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【スタイリングアドバイザーが語る無印良品】オックスフォードのシャツ ①
2019/09/12
ものづくりの背景を伝えながら、一人ひとりに合った服選びや着こなしを提案する、無印良品のスタイリングアドバイザー。
お店でさまざまな相談を承ってきた彼らが伝える、無印良品の綿シャツの魅力を、連載でお届けします。
第3回は、「服を選ぶ楽しみを伝えるとともに、無印良品の服を通じて、今まで気づかなかった、その方自身の可能性に気づけるお手伝いをしたい」という女性アドバイザーが語る、オックスフォードのシャツです。
モデル身長:159cm / 着用サイズ:M
生地の強さと、武骨な見た目。アイロンはかけず、袖もまくって、洗いざらしで……“ありのままのシャツ”、ですね。
――オックスフォードのシャツ、いちばんの魅力は?
生地の強さと、武骨な感じの見た目ですね。そこがいちばん存在感があるなと、お店に並んでいるのを見ていても思います。
――武骨な、と言った感覚、わかります。生地にも、自然な凹凸感があって。
それが良い風合いだなって……綿の素材感が打ち出されていると感じます。
――タフな作業着だとか、長く愛用できる道具のような存在感で。
はい。それはすごく感じますし、元々スポーツで使われていたと聞いたことがあるので、からだを動かすことに対して、機能的なのかなという印象もあります。
そういえば、オックスフォードのシャツをすすめると、山登りの服みたいだ、という話になることがあるんです。お店に来てくださった方ともそうですし、はたらく仲間同士でも、オックスフォードのシャツはチノパンツと合わせると、山登りみたいだと。
私自身、何度か山にも登ったことがあるのですが、実際にオックスフォードのシャツを着て、山を登っている人は見たことがない(笑)。でも、イメージがあるんでしょうね。昔から続いている、なんらかの制服みたいな感覚で……。
――オックスフォードのシャツが象徴する、なにかがある。
さまざまに使えるシャツなのに、一方では、そこからはみ出ないんじゃないかというくらいに、それぞれが思い描いているシャツの象徴的なシーンやイメージがある……それをおもしろいなあと思いながら、話を聞いています。オックスフォードのシャツって、あらためて、すごく知られているシャツなんだなあって。
――そんなオックスフォードのシャツ、どういう用途で探している人が多いですか。
それが、オックスフォードのシャツについては、「オックスフォードのシャツはありますか」という問い合わせばかりなんです。「ボタンダウンのシャツはありますか」、と。
そういう問い合わせをされる方は、サイズも決まっていることが多いのですが、少し話していると、すでに愛用していて、さらに買い足したり、買い替えているのだとわかります。
――なるほど。くらしの定番なんですね。
「去年のは着倒しちゃったから、今年も買いに来た」だとか、「今年はこの色が欲しい」だとか……。オックスフォードのシャツは本当に、くらしのいろんな場面へ応用がきかせられる服だと思っています。
――ちなみに今回の撮影では、シャツをはおった、ラフな着こなしでした。
おすすめしたいイメージも、こういう感じですね。アイロンはかけず、袖もまくって、洗いざらしで……“ありのままのシャツ”、ですね。
――合わせるボトムスも、作業着にルーツがあるデニムやチノを?
