなのが欲しかった!」との声が多く届いたのが『リフィルノート 本体(A5)』と組み合わせて使える『リフィルノート リフィル 記録ができる家計簿封筒』と『リフィルノート リフィル 記録ができる窓付き封筒』。

「『家計簿封筒」はバラバラになったり、保管しにくいレシートを記録・整理しながら管理するのに役立ちます。
また、思い出のチケットやリーフレットなど、日々の生活や旅行でも捨てられない紙類って意外と多いのではないでしょうか。『記録ができる窓付き封筒』なら、これらをまとめて収納でき、手書きの言葉を書き添えることも」
日々のちょっとした記録や整理に便利な商品の数々。丁野さんが、商品開発に込めた思いとは?
「自分自身、忘れっぽかったり、本連載1回目のテーマである色覚多様性の(赤色を感じにくい)当事者なんです。実体験を通して、同じ悩みで困っている人が数%でもいるなら、その困りごとに寄り添うような商品が無印良品にあっても良いのでは……と感じるようになりました。
用途を限定せず、使い手自身が自由に考えて使える余白のある商品も魅力的だけれど、自分のように“ちょっと不器用な人”“何かが苦手な人”でも使いやすいように、ある程度、方向性が指し示されている。そんな“少しだけのお節介”が、いつも開発テーマの裏にはあるような気がしています」
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