レビュー
まるで夢の結晶。ファンの声から生まれた4種類の新作バウム
2026/08/21
日本に住み始めて20年。イタリア料理も、日本のグルメもこよなく愛するマッシさんに、「みんなでつくるバウム 2026」から生まれた4種類のバウム※を試してもらいました。
(文・写真/マッシミリアーノ スガイ)
※2026年8月26日(水)より全国発売予定です(発売日は前後する場合があります)
エッセイスト。1983年イタリア北部ピエモンテ州生まれ。2007年に日本に移住し、日伊通訳者の経験を経てからフードとライフスタイルライターとして活動。
日本食文化の面白さや魅力、グルメの紹介などの記事とエッセイを年間約400本執筆。
著書に『イタリア紳士、うまいと叫ぶ』(亜紀書房)などがある。
朝の光が部屋を満たし始めるころ、僕の一日はコーヒーメーカーが奏でる「コトコト」という音で幕を開ける。
ゆったりとした朝の心をざわつかせたのは、無印良品の「みんなでつくるバウム」のニュースだ。
無印良品が、ファンの「これが食べたい!」という熱量あふれる声に耳を傾け、本当に商品化してしまったという。いまだに信じられないような、けれど最高にチャーミングでみんなの「アモーレ」が集まった素敵な活動だ。
企画から生まれたそのバウムは、スイーツに目がないイタリア人の僕にとって、もはや夢の結晶のように見えた。
ファンの声から生まれた商品はこちら。
『不揃い オリーブ塩バウム』
『不揃い りんご飴風バウム』
『不揃い 黒糖サーターアンダギー風バウム』
『不揃い 焼きとうもろこし風バターバウム』
ずっしりとした手応えを掌に感じた瞬間、もうニヤニヤが止まらない。個包装の袋にハサミを入れ、スッと刃を滑らせたその瞬間だった。
「……うわっ!」
部屋の空気が一瞬で一変した。あふれ出してきた香りの渦に、完全にやられてしまったのだ。
香ばしい醤油と濃厚なバターが焦げる甘美な香り、沖縄の強い日差しを感じさせる深みのある黒糖のコク、祭りの露店を思い出させる甘酸っぱくノスタルジックなりんごの芳香、そして地中海の風を思わせるオリーブと塩の凛とした佇まい。
皿の上にずらりと並べた4つのバウムクーヘンを、僕は腕を組み、穴が開くほどじっと見つめた。鼻腔をくすぐる香りを前に、脳内で緊急作戦会議が始まる。
「どれから行く? 濃厚な焼きとうもろこしか? それともオリーブで洗練された味から? 一体どのように食べ進めるのが、この美しいスイーツたちの正解なんだ……?」
この真剣に悩んでいる数分間こそ、スイーツを愛する僕にとって至福の時間だ。
覚悟を決めて、まずは『不揃い 焼きとうもろこし風バターバウム』を指でつまみ、口へと運ぶ。
一口噛みしめた瞬間、脳が心地良い歓声を上げた。
しっとりとしたバウムクーヘン本来のやさしい甘みのすぐ後に、ふわりと広がる香ばしい醤油の風味と、追いかけてくるバターの圧倒的なコク。夏の縁日の屋台で煙を上げていたあの香ばしさが、洋菓子であるバウムクーヘンと驚くほど完璧に溶け合っている。
甘みと塩気の絶妙なリフレインは、一度足を踏み入れたら抜け出せない甘美な底なし沼だ。
次に手を伸ばした『不揃い オリーブ塩バウム』には、イタリア人として脱帽するしかなかった。
オリーブの爽やかな青い香りと絶妙な塩気が、生地の甘みを引き締め、極上のエレガントな味わいをつくり出している。
甘すぎるものが苦手な人でも楽しめそうで、これは午後のティータイムはもちろん、キリッと冷やした白ワインやスパークリングを合わせても最高だろう。
『不揃い 黒糖サーターアンダギー風バウム』は少し硬めのバウムクーヘンで、その力強いコクにはっと目が覚めた。そして、『不揃い りんご飴風バウム』のシャリッとした表面と甘酸っぱさに童心にかえる。
バウムクーヘンという伝統的な西洋のお菓子のおいしさに、日本各地の文化や思い出の味を自在に融合させてしまうこのアレンジ力。やはり「さすが日本だ」と感嘆せずにはいられない。
みんなの「食べたい」という素直な夢を集め、妥協のないクオリティでかたちにし、食卓に笑顔を届ける。この4つのバウムクーヘンには、ただのおいしさ以上の、あたたかなエンターテインメントが詰まっている。
僕はすべてのバウムの試食を終え、「よし」と立ち上がった。冷めてしまう前に新しいエスプレッソを淹れ直し、この愛すべき不揃いな夢たちとの贅沢な時間を、ゆっくりと味わい尽くそうと決めたのだった。
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