はい。ただ、作業着になりすぎないように、春や夏だったら足首を出したりして、抜けをつくっています。
シャツの内側に合わせるのは、白い服が多いですね。白が好きなんです。そして、シャツの前を閉じて着るときは絶対に、足元には紐のない白いスニーカーを合わせます。
相棒のような感じで、リラックスして着てほしい。5年着たオックスフォードのシャツには、すごく愛着があります。
――サイズは、いわゆる適性サイズですすめますか。
いえ、むしろ私はひとつ大きいサイズですすめています。あまりカチッとしすぎずに、相棒のような感じで――私にとっての5年もののシャツのように――着てほしいので、ゆとりをもって、リラックスして着てほしいなと思っています。
――くつろぎの気分で着る雰囲気は、たしかにありますね。
私がお店でオックスフォードのシャツを着るときにも、リラックスした印象を意識することがあります。
たとえば、スタイリングアドバイザーのサービスを予約して来店された方にはじめて会うとき、自分がどういう印象に見られるかということは、大事ですよね。同じ白いシャツでも、カチッと着ていると、緊張感のある関係になりそうで……。
――初対面だと、身構えてしまいそうです。
その点、オックスフォードのシャツはブロードのシャツに比べて、もう少しカジュアルな印象です。だから、白いシャツを着るなら、オックスフォードのちょっとリラックスした雰囲気が良いかな、と。
それで、シャツといえば、私はオックスフォードばかりです。そういう、きちんとしすぎていない姿を見て、みなさんいろいろと話をしてくれるんだろうと信じています(笑)。
――親しみやすさ、ですね。ちなみに今回は先にも触れた、5年愛用し続けてきたという、無印良品のオックスフォードシャツも着てもらいました。上の写真が新しいシャツ、下の写真が5年もののシャツ。5年ものは本当に、良い味を醸し出しています。
はい。この5年もののオックスフォードのシャツには、すごく愛着がありますね。
じつは私、ふだんはあまりシャツを着ないんです。ただ、時々すごくニュートラルな気持ちでいたい日があって、そういうときには、このシャツを着ています。
――このシャツと共に過ごした、いろんな時間が積み重なって……。
はい。この5年もののシャツは、クローゼットをあけたときに、ああ私にはこれがあるなと……いつでもこれを着て出かけられるな、と思える存在なんです。
本当に、相棒みたいな感覚ですね。5年着てたら、そうなりました。
――ある意味、勝負服ですね。
はい。これを着ていれば、間違いないな、と。
仕事の場面では、より“無印良品らしい人”として見られたいときに着ています。シャツに飾りがないがゆえに、自分という素材が生かされる気がして、そのことで気持ちを高めていくというか……「私がいちばん、シャツ似合ってます」というような(笑)。
――気持ちを奮い立たせてくれる存在?
そうです。大勢の中でも、あえて奇抜な格好をするのではなくて、飾りのないシャツで、定番で出て行く……。
――ちなみにその相棒のシャツ、いま気づきましたが、男性向けですね。
はい、当時の紳士Mサイズで、少し大きめに着ています。
――女性が着る男性向けの服も、素敵です。
実際にも、すごくおすすめしています。いまは大きめに服を着こなしたいという方も多いので、女性ものだけではなく男性向けの服を紹介することで、選択肢の幅も広がると思っています。
可能性が広げられますよね。服のサイズということでもそうですが、広く選択肢を持つというライフスタイルも伝えていきたいので、男性向けの服も案内することにしています。シャツは特にそうですね。
脱いだままで、ばっと洗濯機に入れて、そのままもみくしゃにしたい。それで襟がちょっと撚れてきたら、ああ来たな、って。
――5年もののシャツは、本当に良い風合いですね。洗濯はどのように?
そのまま洗っています。私はなんでも洗濯ネットに入れて洗うタイプなのですが、オックスフォードのシャツだけはネットにも入れず(笑)、脱いだままで、ばっと洗濯機に入れて、そのままもみくしゃにしたいという気持ちです。
それで襟がちょっと撚れてきたら、ああ来たな、って。
――シャツを“育て”にかかってますね。撚れが好きだという気持ち、わかります。
新品を着るのが気恥ずかしいようなときには、そうやっています。スニーカーも、おろしたてはそのまま履けないから、踏んで踏んでという……そういう感覚です(笑)。
――具体的には、どういうふうに“育って”きましたか。
洗いかたにもよるでしょうけれど、多少、生地のぼこぼこが目立ってきます。なのでもし、買ったときの状態を保たせたければ、洗うときには裏返して、ネットに入れると良いですね。
逆に、本当にもみくちゃにして私だけのものにしたいと思ったら、がしがし洗ってもらったほうが、毛羽立ちや、よれっとした風合いが早く出るのかな、と。
――私だけの、という感覚は、愛おしいですよね。それが先に話していた、これを着ていけば……という励みにつながったり。
そうですね。私は本当に、ものとしての服が好き、その存在自体が好きなので、大事にしたいんです。デニムも1本を長くはきます。
――しっかり選んだものだから、大切にしたい、と。
思い入れが強いんだと思います。適当に買うことがほとんどないので……高い服も安い服も、なんでも。
だから、すごく長く着ていますね。
――愛着が持てる服との出会い自体が、縁ですよね……ちなみに、くらしの中で、持ちものは少ないですか。
はい。本当に着なくなったものについては、手放してしまうので、少ないほうだと思います。
――ものを選び抜いて、長く使うようになると、手元には、研ぎ澄まされた“もの”だけが残っていくのだろうなと……。
私は服を選ぶとき、絶対に妥協しないんです。だから長く着ているものがあるんですね。
無印良品の服は、わりと長く持っています。シーズンものは職業柄、来年は着られないから人に譲ることもあるのですが、定番のものは、変わらない。だから、自分に合ったサイズが見つかったときには、本当に長く着られるなあって……。
――サイズが合うと、うれしいですよね。
逆に言うと、サイズが合わなかったら、着なくなると思うんです。
お店へ来る方にもいつも、サイズが少しでも気に入らないなら、完璧だと思えないなら、買わないほうが良いと伝えています。絶対に着なくなっちゃうから。
――なるほど。小さな妥協は結局、違和感になっていく……残っている服はたしかに、バシッとからだに合ったものです。
パンツにしても、丈の長さが気になると少しでも思ったら、絶対に裾上げはしたほうが良いと伝えます。
サイズ選びで迷うことは本当に多いと思うのですが、そこがいちばん重要なんです。からだにバシッと合えば、自分のお気に入りになる……人生を共にできる服が、みつかったなあって。
まっすぐに、こういうシャツを着られるようになって、うれしいです。ふつうの服を、ふつうに着られる自分が、いいなあって。
――良いと思った服が、からだにぴったりと合う。素敵な出会いですよね。そして、それを着続けていく……。
お気に入りの服が一枚あると、自分の生活も変わっていくと思います。
大事な服だから、いままでは適当だった洗濯を、ちゃんとしようだとか。ちゃんと干しかたを調べて、良い具合に干そうだとか……。
そうなっていくと、偉そうな言葉ではあるのですけれど、自分の生活が向上していくように感じます。
大事なものを中心にして、くらす。料理が好きな人は、台所にこだわるでしょうし、私は服が好きなので、服を中心に、自分のくらしの在りかたを広げています。
――ものに引っ張ってもらえる世界って、たしかにありますね。こんなことをする自分じゃなかったのに、している。
そうです。シャツを着ていると、食べかたがすごくきれいになったりだとか、背筋がピンと伸びて、電車で壁にもたれて背中をしわしわにしないようにしたりだとか……お気に入りの服に引っ張られて、そういうふうに気を付けようとしている自分が、すごく良いなあって。
――変化そのものが、楽しくなってきますね。
その楽しさを突き詰めていくと、調べていく中で知識が広がっていったり、自信になったりする。そのことを、豊かだなあ、生活しているなあ、って思うんです。
……服は、偉大ですね。本当に、なににも代えられない(笑)。
――もしかすると、歳を重ねる楽しみは、ものと向き合いながら、くらしを豊かにしていく過程の楽しみなのかもしれません。
そうですね。若いときには、上の世代に早くなりたかったんです。それでいまは当時より歳を重ねて、実際に楽しいのですが、やっぱりさらに早く歳を重ねたくて、そのことが楽しみで……。
早く、年齢を重ねた女性になりたいですね。素敵だなと思うんです……歳上の女性って、なんて素敵なんだろうって。
――若い時代には、早くいろんな経験を重ねた自分になりたいと憧れますよね。たくさんのことをした自分にもなりたいし、ひとつのことを長く続けた自分にもなりたい……。
私も正直、若い頃には、長く使っているものを堂々とは伝えられなかった……それが良いものだと、自分の中で断言ができなかったんです。
でもいまは、まだ若いですけれど、それでも歳を重ねて、長く着ているものを自分の中で良いと思って、人に伝えられている。
こういうことを、すごく楽しいなあって思うんです。知識じゃない、ちゃんと経験したうえで、伝えているんだという……。
――まだまだ、この先にも出会いがありますよ。
そうですね。これから付き合っていく定番になるものとの初めての出会いが、これからもあるといいなあって……。
じつは、この5年もののオックスフォードのシャツ、無印良品で私がはたらき始めたころに買ったものなんです。
――そうだったのですか……ますます大切なものですね。はたらき始めたころの、原点を知っている一着。
はい。このシャツがあるおかげで、その当時のことを、よく覚えています。
だからこそ、本当にニュートラルな気持ちになりたいときに着たいのかもしれない、と思いました。はじめてこのシャツを手にした、あの頃のピュアな気持ちに……。
本当に、手放せないですね。
――当時の気持ち、どういったものだったのでしょう。
私も、ついにシャツを買うのか、と思いました。ついに、このなんの飾り気もないシャツを買うのか、と。
それまではむしろ、ちょっとデザインの変わったシャツを着ていたんです。それが、無印良品ではたらき始めたことで、きわめてスタンダードなシャツを着る日が来たと。
――その飾り気のないシャツがいまや、自分を原点に立ち返らせてくれる、大事な一枚に……。
なりましたね(笑)。まっすぐに、こういうものを着られるようになれて、うれしいです。
言葉は強いのですが、“ふつうの服を、ふつうに着られる自分”が、いいなあって……あらためて、そう思っています。
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